フィリピン控訴裁判所:遺伝子組み換えのゴールデンライスとBtナスの差し止め判決

朗報:フィリピン控訴裁判所は4月19日、遺伝子組み換えのお米であるゴールデンライスと遺伝子組み換えナス(Btナス)の栽培と流通の差し止めを命じた下級審の判決を支持し、安全性が確認できるまで、ゴールデンライス、Btナスに関わる宣伝含めた一切の活動停止を命じた¹。とても重要な判決。 “フィリピン控訴裁判所:遺伝子組み換えのゴールデンライスとBtナスの差し止め判決” の続きを読む

モンサント・バイエル・住友化学時代の終わり

 圧倒的な力のある勢力によってすさまじい勢いで社会が変わり、それにはもう、なすべき手はないように思えてしまうことがある。でも、現実から目を遠ざけてしまえば、その無敵であるかのような勢力は実は大きな問題を抱え、没落の恐怖に慄いていること、そして、実に醜い手を打って、その没落のシナリオから逃れることを許してしまう。希望は現実の中にある。それを見逃してはならない。
 たとえばモンサント・バイエル・住友化学がまさにその典型だ。世界でもっとも売れたモンサントの農薬ラウンドアップ(有効成分グリホサート)は、その有害性ゆえ、次々と禁止・規制の動きが世界で起きる。でもその動きを米国政府が圧力をかけて撤回させる。
 しかし、いくら圧力をかけても、ラウンドアップの現状は厳しい。耐性雑草が増えて、効力を失う。さらには多くの人に健康被害が出た。その動きに鈍感なバイエルがモンサントを買収したが、その結果、モンサントが抱えていた構造的な債務を引き受けることになる。ラウンドアップ訴訟で16万7000件もの訴訟が起こされ、バイエルはすでに多額の賠償金の支払いを余儀なくされたばかりか、今なお5万件を超す訴訟に直面している。バイエルの株価は7割下落し、リストラを余儀なくされている。 “モンサント・バイエル・住友化学時代の終わり” の続きを読む

遺伝子組み換え生物の規制緩和を進める日本、米国では訴訟に

 明日が締切の内閣府食品安全委員会の遺伝子組み換え食品に関するパブコメを前に、意見表明します。
 遺伝子組み換え企業の行き詰まりが2015年以降、深刻になっています。世界の市民が遺伝子組み換え食品を拒否したこと、遺伝子組み換え作物の栽培が農家にとってもメリットがないことが明らかになったこと、そして環境に多大な影響を与えていることを考えれば、その事態は当然のことと言えます。あらゆる面でデメリットの明らかになった遺伝子組み換え農業を終わらせる時です。 “遺伝子組み換え生物の規制緩和を進める日本、米国では訴訟に” の続きを読む

ラウンドアップの延命策、ジカンバの認可が取り消しに

 モンサント(現バイエル)にとっては底なし沼に。かつての稼ぎ頭のラウンドアップは今は世界各地で訴訟の山、たとえ訴訟を乗り切ってもラウンドアップは効力を失いつつあり、それを補うために引っ張り出した古い農薬ジカンバも認可が取り消される事態に。泣きっ面に蜂とはこのことだろう。
 ラウンドアップは1970年代から売られ始めたモンサントの農薬の主力商品。世界でもっとも売られた農薬と言われる。モンサントは2000年の特許切れの後でも独占販売が続けられるように遺伝子組み換え作物を作り出したとも言われる。
 でもラウンドアップの集中的な利用によって、耐性雑草が増え、もはやラウンドアップだけでは除草効果が薄れてきた。そこでモンサントが引っ張り出したのはラウンドアップよりも古い1960年代に出たジカンバという農薬。もっともこの農薬は揮発しやすく、周辺の農地や生態系にも影響を与える危惧があった。モンサントはその欠点を改良したとするジカンバをラウンドアップに混合させた農薬に耐える遺伝子組み換え大豆やコットンを作り、すでに数百万エーカーで使われているが、その「改良」ジカンバも揮発し続け、周辺のジカンバ耐性でない作物に被害を与え、農家間の紛争(殺人事件も発生)や訴訟という事態になっている。その結果、1500万エーカーの農地に影響を与えて、北米を象徴する蝶、オオカバマダラやマルハナバチという花粉媒介者の絶滅危機も作り出してしまっていると指摘されている。
 
 今回の判決で、その使用を米国の裁判所は禁止を命じ、この農薬の流通を許可した環境保護庁(EPA)は法律違反を犯したと認定した。バイエルだけでなく、BASFやシンジェンタが作るジカンバもその対象となる⁽¹⁾。この判決は一度トランプ前政権が覆したが、再度の判決は以前よりも重いものとなるだろう。 “ラウンドアップの延命策、ジカンバの認可が取り消しに” の続きを読む

EUでの「ゲノム編集」規制は日本にとって何を意味するか?

 2月7日の欧州議会の議決、「ゲノム編集食品が緩和された」と報道されていくかもしれない。安全審査なく、自然界への「ゲノム編集」生物の放出を認めてしまうという決定的に問題な決定をしてしまったのだが、欧州議会の議決がEUの政策になるためにはまだ紆余曲折があり、6月までにそれが進むとは考えられない。
 そして、同時に欧州議会ではそのトレーサビリティを確保することなども同時に議決している。これは日本にとっても大きなことになりそうだ。 “EUでの「ゲノム編集」規制は日本にとって何を意味するか?” の続きを読む

欧州議会が「ゲノム編集」生物の規制緩和案を承認、でも終わりの始まりか

 2月7日、欧州議会が「ゲノム編集」生物に対する規制緩和を承認した。しかし、これで世界で「ゲノム編集」作物の大量栽培がスタートするか、というと、すでに「終わりの始まり」的なものになる可能性が見えてくる。もっとも、どちらに転ぶか、これから次第。少なくとも今回の承認は遺伝子組み換え企業(バイオテクノロジー企業)のロビーの完全勝利とはほど遠い。
 日本ではトランプ前政権の指示通り、2019年10月に、政府の規制権限を放り出して、規制なしの流通が認められてしまい、実質上、世界で米国と並ぶ「ゲノム編集」生物生産国・流通国となってしまったが、欧州議会は日米と同様な規制緩和を認めたわけではない。 “欧州議会が「ゲノム編集」生物の規制緩和案を承認、でも終わりの始まりか” の続きを読む

欧州議会環境委員会、「ゲノム編集」生物解禁方針を承認するも行き先は不透明

1月24日、欧州議会の環境委員会で、NGT、新ゲノム技術(「ゲノム編集」のこと)によって改変された生物の規制緩和案が承認された。欧州では2018年7月にNGTによる生物は遺伝子組み換え生物として規制すべきとする欧州裁判所の決定が出て以来、その自由な流通は認められていない。
 その決定を覆そうとバイオテクノロジー企業はロビー活動を強めてきた。その規制緩和案は賛成47、反対31、棄権4で委員会で承認され⁽¹⁾、2月5~8日に開かれる予定の本会議に提出される予定だが、実際には現在の提案に対する反対は根強く、簡単に採決されてしまうような状況にはないようだ。  “欧州議会環境委員会、「ゲノム編集」生物解禁方針を承認するも行き先は不透明” の続きを読む

「遺伝」を超えてー継承と多様性のgen

言葉の問題は大きい。今回は「遺伝」という言葉。
 「遺伝する」というと日本語では親の影響が現れるという意味に取られるだろう。親からの継承というニュアンスになる。しかし、この言葉の元はgenだ。genはgenerate、生み出す、生成するという意味を持つ。地球に生まれた単純な生命はどんどん多様化し、新たな生命が生み出され、豊かになってきた。それを科学することが遺伝学(genetics)であり、それは親から子に継承されるものと同時の新たに親にないものを生み出すメカニズムを解き明かす、つまり継承と多様性というそれ自身、互いに矛盾し対立するような2つの方向を包含する学問である⁽¹⁾。 “「遺伝」を超えてー継承と多様性のgen” の続きを読む