「ゲノム編集」食品を押し付ける授業が高校や大学で

 政府がやるべきことをやっているのであれば安心できるのだけど、やるべきことはやらずに、やってはならないことばかりをやっていたら不安は募るばかりになる。ため息出るけど、公金使って一体何をやっているんだ、金返せ、と言いたくなるようなことばかり。高校生向けに「ゲノム編集」を受け入れることを前提の「教育」が行われていることを知った。
 
 農林省の農林水産技術会議は昨年、「ゲノム編集」食品の理解促進のためのアウトリーチ活動と称するものを外部委託で行っている(1)。外部委託といっても委託されたのは元農水官僚。なんか身内で税金使ってやっている感があり、その報告書を読んで、無性に腹が立った。
 
 要するに「ゲノム編集」食品を肯定する生徒を増やすためだけの事業で、それを高校や大学対象を中心に行っているというのだ。だいたい、そのカリキュラムは想像つく。「ゲノム編集と自然の変異は区別がつかない」とか、「ゲノム編集を使うとより短期間で効率的に品種改良ができる」とか。要するに「ゲノム編集」は品種改良のためのバラ色の技術だという授業を行い、それを「理解した」ものがどれだけ出たかをチェックする内容だ。 “「ゲノム編集」食品を押し付ける授業が高校や大学で” の続きを読む

混合農薬の新たな毒性の発見と日本の思考停止:グリホシネート規制パブコメ

  今の日本の厳しい現状を作り出しているのは他ならぬ思考停止以外ない。「〇〇だから仕方ない」できない理由を見つけて安心するのか、そこで止まる。すべてが止まる。その典型が「すべての原因が日米安保にある」だから何も変えられない? いや、変えられるものも変えられないと決めつけているから変わらないに過ぎない。
 
 メキシコはモンサントの農薬ラウンドアップ(グリホサート)の禁止、遺伝子組み換えトウモロコシの輸入の禁止を決めた。米国に接するメキシコ、その米国政府に絶大な力を持つモンサント(現バイエル)に挑戦する、あまりに無茶、無謀ではないか? まるでアリと巨象、ダビデとゴリアテの戦い。バイエルは米国政府に圧力かけ、米国政府もメキシコ政府を威嚇する。しかしメキシコ政府は怯まない。ついに米国内でメキシコのために遺伝子組み換えトウモロコシではなく、Non-GMOトウモロコシを作ろうという気運まで生まれてきた(1)。 “混合農薬の新たな毒性の発見と日本の思考停止:グリホシネート規制パブコメ” の続きを読む

広域下水汚泥の肥料利用に待った

 ウクライナでの戦争以前から化学肥料の原料の急騰は始まり、それが戦争によってさらに進んだ。化学肥料指標はやや下がったものの、それでも数年前の3倍近い価格になっている(1)。
 そこで急浮上したのが広域下水汚泥の活用。かつてから小さなレベルでは安全で確実な肥料として長いこと糞尿などが活用されてきた。もし、そのサイクルが小規模で安全を確認できるものであれば問題にするには及ばない。でも現在、農水省・国交省で検討が進められようとしているのは広域の下水汚泥の活用だ。
 何が問題か? 現在、さまざまな日常製品に分解されることのない永遠の化学物質と言われるPFASが使われている。それらが下水に流れ込む。その他にも広域の下水にはさまざまな汚染物質が含まれる。農水省もいくつかの重金属に関しては注意すべきとしているものの、PFASに関してはまったく何の基準もないのが実態だ。
 
 化学肥料は今後、原料も枯渇するので頼れない。それに代わり、地域循環が求められるのは時代の趨勢だろう。しかし、もしPFASや抗生物質などの汚染物質が入った肥料を使えば農地が永遠に汚染されてしまう。除染は困難だろう。米国では日本の農地の倍近い800万ヘクタールがPFASに汚染され、中には閉鎖を余儀なくされた農地もあるという。メイン州では広域下水汚泥の肥料への利用が今年禁止されるに至っている(2)。
 
 日本はその下水汚泥の積極活用に向かっており、その最初の官民検討会議が17日に開催された(3)。当然、どんな検討をしたのかが気になったが、検討会は公開されず。それを伝える記事にも十分な情報がない(4)。
 広域下水汚泥でなく、小さな規模で、たとえば汚染物質も作っていない地域の下水であったり、飼料もこだわっている畜産農家からの糞尿を活用するための小さな循環を多数作るという計画であれば、農地も汚染されず、地域循環も進められるが、検討会のメンバーを考えるとそのような話にはなりそうにないと懸念が募る。
 
 「うちは安全なものを使っているから大丈夫」という話にはならない。上流で汚染肥料が使われれば汚染は広がる可能性があるから。
 
 一時の失敗のために未来を犠牲にしてはならないはず。まずは地域の地方自治体、さらには国交省や農水省の出先機関と話してみることが必要なのではないだろうか?

(1) Fertilizer Price Index
https://fertilizerpricing.com/priceindex/

(2)

「永遠の化学物質」PFASが農地を汚染する

(3) 農水省「下水汚泥資源の肥料利用の拡大に向けた官民検討会」の開催について
https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/bio_g/221014.html

(4) 下水汚泥資源の肥料利用拡大へ官民検討会 農水省・国交省
https://www.jacom.or.jp/nousei/news/2022/10/221018-62229.php

広域下水汚泥の利用はNG。今こそ化学肥料への依存を減らす時

 今後、経験したことのない事態が起きてくるだろう。でも一番大事なのはパニックにならないことだ。何事もその事態が生まれたことにはその背景がある。それをじっくり見据えれば危機から抜け出す道は見えてくる。パニックになれば危機は一気に加速する。
 食料品の価格が一気に高騰し、商品によっては姿を消す。さらに深刻なのは生産が化学肥料が不足するため困難になることだ。そこで、岸田首相は化学肥料の確保のために下水汚泥の利用を農水省に指示した(1)。海外依存の化学肥料の原料を地域循環で取り戻す、一見よさそうにも見えるかもしれない。でも、これにはとんでもない危険がある。 “広域下水汚泥の利用はNG。今こそ化学肥料への依存を減らす時” の続きを読む

米国農務省、有機農業転換計画を本格始動

 これまでの化学肥料や農薬に依存した工業型農業から離脱することは急務だ。なぜならこれが様々な多重危機の根幹の主因となっているからだ。気候危機も生物絶滅危機も人の健康危機も、そして食料危機も深く関わっている。すべての状況ですでに待ったなし。だから食料危機を前に「有機農業は棚上げ」という宣伝に対しては警戒しなければならない。逆に今こそ、化学肥料や農薬に依存した農業からの脱却は待ったなしなのだから。そして、世界ではCOVID-19のパンデミック、ウクライナでの戦争を受けて、この必要性を多くの人びとが理解するようになってきた。
 多重危機の中の食料危機
 あの米国でも有機農業への転換計画が始まる。Organic Transition Initiativeがそれで、予算は3億ドル(今日のレートで413億円くらい)(1)。米国としては大きな額ではないが、昨日紹介したFarm to Schoolとも連動して動けば、米国でも一気に有機学校給食が増やせるし、食のシステムを変えるきっかけを作り出すことにつながる可能性があると市民団体は注目する(2)。 “米国農務省、有機農業転換計画を本格始動” の続きを読む

「みどりの食料システム戦略」に関するパブリックコメント出しました(第2弾)

「みどりの食料システム戦略」に関するパブコメ、締め切り当日なのだけど、昨日出したコメントは農薬について、何も言及しなかったので、あらためて、農薬についての追加のコメントを出します(例によってコメントという体裁になっていませんが)。 “「みどりの食料システム戦略」に関するパブリックコメント出しました(第2弾)” の続きを読む

「みどりの食料システム戦略」に関するパブリックコメント出しました

 明日8月9日締め切りの「みどりの食料システム戦略」に関するパブリックコメント、何も書かないのは不本意なので、書いてみました。殴り書き状態で、全然模範的なコメントからはほど遠いのですが、あえてさらします。 “「みどりの食料システム戦略」に関するパブリックコメント出しました” の続きを読む

みどりの食料システム戦略に関するパブリックコメント

「みどりの食料システム戦略」に関するパブコメが相次いで出ている。1つは締め切りが8月9日。
環境負荷低減事業活動の促進及びその基盤の確立に関する基本的な方針(案)についての意見・情報の募集について
 
 さらに8月25日が締め切りのパブコメも。
環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律第39条第4項の規定に基づく基盤確立事業実施計画の認定に係る審査基準及び標準処理期間案についての意見・情報の募集について “みどりの食料システム戦略に関するパブリックコメント” の続きを読む