「あきたこまちR」によるマンガン不足は補うのが困難

 必須ミネラルのマンガン、農水省はコメから採らなくても、他の食品から取ればいいと言っていた。でもそれは難しい。
 重イオンビーム放射線によって遺伝子を改変した「コシヒカリ環1号」から作った「あきたこまちR」。カドミウムを吸いにくいことが売りなのだが、カドミウムを吸う遺伝子を破壊することによってそれを実現している。だけどその遺伝子は同時にマンガンを吸収する上でも必要な遺伝子だった。だから、「あきたこまちR」は従来の「あきたこまち」に比べ、マンガンが3分の1未満になってしまう。
 農水省が言うには、マンガンはさまざまな食品に含まれるからコメから採らなくても他の食品から採ればいいので問題ない、という。しかし、日本消費者連盟の原さんは東京衛研の調査ではマンガン摂取は4割が穀類からだという事実を指摘する¹。 “「あきたこまちR」によるマンガン不足は補うのが困難” の続きを読む

EUでの「ゲノム編集」規制は日本にとって何を意味するか?

 2月7日の欧州議会の議決、「ゲノム編集食品が緩和された」と報道されていくかもしれない。安全審査なく、自然界への「ゲノム編集」生物の放出を認めてしまうという決定的に問題な決定をしてしまったのだが、欧州議会の議決がEUの政策になるためにはまだ紆余曲折があり、6月までにそれが進むとは考えられない。
 そして、同時に欧州議会ではそのトレーサビリティを確保することなども同時に議決している。これは日本にとっても大きなことになりそうだ。 “EUでの「ゲノム編集」規制は日本にとって何を意味するか?” の続きを読む

欧州議会環境委員会、「ゲノム編集」生物解禁方針を承認するも行き先は不透明

1月24日、欧州議会の環境委員会で、NGT、新ゲノム技術(「ゲノム編集」のこと)によって改変された生物の規制緩和案が承認された。欧州では2018年7月にNGTによる生物は遺伝子組み換え生物として規制すべきとする欧州裁判所の決定が出て以来、その自由な流通は認められていない。
 その決定を覆そうとバイオテクノロジー企業はロビー活動を強めてきた。その規制緩和案は賛成47、反対31、棄権4で委員会で承認され⁽¹⁾、2月5~8日に開かれる予定の本会議に提出される予定だが、実際には現在の提案に対する反対は根強く、簡単に採決されてしまうような状況にはないようだ。  “欧州議会環境委員会、「ゲノム編集」生物解禁方針を承認するも行き先は不透明” の続きを読む

朗報:EU、「ゲノム編集」規制緩和案、承認されず。

 EUが「ゲノム編集」(NGT)食品の無規制流通を認めてしまうのではないか、と11日は悲観的な観測を元に投稿した(1)。遺伝子組み換え企業が莫大な資金を投じてEU加盟国の買収し、2018年の欧州裁判所の判決を覆す欧州委員会の見解を発表し、昨年夏には規制緩和に向けた提案を行っており、その採決が年末という状況の中で、情勢は厳しいと考えたからだ。国内では圧倒的な反対であるにも関わらず、政府は賛成してしまう、そんな対応が多く、今後、大変な事態を覚悟した。でも結果は「ゲノム編集」規制緩和提案の承認に必要な過半数が得られず、年内の交渉は終わり。来年の攻防に舞台は移されることになった。 “朗報:EU、「ゲノム編集」規制緩和案、承認されず。” の続きを読む

重イオンビーム放射線育種正当化のおかしな論理

 農水省や「あきたこまちR」などの「コシヒカリ環1号」系品種を擁護する人たちがいつも繰り返すのは「放射線育種は長い歴史があり、その品種も日本や世界で広く普及している」ということだ。
 
 しかし、これはとんでもない飛躍がある言い分だ。というのも長い歴史がある放射線育種はガンマ線照射であって、この技術はもうすでに終わった技術なのだ。米国は基本的に軍事研究のみで実質的に終わりにして撤退してしまったし、効率が悪く、その施設は世界でもほぼ閉鎖されている。日本はそれでも続けてきたが、昨年閉鎖になった。
 
 これに対して、「コシヒカリ環1号」系品種は重イオンビーム育種であり、この技術を使っているのは日本の他にどこにあるのか、と農水省に聞くと、答えが返ってこない。世界が捨ててしまった放射線育種にこだわっている国は日本くらいしかないのだろう。重イオンビームを育種(品種改良)に使っているケースはほとんど聞いたことがない。 “重イオンビーム放射線育種正当化のおかしな論理” の続きを読む

欧州委員会が「ゲノム編集」食品規制撤廃案を発表、ドイツなどは反発

 7月5日、欧州委員会は「ゲノム編集」食品に関する規制をなくす案を発表した(1)。つまり安全性の審査もなく、表示もなく、「ゲノム編集」によって遺伝子操作した食品を流通できるようにするというものだ。
 EUでは欧州裁判所が2018年に「ゲノム編集」食品は遺伝子組み換え食品と同等に規制すべきという判断を下していた(2)。遺伝子組み換え企業(バイオテクノロジー企業)はこの決定に対してEUに圧力を加え、昨年にはこの決定を覆す方向の欧州委員会報告を発表、今年夏に覆ると予想されていた(3)。しかし、「ゲノム編集」食品の規制をなくせば、実質的に遺伝子操作された食品があふれ、有機農業にも多大な影響を与え、さらにバイオテクノロジー企業による食の支配がさらに進むことに大きな懸念が示され、この決定は大幅に遅れ、7月5日の案の発表となった。 “欧州委員会が「ゲノム編集」食品規制撤廃案を発表、ドイツなどは反発” の続きを読む

お酒の「ゲノム編集」パブリックコメント

 今度はお酒まで「ゲノム編集」かい? パブリックコメント「酒類分野におけるゲノム編集技術の利用により得られた生物の取扱いについて(案)」に対する意見募集(1)。
 なんで酒類限定で「ゲノム編集」生物についてのパブコメをするのか、理解に困った。すでに「ゲノム編集」生物については農水省、環境省、厚労省がすでに2019年10月に方針を決めてしまっている(国会では何も議論せずに省内の検討会だけで方針を決めてしまった)。それには麹や酵母などの微生物も含まれるだろう。酒だけでなく、味噌、醤油、パンなどの発酵食品もあるのになぜ酒だけ?  “お酒の「ゲノム編集」パブリックコメント” の続きを読む