種苗法改正を地ならしするパブリックコメント、本日開始

  種苗法再改正、農産物輸出戦略改正を地ならしするパブリックコメントが本日スタートする。コメント募集期間はわずか2週間、6月16日締め切り。優良品種の管理・活用のあり方等に関する検討会 中間報告案に関するパブリックコメント。
 優良品種の管理・活用のあり方とは簡単に言えば、タネの独占権の守り方・生かし方と読めばいいだろう。つまり、改正種苗法の課題、さらにはさらなる種苗法改正をめぐることが主題となっている中間報告だ。なぜたった2週間しかコメントを募集しないかというと、昨年の食料・農業・農村基本計画改訂に伴う検討会の中間報告だから、行政手続法上の対象にならないので、1月も必要ないという判断なのだろう。でも、日本の食のあり方に大きく影響があるテーマだけに、このようなパブコメは欧米なみに2ヶ月くらい期間を設けて、必要に応じてさらに延長して、この問題に関係する人が広くコメントできるように本来すべき話のはずだ。この問題に関係する人は誰だろうか? 誰もが食べなければ生きていけないのだから、すべての人のはずだ。となれば、この2週間の募集期間は短すぎる。 “種苗法改正を地ならしするパブリックコメント、本日開始” の続きを読む

再び種苗法改正へ(2026年通常国会)

 今、日本は農民消滅、農村消滅の危機にある。でも政府はまったくそれでも問題ないと思っているように思えてならない。政府は1998年から農民からタネの権利を少しずつ奪ってきた。そして2020年、種苗法改正で、登録品種の自家採種を原則禁止にした。でも、そこで止まらないようだ。種苗法の再改正法案を来年の通常国会に上げるという記事を読売新聞が報道した¹。農産物輸出戦略を改訂し、その柱として種苗法改正が位置づけられている。政府のサイトでは確認できないが、読売のスクープだろうか(30日の関係閣僚会議でこの方針が決定したことを日本農業新聞が今日付の記事で報道している)。
 読売新聞の記事の要点は何かというと、育成者権(種苗開発者が種苗を独占できる権利)の期間を現在の25年から倍の50年にする。そして、大規模輸出のための日本の農産物サプライチェーンを作るというものだ。 “再び種苗法改正へ(2026年通常国会)” の続きを読む

今年を種子主権の年に!

 長周新聞に新年に向けた原稿を書きました。
フードシステムがもたらす多重危機 地域の多様で自由な種を守る元年に
https://www.chosyu-journal.jp/shakai/33480
 
 今年は種子主権の年に、と個人的には思っています。種子主権というと自家採種の権利と思われてしまうかもしれませんが、それに尽きるものではありません。タネを買う人であっても種子主権は重要です。種子主権とは、タネを自由に選び、自由に育てる権利、タネの決定権と言ってもいいかもしれません。 “今年を種子主権の年に!” の続きを読む

種苗セクターの衰退と日本の種苗政策

日本種苗協会メンバー数推移 昨日公開した『日本の種苗政策と UPOV−種子法廃止・種苗法改正、「ゲノム編集」から重イオンビーム放射線育種まで』では現在の日本政府の種苗政策がこの20数年一貫して日本の種苗セクターを衰えさせたさまを描いた。
 いくつもその状況を語る数字はあるのだけど、今日紹介するのはその一つ。日本種苗協会に登録されているメンバー数の推移¹。
 種子法廃止も種苗法改正も民間企業のためであったのなら、少しはこの数も回復してもいいようなものだけれども、減り続けている。 “種苗セクターの衰退と日本の種苗政策” の続きを読む

『日本の種苗政策とUPOV』について

 種子法廃止って何だったの? 種苗法改正はどうして行われたの? なんで野菜のタネはほとんど輸入なの? なぜ在来種が危機的なのに支援がないの? 「ゲノム編集」食品は農業をどう変えてしまうの? 来年から始められる重イオンビーム放射線育種米はどんな変化を日本の食にもたらす可能性があるの? 日本政府がモンサント法を他の国に押しつけているって本当? なんで報道されないの? ばらばらの問題としてではなく、まとめて点と点をつなげて考えると、そこにどうしていくべきか、大きな課題が浮かび上がってきます。 “『日本の種苗政策とUPOV』について” の続きを読む

ヨーロッパと日本のタネ:どう違う? ドキュメンタリー“SEEDS OF EUROPE”を見て

 世界でタネが焦点になっていることを5月4日に長い投稿でまとめた。ヨーロッパ、EUでは2つの動きがあることを伝えた。一つは有機農家のタネの促進をめざす方向、もう一つは「ゲノム編集」の導入に向けた動きだ。
 
 でも文字ではなかなか伝わらない。前者の有機のタネに関するとてもいい短いドキュメンタリーがある。“SEEDS OF EUROPE”(34分)。アイルランド、ルクセンブルク、フランス、イタリア、オーストリアとチェコ共和国の農家を訪れ、タネの問題を浮き上がらせる。 “ヨーロッパと日本のタネ:どう違う? ドキュメンタリー“SEEDS OF EUROPE”を見て” の続きを読む

タネの危機と解決策としてのタネ:世界で広がるタネの運動

4月26日は国際種子デー(International Seeds Day)で、世界中でさまざまな動きがあった。記念日ということを超えて、この動きは近年急速に大きくなっている。タネが危機であること、そして同時に世界で進む多重危機の解決策もまたタネから始まるからだ。 “タネの危機と解決策としてのタネ:世界で広がるタネの運動” の続きを読む

遺伝子特許を主食に認めるのはとんでもない

  種子法廃止や種苗法改正問題が日本でも迫る前に、海外では特にラテンアメリカで反「モンサント法案」とよばれる運動が社会を揺るがしていた。日本の種子法廃止や種苗法改正問題はこのこの問題と関わっていることは明らかだったから、2017年から20年にかけて、ラテンアメリカやアフリカ、アジアで動いている問題を日本各地で話して回った。
 
 種苗法改正時には十分問題にできなかったものが今、大きな問題になっている。それが特許の問題。種苗法で扱われる権利は「育成者権」と言われるもので、一方、遺伝子組み換え作物で使われるのはそれに加えて「特許権」だ。この育成者権と特許権はどう違うのか、というと一言で言えば、特許権の方がずっと問題が大きい。 “遺伝子特許を主食に認めるのはとんでもない” の続きを読む