広域下水汚泥の利用はNG。今こそ化学肥料への依存を減らす時

 今後、経験したことのない事態が起きてくるだろう。でも一番大事なのはパニックにならないことだ。何事もその事態が生まれたことにはその背景がある。それをじっくり見据えれば危機から抜け出す道は見えてくる。パニックになれば危機は一気に加速する。
 食料品の価格が一気に高騰し、商品によっては姿を消す。さらに深刻なのは生産が化学肥料が不足するため困難になることだ。そこで、岸田首相は化学肥料の確保のために下水汚泥の利用を農水省に指示した(1)。海外依存の化学肥料の原料を地域循環で取り戻す、一見よさそうにも見えるかもしれない。でも、これにはとんでもない危険がある。 “広域下水汚泥の利用はNG。今こそ化学肥料への依存を減らす時” の続きを読む

米国農務省、有機農業転換計画を本格始動

 これまでの化学肥料や農薬に依存した工業型農業から離脱することは急務だ。なぜならこれが様々な多重危機の根幹の主因となっているからだ。気候危機も生物絶滅危機も人の健康危機も、そして食料危機も深く関わっている。すべての状況ですでに待ったなし。だから食料危機を前に「有機農業は棚上げ」という宣伝に対しては警戒しなければならない。逆に今こそ、化学肥料や農薬に依存した農業からの脱却は待ったなしなのだから。そして、世界ではCOVID-19のパンデミック、ウクライナでの戦争を受けて、この必要性を多くの人びとが理解するようになってきた。
 多重危機の中の食料危機
 あの米国でも有機農業への転換計画が始まる。Organic Transition Initiativeがそれで、予算は3億ドル(今日のレートで413億円くらい)(1)。米国としては大きな額ではないが、昨日紹介したFarm to Schoolとも連動して動けば、米国でも一気に有機学校給食が増やせるし、食のシステムを変えるきっかけを作り出すことにつながる可能性があると市民団体は注目する(2)。 “米国農務省、有機農業転換計画を本格始動” の続きを読む

「みどりの食料システム戦略」に関するパブリックコメント出しました(第2弾)

「みどりの食料システム戦略」に関するパブコメ、締め切り当日なのだけど、昨日出したコメントは農薬について、何も言及しなかったので、あらためて、農薬についての追加のコメントを出します(例によってコメントという体裁になっていませんが)。 “「みどりの食料システム戦略」に関するパブリックコメント出しました(第2弾)” の続きを読む

「みどりの食料システム戦略」に関するパブリックコメント出しました

 明日8月9日締め切りの「みどりの食料システム戦略」に関するパブリックコメント、何も書かないのは不本意なので、書いてみました。殴り書き状態で、全然模範的なコメントからはほど遠いのですが、あえてさらします。 “「みどりの食料システム戦略」に関するパブリックコメント出しました” の続きを読む

みどりの食料システム戦略に関するパブリックコメント

「みどりの食料システム戦略」に関するパブコメが相次いで出ている。1つは締め切りが8月9日。
環境負荷低減事業活動の促進及びその基盤の確立に関する基本的な方針(案)についての意見・情報の募集について
 
 さらに8月25日が締め切りのパブコメも。
環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律第39条第4項の規定に基づく基盤確立事業実施計画の認定に係る審査基準及び標準処理期間案についての意見・情報の募集について “みどりの食料システム戦略に関するパブリックコメント” の続きを読む

根本的な政策整備が不可欠(種子法・種苗法)

 どうにも現実の表面的な動きにとらわれてもっと大きな波に呑まれてしまうことが多い。僕が主なフィールドとしてきたのは日本の国外の動き。2010年頃から世界で「モンサント法案」と言われる動きがラテンアメリカ、アフリカ、アジアなど世界各地で本格化していて、その動向を追っていたのだけど、2017年日本でも種子法廃止が閣議決定されてしまった。国内の動きは誰かがやってくれるだろうと思っていたけど、結局、追わざるをえなくなった。しかし、問題を詰めていくと、この動きをつかむためには1990年代あたりからの動きを見ないとその本質が見えないことがわかってきた。
各国新品種届け出推移
 2001年の統計では日本の新品種出願数は世界第2位。ところがそれは年々落ちていき、2009年には中国に、2015年には韓国に抜かれている。中国は別格としても他国は毎年、新品種開発する数は順調に増えているのに、日本だけ逆に急速に落ちている。この20年間で半分くらいに落ちてしまった。 “根本的な政策整備が不可欠(種子法・種苗法)” の続きを読む

「永遠の化学物質」PFASが農地を汚染する

 「永遠の化学物質」PFASが農地を汚染する。そして地下水、食も。
 自然では分解することのない合成化学物質PFAS、耐熱、耐水、汚れ防止などのためにさまざまな製品に使われるが、人体には有害でがん、甲状腺異常、肝臓障害、出生異常、免疫抑制など広範な健康被害の可能性がある。米軍基地がその汚染源となっているが、工場から排出されている可能性もある。
 しかし、基地も工場もない農村がこのPFASに汚染される。その原因は肥料として用いられる下水汚泥。つまり工場排水などでPFASに汚染された水が下水に流れ込む。下水処理場の処理で水は浄化されるが、汚泥の中にPFASは残留する。その汚泥が肥料として使われている。米国の市民団体EWGは米国の農地2000万エーカーがPFASに汚染されていると推定されると4月に発表した(1)。2000万エーカーは約800万ヘクタール、日本の全農地の倍近い農地がPFASに汚染されてしまったことになる。汚染された農地では地下水も汚染され、閉鎖を余儀なくされた農場も出ている。 “「永遠の化学物質」PFASが農地を汚染する” の続きを読む