農水省が26日、今年度の「食品の安全性に関する有害化学物質及び有害微生物のサーベイランス・モニタリング年次計画」を公表した¹。
特定の重金属、化学物質、微生物(カビ毒、ウイルス)などに関して、対象を限定して、食品の実態調査を行うものだ。
注目するのは、お米の他に、ハチミツや飼料に含まれるカドミウムやヒ素が対象になり、またPFASも対象に上げられていることだ(対象となるのはPFOS、PFOA、PFNA及びPFHxSの4種類)。
さまざまな食品にカドミウム汚染はあるはずだが、今回、米以外ではハチミツと飼料が対象となっている。米以外もカドミウム調査が入ったこと、またPFASの取り組みが入ったことはいいことだろう。
しかし、下水汚泥肥料には何も言及がない。対象が食品限定ということもあるかもしれないが、肥料がカドミウムやPFASに汚染されていれば食品が汚染されるのは必然なので、その調査の有効性に疑問がわく。
さらに問題だと思うのはPFASに関して飼料は対象になっていないこと(カドミウムは飼料も対象になっているのに)。米国で肉からは25万倍の汚染が検出されたケースがあるが、その農場の地下水は1万3000倍のPFAS汚染だったという。要するに水から飼料作物、飼料作物から家畜へと生物濃縮されることによってPFAS汚染が高まることが考えられるので、飼料のPFAS汚染に警戒しなければならないのに、農水省の調査にはそれが含まれない。
また、汚染が発見されたら農水省はどうするのか、しっかり姿勢を明確になっていないことが心配だ。
米国では今、PFAS汚染をめぐり、2つの注目すべき動きが進んでいる。
一つはメイン州の動きで、PFAS汚染を受けた農家を救済する基金を作り、被害農家を支援する動きをしている。
もう一つは、テキサス州などで被害を受けた農家や市民団体が汚染した肥料を販売した企業やその販売を認めたEPA(環境保護庁)を訴える動きだ。
汚染者に責任を取らせる、そしてその汚染物質の販売を認めてしまった行政が被害者救済に動く、これは必要不可欠の動きだろう。それを怠るとどうなるか? 日本では、汚染企業は免罪され、そして行政は責任逃れに徹することも予想される。そうなれば、農家は一人で汚染被害をすべて負うか[最悪の場合、廃業もありうる]、それともその事態を隠さざるをえない状態に追い込まれるかもしれない。汚染の事実を訴えることをすれば「風評加害者」としてつぶされて、汚染を止められなくなるかもしれない。
そして、汚染を吸わない重イオンビーム放射線育種品種や「ゲノム編集」品種を栽培させる/食べさせるというのでは汚染問題の解決策にはならない。
その意味でも行政と、その汚染者に対して、しっかりとした姿勢を確認させていくことが必要だろう。
(1) https://www.maff.go.jp/j/press/syouan/seisaku/240426.html