タネとは人権
人類は植物からタネを採り、毒のある植物すら食べられる食物に変え、文化を形成してきました。気が遠くなるような世代の、数え切れないような人びとの共同作業の成果としてタネは存在しています。タネは人が生きていく上で不可欠なものであり、タネへの権利は基本的人権の基盤となります。
でも、特に1990年代、遺伝子操作技術の適用が本格化して以降、タネは独占と支配の道具となり始めました。タネが独占されることで、それまでの農業ができなくなり、隷従を余儀なくされる人の数が世界で増えています。
知らない間に遺伝子操作されるタネが作られ、それまで存在していた小さな種子企業を踏み潰し、わずか4つの遺伝子組み換え企業が世界の種子市場の過半数を支配するに至っています。
今、世界でタネの独占や支配に対して、人びとが声をあげています。コスタリカでは種子の権利を奪うことは人類に対する犯罪であるとして、民衆法廷が現在、開かれています¹。民衆法廷(常設民衆法廷)とはベトナム戦争に対して、バートランド・ラッセルとジャン=ポール・サルトルらが1967年に開いたものが起源とするものです。
コスタリカで開かれている民衆法廷は、ラテンアメリカ中の民衆団体がこの裁判に関わり、世界中の種子に関わる市民が注目しています。
一方、マレーシアでは農民の種子の権利を奪うUPOVへ加盟しようとする政府に反対して、農民と市民が議会に向け、今日1月20日行進します²。
タネへの権利の取り組みは国連の中でも動いています。国連人権高等弁務官事務所は今年10月に種子への権利をテーマとする作業部会を開催しますが、それに先立ち、その作業部会への提案を一般から募集開始しています(締め切り2月19日)³。
本来、タネは人が生きる上での不可欠な存在であったにも関わらず、現在、一部の種子企業の知的財産として独占されるようになりました。本来、人びとの共有財産を守るべき政治が、率先して企業の利益になる種苗法を作っています。日本でも「ゲノム編集」や重イオンビームなどによって遺伝子操作した種苗の流通を政府が促進しています。
日本の種苗法改正も根本から批判され、人びとの共有財産としての多様なタネを守るための政策の確立が議論されなければならないはずです。食べないで生きられる人間がいないように、種子の権利を守らない社会は基本的人権の底が抜けた社会だと言わざるをえません。
日本を人権尊重の国にするために、また日本が他国の人権を脅かす国にしないためにも、今、世界で行われているタネに関する議論に耳を傾ける必要があります。今後、この問題はOKシードプロジェクトの学習会でも取り上げていきたいと思います。ぜひ、ご注目ください。
(1) コスタリカで行われているタネに関する常設民衆法廷
Un Tribunal Permanente de los Pueblos para nuestra relación inmemorial con las semillas
https://www.biodiversidadla.org/Articulos/Un-Tribunal-Permanente-de-los-Pueblos-para-nuestra-relacion-inmemorial-con-las-semillas
(2) マレーシアでのUPOV反対のデモ
https://www.facebook.com/groups/904253430508472/?multi_permalinks=1973877586879379&hoisted_section_header_type=recently_seen
(3) 国連人権高等弁務官事務所による種子の権利についてのパブリックコメント(小農に関するワーキンググループ)
Right to Seeds by Working group on peasants
https://www.ohchr.org/en/calls-for-input/2026/right-seeds
