ブドウの育種を手掛ける農家で林ぶどう研究所の林慎悟さんにお声をかけていただき、「種苗法改正」について議論させていただきました。林さんは登録品種マスカットジパングという新品種を育成された方です。しかし、農家による新品種の育成は現在大きな困難に見舞われており、種苗法改正はそれを変えるとして、法改正に賛成されています。
法改正に賛成される林さんと反対する僕との間で議論は成り立ったか、ご覧いただければ幸いです。 “育種農家と種苗法改定について” の続きを読む
メキシコ:トウモロコシ保護法はトウモロコシ国家管理法?
生物多様性こそが私たちの命を守ると書いた(1)。その多様性を守ってきた農家のタネが危うくなっている。ラテンアメリカの他の国々でも大きな問題となっている。
特にメキシコが今、とても危ない。TPPや米国などとの自由貿易協定が大きな制約をもたらそうとしている。 “メキシコ:トウモロコシ保護法はトウモロコシ国家管理法?” の続きを読む
ブラジル:在来種を守る条項はいかに生まれたか?
ウイルス感染症は人間や家畜だけでなく、植物もターゲットになる。作物の多様性を失えば、作物が全滅する、そんな脅威に直面する。
実際にアイルランドで19世紀に悲劇が起きている。ジャガイモが菌病にやられ、ほとんど全滅。同じ品種だけ大量栽培していたことが原因。そのために多くの貧農が食べていけなくなり、2割が餓死、2割が国を捨てて移民せざるをえなくなった。
何がその後の救いとなったかというと、ジャガイモの原産地の南米にはきわめて多様なジャガイモが存在していたこと、その多様な生物資源を使うことでその後は難を逃れることができたこと。つまり、ヨーロッパの人びとは南の地域の生物多様性に助けられたということができる。生物多様性を守ることはそうした脅威から命を守ることにつながる。 “ブラジル:在来種を守る条項はいかに生まれたか?” の続きを読む
「ゲノム編集」:種苗への表示が不可欠だ
遺伝子組み換え(GM)農業の終わりが見えた、と昨日書いた。GM企業は最後のフロンティアとも呼ばれるアフリカでGM農業の拡大を狙っている。先進国ではもはや増やすことは不可能に近く、援助を武器にアフリカ諸国に遺伝子組み換え作物(GMO)の栽培を長年迫っているが、抵抗は大きい。GM企業が言うようにもし本当にGM技術が収穫の向上をもたらし、飢餓から人類を救ってくれるのであればとっくにアフリカ諸国はGM農業に踏み出していただろう。でも、食用のGM作物を作っているのは実質、南アフリカくらい。アジアではGM稲(ゴールデンライス)の栽培を迫るが反対は強い。 “「ゲノム編集」:種苗への表示が不可欠だ” の続きを読む
種苗法改正問題:農水省の説明がおかしい
政府の説明がおかしくなってきている。政府が悪いと言えばその通りなのだけど、政府がおかしな説明を平然としている大きな理由にマスコミの機能不全があると思う。 “種苗法改正問題:農水省の説明がおかしい” の続きを読む
農水省のおかしな説明:「次代の新品種は登録できない」?
農水省の種苗法改正に関わる説明がちょっとおかしい。もっともおかしいといっても財務省や防衛省で起きているような、ありえないことから比べるとずっとましだし、国会議員や地方議会の議員からの質問に対して、きわめて丁寧に対応はされている。そのことは高く評価できるのだけど、やっぱりおかしいことはおかしいので、指摘させていただきます(昨日予告したその2になります)。 “農水省のおかしな説明:「次代の新品種は登録できない」?” の続きを読む
種苗法改正問題の背景にある農業競争力強化支援法
前に書いた種苗法改正と公的種苗事業の民営化のことだけれども、そんなことは種苗法改正案のどこにも書かれていないじゃないか、というかもしれない。これが書かれているのは種苗法改正案ではなくて、農業競争力強化支援法の方だ。 “種苗法改正問題の背景にある農業競争力強化支援法” の続きを読む
種苗法:問われる公的種苗事業の存在価値
この間、種苗法改正をめぐって、さまざまな人たちから質問が農水省に出されているのだけど、この間の農水省の説明や、質問に対する回答に現実との大きなギャップを感じています。
もっとも、他の情報公開でよくあるように黒塗りの答えが出てくるようなことは一切なく、担当されている農水省の方はとても真摯に答えてくれていて、それはとってもありがたいと思います。そこには今後、同じ方向を歩む可能性も感じられるのだけど、それでも種苗法改正に絡むところはどうにも納得がいかないことばかりなのです。
そこで納得がいかないことについてまとめてみることにしました。まず、その1。 “種苗法:問われる公的種苗事業の存在価値” の続きを読む