ブラジルのホームレス運動はアグロエコロジー(生態系の力を活用する農業)を旗印に掲げていることを昨日書きましたが、ホームレス運動だけでなく、ブラジルの労働組合CUTもアグロエコロジーを旗印に掲げています。日本の労働組合でアグロエコロジーを旗印に掲げるところは今まで聞いたことがありません。
写真はCUTのInstagramから。
第23回アグロエコロジー会議を締めくくる行動。タネと苗を分かち合う
タネあかしをすると、ブラジルでは農業労働者の数が多く、それは労働組合の対象となっています。だから労働組合の中でも農業問題は重要な位置づけになっているのです。数の上では農業労働者は工業の労働者に比べて少ないのですが、実は農業労働者運動は労働運動やブラジル社会全体に大きな影響を与えてきました。
たとえば農薬問題です。農業労働者は農薬の空中散布などによって、一番その影響を受ける存在です。働いている労働者のことなどお構いなしに大地主は農薬を空中散布することがあり、農薬を浴びた農業労働者から深刻な健康被害が生じました。農薬反対運動がブラジルでは全国的に大きくなっていきますが、その際、農業労働者の存在は大きなものとなりました。
また、ブラジルの大土地所有制度は植民地時代から続くブラジル社会の構造的問題であり、農業労働者の組織化とは、その歴史的な問題に取り組むことでもあり、ブラジル社会全体に大きな問いかけを投げるものとならざるをえません。
そこでCUTはMSTと提携しながら、農村の労働者の組織化を進めることに大きな意義を置いています。それは都市の労働者の状況とも関わり、都市と農村の関係を変えていくことも念頭においたダイナミックな展望を出すことを求めるものでした。アグロエコロジーはまさに、それに答えるものだったのです。
農業労働者運動が社会に大きな意味を持っているのは米国でも同様です。米国での農薬規制は環境規制の前に、農業労働者運動が1970年にストライキ後に労使交渉で農薬規制を実現しました。米国では農業労働者には移民が多く、その法的な身分の弱さにつけこみ、無権利状態に放置されていました。その差別も強かった農業労働者が米国での農薬規制の先頭に立ったのです。そのため、農業労働者運動は単なる賃上げ運動ではなく、人間の尊厳の回復を求める公民権運動の一翼を担うことで米国社会全体に大きな影響を与えることになりました。
1980年代にはその運動は農薬禁止を掲げ、消費者も巻き込み、ボイコット運動を含む社会運動としての労働運動へと発展していきます。オバマ元大統領が選挙キャンペーンで使ったスローガン、Yes, we can は「全米農業労働者組合(UFW)」が使っていたスペイン語のスローガン「Sí, se puede」があらゆる運動に広がっていったものでしょう。
日本では農業の規模が小さいこともあって、労働組合が農業労働者の組織化に取り組む例はきわめて稀だと思いますが、最近、研修生の人権問題が農業法人で続々と告発される事態になっています。日本の人口の都市集中の割合はブラジルを上回っており、このままでは都市も農村もバランスを失って共倒れになりかねません。日本の労働組合も農業・農村問題に取り組むべき時代になっているのではないかと思います。その際、アグロエコロジーは大きな指標となると思います。
