米国では下水汚泥肥料が訴訟に!

 ついに米国では下水汚泥肥料はPFAS汚染で訴訟や犯罪捜査対象に。下水汚泥肥料を奨励している農水省や国交省もそのキャンペーンをやめ、規制に乗り出す必要がある。
 
 下水汚泥肥料を認めている環境保護庁(EPA)に対して訴訟が起こされた⁽¹⁾。訴えたのは環境責任を求める公務員(Public Employees for Environmental Responsibility, PEER)という団体と農家で、EPAが下水汚泥肥料の中の永遠の化学物質と言われるPFASの規制を怠ったとしている。
 実際、米国では800万ヘクタールの農地がすでにPFASに汚染されていると言われ、メイン州では下水汚泥を肥料に使うことをすでに禁止している。そして、テキサス州ではPFASに汚染された下水汚泥肥料を販売していた肥料会社Synagro社に対する犯罪捜査が開始されている。
 
 昔から人糞や家畜の糞尿を肥料として使うことは行われてきた。安全なものを食べている人畜の糞尿を利用することは地域の栄養循環にもなるし、効果的な施策だが、現在の公共下水には産業排水も含まれ、また日常生活品含めてPFASなどの有害物質が含まれてしまっている。だから下水汚泥を原料に肥料を作れば農地を汚染してしまう。農地だけでなく、飼料を通じて、家畜にも影響が懸念されている。化学物質は特に葉や茎に集積し、トウモロコシのその部分が飼料に使われるからだ。
 いったん汚染してしまった汚染を取り除くことは困難だが、メイン州では6500万ドルを投じて、PFAS基金を作り、被害を受けた農家の救済にあたっている⁽²⁾。連邦政府レベルでもPFASによって被害を受けた農家の救済のための法案が作られている。この訴訟はその立法プロセスを加速させるだろう。
 
 しかし、汚染させておいて、それを公金使って被害者を救済するという以上に、汚染者の事業を止め、汚染物質を出させない、そして、汚染の責任を取らせることが重要であり、汚染物質を循環させない政策が求められる。汚染者負担原則を忘れてはいけない。

「広範な汚染に対するPFAS製造業者の責任を追及する取り組みを主導してきたロブ・ビロット弁護士は、損害の代償を払うのはPFAS製造業者であり、納税者ではないと述べた」

「土壌、水中、動物や植物の中でPFASが見つかれば、どの企業がそれらを製造したかがわかります。問題を引き起こした企業が責任を問われることを確認する必要があります」(どちらの引用も(2)参照)
 
 すでに米国での下水汚泥肥料によるPFAS汚染は深刻なレベルになっているというのに、日本では農水省や国交省がセミナー開いて、下水汚泥肥料の増産、販売を奨励している。しかし、作られる下水汚泥肥料は地域によっては高いPFASが検出されるものがあることもわかっている⁽³⁾。汚染を効果的に取り除く方法はまだない。それでも農水省は汚染を進める危惧のある下水汚泥肥料のPFAS基準すら定めずに、さらなる推奨を今後も進めるのだろうか? 
 
 
(1) Legal action could end use of toxic sewage sludge on US crops as fertilizer
https://www.theguardian.com/environment/2024/mar/12/sewage-us-crop-farming-lawsuit-pfas

(2) Farmers facing PFAS pollution struggle for solutions
https://www.theguardian.com/environment/2024/mar/12/sewage-us-crop-farming-lawsuit-pfas

(3) 琉球新報:農作物への影響は? 沖縄より高い値の県も 米国で進む規制とは (下)
https://ryukyushimpo.jp/news/national/entry-2371387.html
「沖縄県産、佐賀県産とも、PFOS値は国頭村の自然土壌と比べると150倍以上がPFOS値が確認され、佐賀県産はPFOAだと6万ナノグラム以上に達した」

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