遺伝子組み換えと健康被害の関連

米国での健康と遺伝子組み換え作物およびその除草剤の相関関係に着目した記事がとても印象的だった(Nancy Swanson ”Data trends show correlation between increase in organ disease and GMOs”)。英語で書かれているため、日本語で紹介する記事を書きたいと思ったけれども、この記事のインパクトは米国でのガンや糖尿病と遺伝子組み換え大豆やトウモロコシの栽培量の増加を比べたグラフにあり、そのグラフはライセンス料を払わないと使うことができない。しかし、元になるデータはパブリックドメインであるために元データを使って構成してみた。下記の文章は元記事を参考に書いているが、元記事の翻訳ではない(グラフもまったく同じデータを探せなかったケースもあるので微細な違いがある)。

遺伝子組み換え作物とさまざまな疾患の数の推移をグラフ化したものだ。

実際に、グラフを見ていただいた方が早いので、まずは甲状腺ガン、大豆・トウモロコシ生産の中で遺伝子組み換えが占める割合をグラフ化したもの。
米国での甲状腺ガンと遺伝子組み換えの推移

男性(オレンジの棒グラフ)がわずかな増加しかみせていないのに対して、女性の甲状腺ガン(黄色の棒グラフ)は遺伝子組み換え作物(折れ線グラフの5つの線)と共に激増している。

次は肝臓ガンと遺伝子組み換え大豆・トウモロコシのグラフだがこれは前のグラフとはまったく逆に女性(赤)は緩慢な増加に留まっているのに対して、男性(水色)の増加が著しい。

米国での肝臓ガンと遺伝子組み換え

カーン大学のセラリーニ氏らによる遺伝子組み換えトウモロコシをラットに長期間(2年間)与えた実験でも性別による傾向が現れていることが想起される。

次は肥満、高血圧との相関グラフである。
米国での体重過多・肥満と遺伝子組み換え

米国での高血圧と遺伝子組み換え

次は糖尿病とのデータのグラフ
米国における糖尿病と遺伝子組み換え

米国の新規糖尿病患者と遺伝子組み換え

遺伝子組み換えとの関連を別としても、米国での疾患の急増ぶりは驚くばかりだ。このグラフから遺伝子組み換えがこれらの疾患を生み出したと結論付けることはもちろんできない。しかし、すでにガンや肝臓、腎臓などへの影響を指摘する研究も数多く出ており、この相関になんらかの関係がある可能性を考える必要がある。現在の米国政府の食品行政はそうした可能性を一切無視しており、日本政府も残念ながらそれを踏襲している。

すでに多くの研究が遺伝子組み換え作物の摂取による健康被害の可能性を示唆している。それは残留農薬によるものやBt毒素(虫が食べたら消化器を破壊し、殺虫性を持つがほ乳類には無害としていたが、実際に健康障害が起こる例が動物実験で指摘されている)、あるいは遺伝子組み換えによる内分泌攪乱などを通じて影響を与えるとしている。内分泌攪乱は糖尿病、腎臓病、高血圧、肥満、骨粗しょう症、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、不妊、出生異常、勃起障害、肺・前立腺・肝臓・脳・甲状腺・非ホジキンリンパ腫などのガン、性的発達障害、学習障害・多動症候群・自閉症・認知症・アルツハイマー症、パーキンソン病、統合失調症などの神経症などの原因となりうる()。

一方、日本の状況はどうだろうか? 日本は米国から大量の大豆やトウモロコシなどの穀物を輸入している。その大部分は遺伝子組み換えであり、加工食品や家畜の飼料として最終的に日本列島の住民の口に入っている。米国で上記のような増加があるのであれば日本でも同様な兆候が見られることが危惧される。

そこで日本での疾患のデータと米国での遺伝子組み換え作物のデータを重ね合わせてみた。

日本での甲状腺ガン患者数と遺伝子組み換え

日本での肝臓ガン患者数と米国での遺伝子組み換え

日本でのアルツハイマー症と遺伝子組み換え

米国のような疾患の急増は上記ではアルツハイマー症を除けば顕著には見られない。アルツハイマーに関しても絶対数が少ないだけに必ずしも疾患そのものの増加を意味しない可能性もありうるだろう(医療体制が整い、以前カウントされなかったケースがカウントされるようになるなど)。

米国の場合、食生活で肉食や加工食品の占める割合が日本よりずっと大きいだろう。そうした食事の中には遺伝子組み換え由来のものが含まれている割合が大きくなる。一方、日本は米国とは食生活が大きく異なる。加工食品や外食を避け、野菜や米食中心の食生活をすれば(肉食するにしても、飼料まで非遺伝子組み換えにこだわる業者以外からは肉を買わないようにすれば)、醤油やサラダ油などに気をつければ遺伝子組み換えを避ける食生活はまだ可能である。だからこそ米国のような疾病の増加を見ていないのかもしれない。しかし、だからと言って安心することはできない。

食生活のアメリカ化は進み、ファーストフードや加工食品に依存する人が増えつつある。残念ながら一番気をつけなければならない若い人の間でその傾向がある。そうすれば遺伝子組み換え作物の摂取は避けられない。もし、ファースト・フードや加工食品を日常的に食べている人とそうでない人の健康調査をしたら、もっとはっきりとした傾向が出てしまうのではないか?

さらに日本には東電福島原発事故による放射能汚染もある。皮肉なことに放射線による被曝によって引き起こされる病気も遺伝子組み換え関連で懸念される病名と重なってしまう。日本においては放射能汚染と遺伝子組み換えという二重のリスクが人の内分泌系統、免疫にかかってこざるをえない。

遺伝子組み換えを避ける点でも放射能による内部被曝を避ける点でも政府のレベルでの対応が必要であるが、残念ながら、現在、そうした対応は実現にはほど遠い状態にある。どちらのリスクも個々人が可能な限り避けようとしない限り、日本に暮らす私たちの健康は危機にある。


注: こうした遺伝子組み換え作物とその除草剤による健康被害の研究については、Earth Open Sourceという団体がまとめた“GMO MYTHS AND TRUTHS”(遺伝子組み換えの神話と真実)というレポートの中でリスト化されており、遺伝子組み換え・農薬と健康に関してだけでも180を超す研究結果などの資料がリストアップされている。

データ:

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