EU「ゲノム編集」生物規制緩和は規制のきっかけを日本に与える

 6月17日、欧州議会が「ゲノム編集」生物規制緩和案を承認。予想されていたことだが、これで「ゲノム編集」作物・畜産物・微生物を止めていた最後の砦が突破された。この規則の発効には2年かかるが、その後、世界で「ゲノム編集」農畜産物の生産が加速する可能性がある。
 ヨーロッパの市民団体、農民団体、環境団体の多数がその決定を非難する声明を上げている。それ以外にも食品流通企業も強固に規制緩和に反対してきた。それなのに承認されてしまった背景には前回の欧州議会選挙での極右勢力の進展と、規制緩和に反対してきた革新勢力の後退がある。
 しかし、実際、この規制緩和規則は日本にも大きな影響を与えざるをえない。それは今後の大きな足がかりにもなり得るものだ。
 
 まずなにより今回の決定でも、種苗への「ゲノム編集」義務表示は残った。だから、欧州の農家はその種苗が「ゲノム編集」されているかどうかは知ることができることになる。有機農業では使用が禁止されるので、それを農家が知ることができなければ有機農業はできなくなってしまうので、当然の措置ではあるのだけれども、これは日本にとって、大きい。
 というのも日本では種苗にも表示義務がない。だから農家は「ゲノム編集」かどうかを知ることができない状態に置かれている。日本から種苗を欧州に輸出する際には表示しなければ輸出ができなくなる。輸出の際だけに表示して、国内では表示しない、ということが許されるだろうか? この制度は日本でも必要ということになる。
 そして、種苗に表示されれば、その収穫物、加工品、料理でも表示できることになる。だからこれからを変えていく重要なきっかけが残ったということになる。
 
 そして、農薬耐性、害虫抵抗性(害虫を殺す毒素を持つ)を持つ「ゲノム編集」作物は規制緩和対象外となる。この2つの性質は現在の遺伝子組み換え作物のほぼすべてにわたっている。だから、遺伝子組み換え作物の後継品種を「ゲノム編集」で作っても、それは依然として遺伝子組み換え品種として規制されることになる。実際に米国のサイバス社は農薬耐性「ゲノム編集」稲をすでに開発しており、アジア市場に売ることを虎視眈々と狙っているが、これはEUでは遺伝子組み換え米と位置づけられることになる。
 
 今後、欧州では各国政府がどのように制度を作るか、この2年間で決まっていくことになるが、政府が表示をしないのであれば、流通業者が「ゲノム編集」されていない食品にその旨の表示をしていくことになる。つまり、OKシードプロジェクトがやっているように、欧州でもそうした表示が広まることになるだろう。
 
 今回の決定で今後、大きな問題になるのが特許問題なのだが、これはまた別途まとめてみたい。いずれにしても、深刻な決定ではあるが、これがこれからのグローバルな規制をしていく上での新たなスタートにもなりうるものということだ。
 
欧州議会からの報告
New genomic techniques for plants to boost innovation in sustainable agriculture
https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20260611IPR45215/new-genomic-techniques-for-plants-to-boost-innovation-in-sustainable-agriculture

中道勢力によるプレスリリース
Parliament gives final green light to new genomic techniques legislation
https://www.reneweuropegroup.eu/news/2026-06-17/parliament-gives-final-green-light-to-new-genomic-techniques-legislation

市民団体、環境団体、農民団体のプレスリリース
Reactions to EU deregulation of new GMOs
https://www.gmwatch.org/en/106-news/latest-news/20679

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