鎌田慧氏の『隠された公害―イタイイタイ病を追って』  「風評被害」とは何か?

 イタイイタイ病と言っても富山県神通川の話ではなく、対馬のケースを追ったルポ。イタイイタイ病では、カドミウムの摂取によって、腎臓がやられて、体内のカルシウムが体外に排出されてしまい、骨がスカスカになってしまい、骨が折れやすくなったり、神経の痛みに襲われる。特に出産時にミネラル分を胎児に与え、ミネラル不足になった女性が、カドミウムを摂取してしまうと発症しやすいと言われ、患者には中高年の女性が多い。
 カドミウムは自然に存在する元素だが、ヒ素と同様、人体には有害であるが、主に鉱山開発によって、生活環境内に出てきてしまう。富山県神通川のイタイイタイ病は三井金属による神岡鉱山の未処理廃水が原因とされる。同じ症状に苦しむ人が対馬に現れたのだが、イタイイタイ病ではなく、イタクナイイタクナイ病だと揶揄されるような状況が生まれる。そこに鎌田氏が飛び込み、その現地での人間模様をルポしたのがこの本である。
 取材は1960年代、本が出たのは1970年。随分昔の本を手にしたと思った。しかし、読み進めば読み進むほど、この現実は50数年前のものではなく、現在を語っているとしか思えなくなってきた。 “鎌田慧氏の『隠された公害―イタイイタイ病を追って』  「風評被害」とは何か?” の続きを読む