沖縄と東電福島原発事故

福島東電原発事故の後、家族は沖縄に避難した。連れ合いと息子はどちらもステロイド治療をしており、免疫が人一倍弱い。その状態にわずかの被曝でも危険と考えざるをえなかったから避難するようお願いした。

沖縄と日本との関係を長く考えてきたつもりだけれども、このような形で沖縄に関わることは想像していなかった。琉球処分、日本の軍国主義の犠牲となった沖縄戦、そして戦後の基地の押しつけ、その上に家族の避難。本当にいいのか、何度自問自答したかわからない。しかしそれしか選択は見つからず、それ以来、沖縄と原発の問題、そして自分がどう関わるのか、問われ続けている。

一方、東電原発事故による放射能汚染という事態。避難できない高汚染地域の住む人びとのことを考えると胸がさらに苦しくなる。 “沖縄と東電福島原発事故” の続きを読む

アルゼンチン、遺伝子組み換え大豆の農薬噴霧で居住不能になった町

アルゼンチンでは遺伝子組み換え大豆の耕作が急激に増加し、全農耕地の6割を超すほどの巨大なモノカルチャーとなっている。この大豆耕作に伴い、モンサントのラウンドアップなどの農薬が大量に使われるようになり、大きな健康被害と環境破壊を生み出している。その実態をTengaiというエクアドルの環境問題のニュースを扱う市民メディアがアルゼンチン医師のインタビューを通じて明らかにした。

このように深刻な健康被害、環境破壊をして作られる大豆はヨーロッパや日本を含むアジアの家畜の餌やバイオ燃料として輸出される。彼らの被害は日本のわれわれと無関係でなく、彼らの苦しみはやがて家畜の肉を通じてわれわれの体にも入ってくるかもしれない。その意味でも他人事ではない。

スペイン語の翻訳をしていただいたものを以下に掲載する。

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遺伝子組み換え大豆の農薬空中散布を止めた母親たち

ノーベル環境賞とも言われるゴールドマン環境賞をアルゼンチンで遺伝子組み換え大豆の農薬散布を止めた母親たちの運動のリーダーのソフィア・ガティカ(Sofia Gatica)さんが受賞した。

この賞は権威あるもの。賞のことより、Sofiaさんの活動のすばらしさに感動を覚えた。単に個人的に感動を覚えるだけでなく、彼女の活動は放射能汚染を抱える日本の多くの人にとってもインスピレーションを与えるに違いないと思う。
Sofia Gaticaさん

彼女の取り組みについては詳しくは短いビデオが作られていてとてもいい出来なので、それを見るのが一番だが、英語なので、ごく簡単にその概要を書いておく(ビデオは末尾に日本語字幕をつけたものを載せてある。3分32秒)。

アルゼンチンは1990年代後半から急激に遺伝子組み換え大豆の生産が拡大し、現在は世界第3位。しかし、その生産方法は広大な土地に大豆だけを植えて、飛行機から農薬を散布するというものだ。この農薬が毒性が高いモンサントの開発したラウンドアップ。
農薬空中散布

ソフィアさんは生まれてすぐの娘をこの農薬によって失った。その娘の死が受け入れられなかったソフィアさんは近くの母親たちを訪ね歩き、農薬の影響を懸念する母親たちを組織して、近所で発生しているガンなどの病気を調べ上げ、地図にまとめた。彼女たちの調査でわかったことは近所のガン発生率は全国レベルの41倍という高さだということだった(下の地図の赤い丸がガン患者)。
近所の病気の地図

母親たちは農薬空中散布ストップキャンペーンを始めた。コミュニティの人たちに農薬の危険を知らせた。
農薬の危険を知らせるセミナーを開く
しかし、その後ソフィアさんは電話で「子どもを殺すぞ」という脅迫を受けるようになり、ある男に銃を頭につきつけられて「大豆と関わるのはやめろ」と脅された。「でも私は止まるわけにはいかなかった」
「ここで起きているのは隠された大量虐殺。ゆっくり、そして秘かに毒を流す」
農薬に苦しむ住民
10年にわたる彼女たちの活動はついに大統領を動かし、農薬の影響調査を保健省に命じた。

ソフィアさんは大学の研究者(Andres Carrasco氏)とも連携して、農薬が出生異常をもたらすことを確認した。
Andres Carrasco博士とSofiaさん
この活動の結果、住民の居住地2500メートルの範囲の農薬空中散布は禁止されることになった。母親たちは全国中の農薬空中散布を禁止することを求めてさらに活動している。

アルゼンチンの農場の6割が大豆になっている。いわば大豆ブームの中でそれに対する闘いがどれほど困難なものか想像してみる。国中が熱中しているものにノーを突きつけるということはそう簡単なことではない。最近でもアルゼンチンで農薬汚染された地下水は塩水と同じだと御用学者が言ったとか。日本の放射能汚染で聞いたような台詞だが、そういう手のものは地球の裏でもごまんといるのだろう。

実際に殺害予告もあった。大農場主が法であり裁判官であるような南米において、その大農場主を敵にするということの怖さはなかなか表現するのが難しいと思う。

しかし、彼女は負けなかった。娘の無念を晴らすということ、そして今心配を抱えているお母さんたちとの連帯がそれを可能にしたのかもしれない。

彼女の闘いは極めて冷静で理詰めであったことは特筆できる。まず実態調査を行い、さらに信頼できるAndres Carrasco博士と動くことで有効な情報を国に突きつけることができた。Andres Carrasco博士はアルゼンチンでの農薬問題が大きな人権問題であることを証明した中心的な科学者である。

今、放射能汚染にまみれる日本、医療機関は情報を隠蔽し、放射能の被害は隠されている。そんな日本においても彼女の闘いはインスピレーションを与えずにはいないだろう。

ビデオはわずか3分32秒。ぜひ見てほしい(日本語字幕つけました)。


このビデオは2012年4月18日に「小農民の闘い国際デー」(勉強会)で南米で起きている遺伝子組み換え大豆による被害の1つとして紹介した。この勉強会の報告も読んでいただければ幸い →小農民の闘い国際デー 日本とのつながりを考える



このソフィアさんたちの作った地図(町の農薬噴霧と関連がありうる病人の存在を記した地図)の詳細が見たいと思って検索していたら見つけた。

地図には白血病、ガン、ガンでなくなった、肝炎自己免疫症などのマークがある。実に痛々しい地図だ。遺伝子組み換え大豆に囲まれた小さな町に異常な病の発生。同様のことは南米の他の地域でも発生しているはずだが、なかなかこうした情報は出てこない。それだけにソフィアさんたちの奮闘の持つ意義ははかりしれない。