グローバルな #StopUPOV キャンペーン、12月2日に

 今からちょうど60年前、大種子企業が世界の種子市場の独占に向けて、同盟団体を作り、民間企業による、民間企業のための国際条約を作った。それがUPOV条約。遺伝子組み換え企業の登場と共にその条約はより企業を利するものとなって、世界の国の種苗法を変え、農家のタネを奪い、多様なタネからわずかな種類のグローバル品種へと変えつつある。その勢いはもう全世界に及ぼうとしている。その動きに対抗しようという農民・市民の動きが今年12月2日に世界同時で計画されている。#StopUPOV
 
 日本はこの動きにどう関わっているか。日本は1998年にUPOV1991年条約に参加し、徐々にUPOV体制の徹底を図ってきた。2017年の主要農作物種子法廃止も2020年の種苗法改正もそのプロセスの1つ。タネの生産はグローバル化され、大きな企業は海外で安くタネを作り始めた。タネの自給率は激減した。政府はタネの生産から手を徐々に引き、地方自治体が作るタネの新品種はこの20年間に半減した。そして、民間企業のその座を譲ろうとしている。全国で300品種近く作られていた稲の品種も今後、民間品種のわずかな品種に集約されてしまう可能性がある。そうなれば多様性は奪われ、少数企業に日本の食は支配されてしまう。
 食はグローバル企業に支配され、農民は世界中で競争させられる。その競争の中で、農民は数が激減し、環境も壊されていく。
 
 日本政府の動きはそれだけではない。アジアを中心に海外の政府にUPOVへの加盟を強要する。それを元に来年、種苗法を再改訂する計画がある。山梨県知事と小泉農相が会談するにいたったシャインマスカットはその前哨戦だろう。つまり、戦略的な農産物を海外で生産し、日本で輸出できない時期に限り、日本の種苗のための世界の市場を作る。そんな戦略的海外ライセンスを導入することが目的。
 
 日本政府はあくまでタネのグローバリゼーションを進めようという路線を変えようとしない。でも果たして、それで儲かるのは誰か? タネのグローバリゼーション政策の中で、日本の野菜のタネの自給率はなんと1割まで落ち込んでしまった。大豆のタネの種採り農家は今や消えてしまう危機にある。タネがなくなれば日本の食はどうなる?
 実はこのUPOVによるタネのグローバリゼーションの中で、もっとも危うくなっているのは実は日本の地域の食に他ならない。
 世界で12月2日にはさまざまな行動が組まれる。その動きに学びつつ、日本は何をすべきか、早急に考える必要がある。

The #StopUPOV campaign
https://grain.org/e/7315

UPOVとはフランス語でUnion Internationale pour la Protection des Obtentions Végétalesの略(植物新品種保護国際連合)。ユポフあるいはウポフと発音。スイスに本部があるが、国連機構ではない。

今年を種子主権の年に!

 長周新聞に新年に向けた原稿を書きました。
フードシステムがもたらす多重危機 地域の多様で自由な種を守る元年に
https://www.chosyu-journal.jp/shakai/33480
 
 今年は種子主権の年に、と個人的には思っています。種子主権というと自家採種の権利と思われてしまうかもしれませんが、それに尽きるものではありません。タネを買う人であっても種子主権は重要です。種子主権とは、タネを自由に選び、自由に育てる権利、タネの決定権と言ってもいいかもしれません。 “今年を種子主権の年に!” の続きを読む

種苗セクターの衰退と日本の種苗政策

日本種苗協会メンバー数推移 昨日公開した『日本の種苗政策と UPOV−種子法廃止・種苗法改正、「ゲノム編集」から重イオンビーム放射線育種まで』では現在の日本政府の種苗政策がこの20数年一貫して日本の種苗セクターを衰えさせたさまを描いた。
 いくつもその状況を語る数字はあるのだけど、今日紹介するのはその一つ。日本種苗協会に登録されているメンバー数の推移¹。
 種子法廃止も種苗法改正も民間企業のためであったのなら、少しはこの数も回復してもいいようなものだけれども、減り続けている。 “種苗セクターの衰退と日本の種苗政策” の続きを読む

『日本の種苗政策とUPOV』について

 種子法廃止って何だったの? 種苗法改正はどうして行われたの? なんで野菜のタネはほとんど輸入なの? なぜ在来種が危機的なのに支援がないの? 「ゲノム編集」食品は農業をどう変えてしまうの? 来年から始められる重イオンビーム放射線育種米はどんな変化を日本の食にもたらす可能性があるの? 日本政府がモンサント法を他の国に押しつけているって本当? なんで報道されないの? ばらばらの問題としてではなく、まとめて点と点をつなげて考えると、そこにどうしていくべきか、大きな課題が浮かび上がってきます。 “『日本の種苗政策とUPOV』について” の続きを読む

グアテマラで再び「モンサント法案」世界で進む危険な動き

 「モンサント法案」がかつてラテンアメリカ中を駆け巡った。「モンサント法案」とは農家に数少ない企業の種子を使うことを強制し、在来種の自家採種による農業を実質的に不可能にしてしまう法案を意味する。でも、ラテンアメリカの農民は大きな運動を起こして跳ね返した国も少なくない。たとえばグアテマラは2014年のサッカー・ワールドカップのどさくさに議会が「モンサント法」を承認してしまったが、全国的な抗議行動を受けて、裁判所はその法成立を無効とし、議会も撤回を決めた(1)。
 
 でも、いったん潰した「モンサント法」がグアテマラで再び甦り、議会に提出された(2)。 “グアテマラで再び「モンサント法案」世界で進む危険な動き” の続きを読む

UPOV条約で危うくなった日本の種苗

 種子法廃止や種苗法改正は農家以外の多くの方の関心も引きつけたと思います。でも、実はこの動きにはUPOV(ユポフ)条約という国際条約が関わっていることはまだあまり知られていないかもしれません。しかし、このUPOV条約というのは大きな問題を持つ条約で、この条約による影響を日本も大きく受けているのが現実なのです。そこで8月8日にOKシードプロジェクトが日本消費者連盟、家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン(FFPJ)、農民運動全国連合会と共催でこの問題に関する学習会が開催されました。そこでの印鑰の発表を少し補強してまとめたのが以下の記事です。長くなってしまったので、印刷版のPDFファイルもアップしました。
 動画でも公開されています。末尾にそのURLを掲げます。 “UPOV条約で危うくなった日本の種苗” の続きを読む

EUで始まった有機在来種販売合法化

 政府は今の方向が唯一の方向であると言い切るが、本当にそうか? 種子の知的財産権を守るUPOV条約の遵守こそが日本の農業を発展させる唯一の道だとして種苗法も改正してしまったが、UPOV条約を作り出した本家のEUでは、そのUPOVの原則を変える重要な種子政策を2022年1月から実施している。UPOV条約体制下では無視される有機農家の在来種を販売可能とする画期的な転換が行われた。 “EUで始まった有機在来種販売合法化” の続きを読む

グローバルな文脈での種苗法改正が持つ問題

  4月1日から改正種苗法が完全実施となるが、この改正がどんな文脈で作られたものなのか、今一度、確認しなければならない。それには日本国内の動きを見るだけではわからない。これは、今、世界で同時進行する多国籍企業による食料システム独占のプロセスの一環なのだ。そして、それを別の視角から見たら、まったく別の展望が見えてくるはずだ。 “グローバルな文脈での種苗法改正が持つ問題” の続きを読む