「あきたこまちR」は暑さで20〜30%減収になる?

 分子生物学者河田昌東さんが3月29日東京集会にて、OsNramp5遺伝子を破壊された稲は暑さに弱く、2割から3割の減収になったという中国の研究を3月29日東京集会で紹介されたが、この件はとても重大なものだ¹。というのも「あきたこまちR」も「コシヒカリ環1号」も重イオンビーム放射でこのOsNramp5の1塩基を破壊しているからだ。 “「あきたこまちR」は暑さで20〜30%減収になる?” の続きを読む

半世紀前のカドミウム対策のアップデートを

 反公害運動は1970年の公害国会で多大な犠牲の上に世界に先駆けて汚染企業の責任原則を法制化するという金字塔を打ち立てた。しかし、その後の政治はそれを形骸化させた。新たな汚染が進もうとする今、この意義を再確認する必要がある。 “半世紀前のカドミウム対策のアップデートを” の続きを読む

カドミウム汚染への対抗策:在来種Pokkaliの可能性

 インドのケララ州ではカドミウムを稲の実には吸いにくいポッカリ(Pokkali)という在来種の稲があることを知って、関心はあったのだけど、バンダナ・シバさんからこの稲が実はインドの中でももっとも歴史の長い有機栽培の伝統を維持していることを知り、さらに関心がわいた。
 このポッカリは3000年前から栽培されていたことがわかっているという。なぜ、有機生産を続けられてきたかというと、エビの養殖との組み合わせで化学肥料を入れずに肥沃さが保たれるということと、その組み合わせゆえ、同じ面積の田んぼからあがる収益も倍になるかららしい。その有機農法はポッカリ・システムと呼ばれている。
 なぜ、ポッカリのお米にカドミウムを実に入りにくいかというと、カドミウムを吸収するために関わる遺伝子OsNramp5をこのポッカリは二重に持っている。ケララ州の水田は塩分濃度が高いので、その高い塩分濃度に耐えられるようにこの在来種は進化してきたのだろう。この遺伝子が二重になっているため、カドミウムは吸うのだが、それが根の液胞に留まり、実には登っていかない。つまり不要な塩分を根の液胞に蓄え、体内からは隔離する能力を身につけたため、塩分高い水田でも成長することができるのだろう。そして、その能力がカドミウムにも有効に働くということと考えればいいのかもしれない。
 分子生物学者の河田昌東さんによると、遺伝子を二重に持つということは環境の変化への対応で生物がよく見せる反応だということで、自然な反応だと考えられる。
 しかも、このポッカリのお米にはオリザノール、トコフェロール、トコトリエノールなどの抗酸化物質に富み、それは薬用米をしのぐくらいなのだという。アミラーゼ含有量も多いので、糖尿病患者にもよいらしい。さらに塩分の高い水田はメタンガスもほとんど発生させないという。
 気候変動で海面が上がり、塩分濃度が上がることが懸念される中、このポッカリのような稲の活用は重要になっていくかもしれない。ポッカリとは現地の言葉で「何よりも成長する者」という意味。
 このポッカリとコシヒカリの交配に岡山大学の馬教授が成功し、日本でも生かすことができることがわかった。食感はコシヒカリ、そして、カドミウムは吸いにくいから汚染が気になる地域でも安全なお米を作ることができる。
 重イオンビームで遺伝子を破壊した稲よりも、このようなすばらしい特性を自然の中で身につけた稲の方がはるかにいいのではないだろうか?

The Story of Pokkali
https://pokkali.in/

このままでは日本は汚染列島に。下水汚泥肥料には注意。

 ウクライナへの戦争以降、化学肥料原料の不足・高騰が大問題となった。農水省は国交省と組んで、下水汚泥の肥料への活用を進め、全国の下水処理場でその施設の建設・増強が進み、安い下水汚泥肥料の利用が増えている。家庭菜園用に売られている肥料でも使われている可能性がある。
 でも、この下水汚泥肥料(コンポスト肥料)を使うと何が起きるか、すでにわかっていることがある。その土壌中にカドミウムや作物中のカドミウムが増える、そしていったん入ったカドミウムは簡単に消えていかなくなるとする報告がある⁽¹⁾。 “このままでは日本は汚染列島に。下水汚泥肥料には注意。” の続きを読む

「遺伝」を超えてー継承と多様性のgen

言葉の問題は大きい。今回は「遺伝」という言葉。
 「遺伝する」というと日本語では親の影響が現れるという意味に取られるだろう。親からの継承というニュアンスになる。しかし、この言葉の元はgenだ。genはgenerate、生み出す、生成するという意味を持つ。地球に生まれた単純な生命はどんどん多様化し、新たな生命が生み出され、豊かになってきた。それを科学することが遺伝学(genetics)であり、それは親から子に継承されるものと同時の新たに親にないものを生み出すメカニズムを解き明かす、つまり継承と多様性というそれ自身、互いに矛盾し対立するような2つの方向を包含する学問である⁽¹⁾。 “「遺伝」を超えてー継承と多様性のgen” の続きを読む

重イオンビーム放射線育種は実質日本だけーコシヒカリ環1号、あきたこまちR問題を考える

 重イオンビーム育種米問題は、放射線育種として伝わってしまったため、幾重にも誤解が広がった。「放射線育種なら以前から世界各地でやっていたから問題ないんじゃないか?」など。でも以前からやっていたガンマ線を使った放射線育種は実質的にすでにもう終わっている。今回、登場した品種はそれとは違う重イオンビームを使ったもの。
 重イオンビームはガンマ線と比較にならないほど1点にあたる破壊力が強い。ガンマ線があたっても遺伝子が直接傷つくことは稀で、細胞内で活性酸素(フリーラジカル)が作られて、それが細胞を傷つけ、突然変異が生まれるケースが大半とのこと。それに対して、重イオンビームはイオンが遺伝子の2重鎖を切って破壊していく。同じ技術というにはあまりに違いが大きすぎる。 “重イオンビーム放射線育種は実質日本だけーコシヒカリ環1号、あきたこまちR問題を考える” の続きを読む

遺伝子特許を主食に認めるのはとんでもない

  種子法廃止や種苗法改正問題が日本でも迫る前に、海外では特にラテンアメリカで反「モンサント法案」とよばれる運動が社会を揺るがしていた。日本の種子法廃止や種苗法改正問題はこのこの問題と関わっていることは明らかだったから、2017年から20年にかけて、ラテンアメリカやアフリカ、アジアで動いている問題を日本各地で話して回った。
 
 種苗法改正時には十分問題にできなかったものが今、大きな問題になっている。それが特許の問題。種苗法で扱われる権利は「育成者権」と言われるもので、一方、遺伝子組み換え作物で使われるのはそれに加えて「特許権」だ。この育成者権と特許権はどう違うのか、というと一言で言えば、特許権の方がずっと問題が大きい。 “遺伝子特許を主食に認めるのはとんでもない” の続きを読む

重イオンビーム育種米で何が変わる?

 重イオンビーム放射線育種品種に変わると何が変わるのか。図にしてみた。オリジナルの「コシヒカリ」は特許許諾料はもちろん、品種許諾料も不要で自家採種ができるので有機農業にも適している。だけど、重イオンビーム育種の「コシヒカリ環1号」許諾を得た上で、特許料と品種許諾料を払わないと育てることができない。農水省は自家採種も不可だとしている。
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