目が点になるニュース。2021年から有機農家が自分たちの種子を売る権利をEUが承認したという。
なんでこれで目が点になるかというと、EUは世界でもっとも種子が統制された地域で、種子の売買はEU共通カタログに登録された種子のみ。それ以外の種子を売買したら犯罪となる。有機農家にとって種子の交換は必須。同じ場所で同じタネだけを使い続けたら劣化する。だから種子を交換しなければならない。無償で交換することは認められているけれども、もし、交換するタネがないからお金で払ってしまったら、売った人は逮捕されてしまう。
タネを登録すればいいと思うかもしれないが、その登録料は最低でも年間6000ユーロ(約80万円)程度かかる。個々の農家で賄える金額ではない。だから自ずと売買される種子は大企業の種子となる。世界トップ10の種子企業のうち5つはヨーロッパから生まれた企業。6大遺伝子組み換え企業のうち3社はヨーロッパ生まれ。種子企業の力が強い地域なのだ。
しかも、これまでは登録するためにはその種子が新しく、同質的で、安定していて、他と区別しうる品種だけ。有機農業で活用される固定種・在来種には多様なものが多い。もともと多様な種子に手を加え、工業製品のように均質化されたものだけが優遇される。つまり種子企業が改良した品種以外は登録することは基本的にできない。そもそも今、世界各国に「モンサント法案」を押しつける根拠となる国際条約UPOV条約はヨーロッパを中心に整備が進んだものだった。
しかし、EUでの有機農業の発展はめざましい。そんな中、種子の規制は大きな桎梏になっていただろう。つまり工業的種子だけを重視する政策はもはや時代遅れになっている。
このEUの決定によって、2021年からは有機農家が持つ多様な種子がマーケットで買えるということになる。従来のような手間のかかる登録審査、登録、高額の登録料も不要だという。そうなれば大企業に支配されていた種子マーケットが解放され、種子の種類もあっという間に多様になるのではないだろうか?
それだけにこのニュースは目が点になる。ただ、このニュースが本当だろうか、と思って探してみたのだけど、あまり裏付けとなる情報は多くない。フランス語圏を探せばもっとあるだろうけれども。大ニュースであるはずなのに、この静けさは何だろう。反応はこれからなのかもしれない。
農民の種子を守る動きは他の地域にも存在する。ブラジル政府は遺伝子組み換え種子や企業の改良種の種子のために種子法を改正したが、その際、農家の持つ伝統的な種子をその種子法から除外させることで、農家の種子の権利(保存する権利、交換する権利、売買する権利など)を確保した。
そしてEUも2021年から農家が種子を売る権利を認めるということになるとすると、これは大きな一歩と言えるのではないだろうか? 来年から国連「家族農業の10年」が世界で開始されるが、こうした法制が世界中で必要という議論が必ず生まれてくるだろう。
日本では農水省が今後、自家採種は原則禁止にするという方針を検討していると言われている。ここでの自家採種禁止の対象は新品種に限られ、従来の種子の自家採種が禁止されるというわけではない。しかし、日本での流通は多様なものを排除しつつある。極少数のブランド品種だけが流通に乗る。このような状況では従来の種子が排除されていってしまう危険は高まっていくだろう。市場に出すためには新品種を栽培するしかなくなってしまう可能性が高いからだ。多様なものをどう流通させるか、それなしに種子は守れない。
日本でも農家が持つ多様な種子、伝統的な種子を守り、育て、次世代に継いでいくために法制度を整える必要がある。現在、日本には種子に関して種苗法しか存在しないが、この種苗法は1998年に大幅に改訂され、農家の種子の権利よりも企業の知的所有権を優越させることができるようにしたものだ。均質化された種子のための法律であって、もともと存在していた多様な種子は無視され、それを守る法律は今、日本には存在しない。
多様性が激減し、その維持に警鐘がならされる現在、そうした法律の必要性、緊急性は大きなものがあるのではないだろうか?
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Los agricultores orgánicos europeos podrán vender sus propias semillas
¡La Unión Europea autoriza la venta de semillas campesinas!
L’UNION EUROPÉENNE AUTORISE LA VENTE DES SEMENCES PAYSANNES !