フィリピン控訴裁判所:遺伝子組み換えのゴールデンライスとBtナスの差し止め判決

朗報:フィリピン控訴裁判所は4月19日、遺伝子組み換えのお米であるゴールデンライスと遺伝子組み換えナス(Btナス)の栽培と流通の差し止めを命じた下級審の判決を支持し、安全性が確認できるまで、ゴールデンライス、Btナスに関わる宣伝含めた一切の活動停止を命じた¹。とても重要な判決。
 
 モンサント(現バイエル)が作り出した遺伝子組み換え作物は消費者にアピールできない農薬耐性や殺虫性のあるものだけだった。ゴールデンライスは「消費者の利益」をうたうことで、モンサントを補い、遺伝子組み換え農業を南の国に拡げることが何よりの目的にしていた。
 
 ビタミンA不足は発展途上国で深刻な問題。そのビタミンA不足を解決するお米だ、として、それに反対するものは非人道的として非難して、反対できなくさせる、という戦法だったと言えるだろう。実際、そのような非難がゴールデンライスの反対者に浴びせられた。
 
 しかし、お米でビタミンAを取る必要があるだろうか。ビタミンAはニンジンやカボチャなどに多く含まれるからだ。実際に、ゴールデンライスは収穫時に真空パックしないとビタミンAはすぐに失われてしまう。でも収穫後のお米を真空パックするなんて現実的ではない。仮にできたとしても、お米で必要なビタミンAを取ろうと思ったら、8.8kg食べないとならない²。つまり、お米でビタミンAを取るというのは最初から無理筋の話だった。
 
 フィリピンではカボチャ料理が盛んで、カラバサと呼ばれるカボチャにはビタミンAが多く含まれる。麺類などにもするそうだ。でも、安すぎて、市場に出す支援もなく、フィリピン人の栄養となるべきカボチャは廃棄されてしまう。それに対して、ゴールデンライスにはビル・ゲイツや遺伝子組み換え企業からの投資を背景に多額の支援がつぎ込まれて流通が可能になる。そして、そのタネには特許がかけられて、導入されれば農家はその奴隷にされる。その金の一部だけでもカラバサに向かえば、農家は豊かになり、栄養も回復できるのに。
 
 フィリピンには戦後、国際稲研究所(IRRI)が設立され、ハイブリッドライスなどが開発され、ゴールデンライスもIRRIで開発された。現在、バングラデシュもゴールデンライスの栽培に乗り出す予定である。しかし、そのおおもとのフィリピンでゴールデンライスが止まったということは大きな意義を持つ。バングラデシュでも止まるだろうか。
 
 遺伝子組み換え作物は大豆、トウモロコシ、コットン、菜種の4品種で独占的状況を作り出したが、それ以外は広がっていない。2015年以降、その生産は停滞している。これまでは主食の遺伝子組み換え化は反対も強くて進んでこなかったが、数年前からいよいよフィリピンのゴールデンライスとアルゼンチンの小麦(HB4)で主食の遺伝子組み換えが始まった。もし、これが進めば、止まりかけていた遺伝子組み換え農業が再びリバイバルしかねない。その意味でも、このフィリピンでの勝利は決定的に大きなものだ。
 
 フィリピンでは農地改革が進まず、大地主による専制支配状態で、それに抵抗する農民たちは毎年何人もが殺される状況が続いている。そのような中で、この画期的な勝利が得られた背景にはMASIPAGを中心とした農民市民団体の長年の取り組みがあった。この困難な状況の中でも、MASIPAGはタネを奪われることを許さず、農家のためのシードバンクを作り、種子の収集と共に農家への種子の提供においても、傑出した取り組みを行ってきた。在来種の稲も驚くほどの品種がすでにMASIPAGによって蓄えられている。さらに無数の育種家を生み出しており、気候変動に強い稲が農民の手によって作られている。
 
 一方、アルゼンチンをベースとする遺伝子組み換え企業は現在、アルゼンチンの他、ブラジルやパラグアイでも遺伝子組み換え小麦の栽培許可を獲得し、その小麦が急速に世界に拡がることに大きな懸念が表明されている。その食品としての安全性も十分な確認がないだけでなく、その栽培には、発がん性ゆえにEUでは禁止されているグルホシネート農薬が大量に撒かれ、地域の環境や健康を害する危険が指摘されており、ラテンアメリカ、アフリカ、アジアなど100を超える市民組織が国連特別報告者に緊急介入を求めるアピールを送っている³。
 
 ゴールデンライスに続いて、遺伝子組み換え小麦も止まることを期待したい。主食にまで、問題ある遺伝子操作品種が登場しだしているが、世界はそれを止めている。
 残る問題は日本で重イオンビーム放射線育種米が来年から出てくることだ。
 
(1) Farmers and People Victorious in Environmental Court Case against GM Golden Rice and Bt Eggplant

Farmers and People Victorious in Environmental Court Case against GM Golden Rice and Bt Eggplant

SEARICE Statement on Philippines Appeals Court decision to stop GMO distribution, propagation
https://www.searice.org.ph/searice-celebrates-court-decision-gmos

Court victory vs. Golden Rice and Bt Eggplant in the Philippines ‘inspiring’
https://panap.net/2024/04/court-victory-vs-golden-rice-and-bt-eggplant-in-the-philippines-inspiring/

Victory against GM Golden Rice and Bt Eggplant in the Philippines court, a momentous win in the global fight against GMOs
https://grain.org/e/7135

(2) Creating Problems for Corporates to “Solve” and Profit with: Golden Rice and the Wastage of Kalabasa Surplus

Creating Problems for Corporates to “Solve” and Profit with: Golden Rice and the Wastage of Kalabasa Surplus

(3) Food sovereignty alliance from Latin America, Africa, and Asia approaches seven UN Special Rapporteurs for urgent intervention to block cultivation and trade of GM wheat HB4

No to GM wheat!

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