今回の種苗法改正、新品種の育成を手掛ける農家の方たちは法改正に前向きで、お前はその方たちの厳しい状況がわかっているのか、という声もかけられます。
もちろん、育種家農家の方たちの権利は守られなければなりません。特に種子繁殖する植物と接ぎ木などで増える栄養繁殖の場合は実情がかなり違うので別のアプローチが必要になると思います。果樹の新品種ですと、一度苗を買ってきて接ぎ木をしてしまったら長く作り続けることができてしまう。これでは育種家は厳しいという声も伺います。
こうした新品種を作る方たちの営みが報われなければならないことは言うまでもないことだと思います。現行種苗法でも契約や農水省の指定を受けることで、育成者権を守る方法は可能であり、維持が困難に陥るような状況になっている場合にそうした方法を使って、育種家の方たちを買って支えることもとても大事だと思います。今、日本の地域の種苗が維持できるかどうかの大変な状況になっていることを改めて認識する必要があると思います。
もっとも苗を買う側の農家の負担が増えれば、現在、外国産の安い果物が流通を占めている状況の中で、農家によっては離農せざるをえないケースも出てくることも考えられます。買う側が減ってしまえば結局、種苗市場は小さくなってしまいます。このような場合は、たとえば補助金を出して、新品種を育成する側の農家も苗を買う側の農家を支援する政策を打ち出す必要があると思います。
ポストコロナの時代は食料は安く輸入できる時代ではなくなる可能性が高いです。地域で食を確保することの意味が高まることを考えれば、今後、政府は貿易を重視する政策ではなく、地域の農業を守る政策へと転換すべきなのです。地域の農業を支える育成者と農家の双方を底上げする総合的な政策が求められています。
自由貿易協定によって日本の農業は自動車産業などへの関税強化を防ぐために一方的に犠牲にされてきたのがこの近年だと思います。このままいけば、日本ではタネを残せる農家はほとんどいなくなり、大きな民間企業に独占されてしまう時代へと変わっていってしまうことを危惧します。
実は米国でもヨーロッパでも主食など重要な種苗は農家が自家増殖できており、今回のような一律許諾制などという制度を持っている国は聞いたことがありません。日本は世界に類のない法改正をやろうとしていると言わざるをえません。
この権利のバランスを崩す種苗法改正には反対です。