生物多様性条約COP16会議の成果:アフロ系コミュニティの声に耳を

 さまざまな生物が激減する生物多様性絶滅危機が進行している。ハチが姿を消し、蝶や鳥も激減している。その危機を食い止めることができるのか? コロンビアのカリで10月21日から開かれていた生物多様性条約締約国会議CBD-COP16が11月2日に閉幕した。
 合意にたどり着けないまま代表者が帰国する国が多く、結局、会議では多くのことが決まらないまま、再開のめども立たないという状況だが、限られた会期の中で成果もいくつかあった。そのことをメモしておきたい。 “生物多様性条約COP16会議の成果:アフロ系コミュニティの声に耳を” の続きを読む

化石燃料でできた食を変えよう!

 気候危機、生物絶滅危機などの多重危機の同時進行を進めている原因を追求していくと、世界のほんのわずかな企業が推進する産業モデルがこの多重危機を加速させ、そのモデルが世界中に各国政府の政策によって広げられている問題にぶちあたる。その勢力の一つが化学肥料企業。

 この状況に対して、FUEL to FORKという新しいキャンペーンが始まった。私たちの食は化石燃料でできている! 食べながら気候変動を引き起こしている。だから、食べものを変えれば多重危機も回避できる。まずは食べものから¹。 “化石燃料でできた食を変えよう!” の続きを読む

CBD COP15:生物多様性を危機に陥らせる技術の禁止を!

 カナダのモントリオールで開かれている7日から19日まで国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)、大事な会議だけど、日本からの関心はどこまで集まっているか? 生物多様性が失われて、たとえばハチが絶滅すれば、人類は絶滅に瀕するとも言われるし、サンゴが絶滅したら、海は半分くらい死の世界になってしまう。当然、人の生存にも関わる。
 それほど切羽詰まった課題なのに、その肝心の課題に人類は十分取り組めなくなっている。というのも、危機に陥っている生物多様性を守ること以上にそれを破壊する技術を止めることに必死にならなければならないのが実情になっているからだ。今、どんな技術が現れてきているか、確認したい。 “CBD COP15:生物多様性を危機に陥らせる技術の禁止を!” の続きを読む

大地を再生するリジェネラティブ・アグリカルチャーの映画

 世界の大きな底流。辻信一さんの言葉で言えば「反生命」から「生命」への流れ。リジェネラティブ・アグリカルチャー(大地再生型農業)の大きな進展を描いた映画。
To Which We Belong
 この映画はそのリジェネラティブ・アグリカルチャーが米国や世界の農業を変え、農業だけでなく、漁業や社会までも変えるさまを描き出している。推薦文を書かせてもらったのだけど、そこで一言、批判めいたことも書いてしまったので、簡単に触れておきたい。 “大地を再生するリジェネラティブ・アグリカルチャーの映画” の続きを読む

有機農業と差別・排外主義、優生思想:ブラジルの運動から考える

 食料高騰がひどい。さらには食料危機。急いで国内での食料増産に向け動かなければならないのに、日本政府はさらに軍事的危機を煽って防衛費増強という真逆の方向に走っている。
 軍事的危機を煽らなくても私たちは十分、多重な危機のまっただ中にいる。気候危機、生物絶滅危機、そして食料危機。戦争始める前に、対外貿易止まれば2年で国内6割が餓死するというアフリカの多くの国よりも脆弱な日本の農業をなんとかしなければならないのに。
 
 この危機はどう超えられるのか、すでに答えは出ている。グローバルな食のシステムへの依存を減らし、ローカルな食のシステムを強化すること、同時に生態系を守る社会へと転換させること。そして、差別・排外主義や優生思想と闘い、一人一人の尊厳を守ること。この3つの要素が不可欠だが、すでにそんな実践をしている運動がブラジルにある。 “有機農業と差別・排外主義、優生思想:ブラジルの運動から考える” の続きを読む

食料危機から食のシステムの転換へ

 食料危機が待ったなしで迫っている。化学肥料の高騰が止まらない(1)。問題は価格の高騰に留まらない。お金を出しても必要な量を確保することが見込めない状態になりつつある。現在の世界の食のシステムは来年にかけて大きな危機に陥るのは避けられないだろう。
 特に日本でまず心配なのは今後、農業を続けてくれる方たちが大幅に減ってしまうのではないかということだ。ただでさえ、労は多く収入は少ない状態なのに、これに生産コストが急激に上がってしまったら、継続は不可能になってしまう。 “食料危機から食のシステムの転換へ” の続きを読む

キーストーン遺伝子の発見:失えば生物絶滅も(「ゲノム編集」規制が不可欠なもう1つの理由)

 キーストーンという言葉がある。文脈によって印象が変わってしまうけど、ここでは生態系を支える要石という意味で考えてほしい。たとえばよく知られるのは海におけるサンゴ。サンゴは海洋生物の4分の1を直接支え、間接的に支えるものを入れれば4割を支えるという。そのサンゴは海の中の0.1%にしか存在しない。サンゴが失われれば多くの海の生物が死滅する。サンゴは海の生物を支えるキーストーンだ。
 遺伝子の中でもキーストーンと呼ぶべきものがあることが研究によって判明した(1)。その遺伝子がなくなると、周辺の生物の絶滅という事態を生んでしまうというのだ。つまり、その遺伝子は周辺の生態にとってキーストーンになっていることになる。 “キーストーン遺伝子の発見:失えば生物絶滅も(「ゲノム編集」規制が不可欠なもう1つの理由)” の続きを読む

アイウトン・クレナッキ『世界の終わりを先延ばしするためのアイディア』

 とても大事な本が出た。アイウトン・クレナッキ『世界の終わりを先延ばしするためのアイディア』国安真奈訳(中央公論社)(1)
 タイトルそのものの本だと思う。今、多重の同時危機が世界を襲う中、まさにこのアイデアが生かせるかに私たちの未来がかかっている。でも、ノウハウ本ではない。彼の語る短いエッセイを受け止めて、我が物にできるかどうかにかかっている。
 アイウトンはブラジルの先住民族クレナッキのリーダーだ。 “アイウトン・クレナッキ『世界の終わりを先延ばしするためのアイディア』” の続きを読む