重イオンビーム育種米で何が変わる?

 重イオンビーム放射線育種品種に変わると何が変わるのか。図にしてみた。オリジナルの「コシヒカリ」は特許許諾料はもちろん、品種許諾料も不要で自家採種ができるので有機農業にも適している。だけど、重イオンビーム育種の「コシヒカリ環1号」許諾を得た上で、特許料と品種許諾料を払わないと育てることができない。農水省は自家採種も不可だとしている。
 
 そのお金を払っても育てたい、という農家もいるだろう。ただ、この料金を農家に課すことは正当だろうか? この品種が必要になったのはカドミウム汚染ゆえ。カドミウム汚染は鉱山や工場によって引き起こされている。だから、汚染者負担原則から言えば、本来、この費用を負担すべきなのは汚染企業だ。そして本来ならば国や地方自治体は汚染対策事業によって汚染を封じ込める必要があった。それをしっかりやらなかったのは政府や地方自治体の責任だ。
 
 それを考えれば、「コシヒカリ環1号」や「あきたこまちR」の特許料や品種許諾料は農家に課すのではなく、汚染者である企業に請求すべきものだ。農家は被害者であって、その被害者にその負担をさせるのは二重に間違っている。現状では特許料は1kg4〜5円程度だと聞くが安ければいいというものではない。
 
 この「コシヒカリ環1号」や「あきたこまちR」はカドミウムを吸収する機能を果たす遺伝子を破壊してしまったため、マンガンの吸収力が3分の1未満に下がってしまっている。実際に宮城県は「ひとめぼれ」と「コシヒカリ環1号」をかけ合わせた品種を昨年から生産する予定だったが、収量が下がる懸念を理由に中断している。その原因を「カドミウムを吸わない遺伝子をのせると(収量が)落ちてしまう」と県担当者は語っている(1)。「コシヒカリ環1号」の栽培実験をした埼玉県でも同様に収量の減少があった(2)。「あきたこまちR」は「あきたこまち」と遜色ないと秋田県は言っているが、やはり減収になるようだ(3)。
 従来にない特許許諾料や品種許諾料がかかる上に収量は減り、さらにマンガン不足から来るごま葉枯れ病の可能性もあり、余計な農薬やマンガンを追加しなければならなくなる可能性もある。余計な費用がかかり、しかも手間もかかり、収量も減る可能性が高い。
 
 それでも「あきたこまちR」を育てたいという農家もあるだろう。それもありかもしれない。でも、「あきたこまちR」を育てたくないという農家にとってはこの状況はどうだろう? お金の面でも、収量の面でも、まったくデメリットばかり。これを強要するというのはやはり理不尽だ。
 
 秋田県は自家採種したり、他県から種籾を取り寄せれば従来の「あきたこまち」を栽培してもいいと言う。でもこれはあまりに無責任だ。やれるものならやってみろ、ということだから。ただでさえ経営は厳しいのに、高い金を出して他県から種籾を買える余裕がある農家がどれだけいるだろうか? しかも産直をやっている農家以外、販売することも困難になる。
 
 秋田県でも農家の高齢化は進んでおり、今回の全量転換を機に離農してしまう農家が続出するのではないかと危惧している。農家が減ってしまえば地域は廃れてしまう。「あきたこまちR」を栽培する農家だけでは地域を支えられなくなるかもしれない。それは秋田県が望むところではないだろう。だからこそ、せめて、この全量転換の前に経過措置を設けることが不可欠になるはずだ。
 
 農家が選ぶのが「あきたこまちR」か「あきたこまち」かに関わらず、農水省や秋田県は農家を支える義務がある。この転換が原因となって離農する人を出してはならない。
 まず、「あきたこまちR」を選択した農家に特許料などを課すべきではない。そして、「あきたこまち」を育てる農家に他県から種籾の調達を県は助力すべきであり、その販売も必要な支援に取り組む必要がある。
 
 この問題は秋田県だけの問題ではない。農水省は2025年までに3割の地方自治体の採用を目標にした。3割と言えば14県。米どころの県が動けば影響は3割ではすまないし、さらに拡げる予定なのだろう。兵庫県でもそれに向けて検討が進んでいるようだ。兵庫県の生産の半分近い[コシヒカリ」を「コシヒカリ環1号」に全量置き換えるという案だ。まだ決定していないといいつつ、その姿勢は固そうだ。
 
 この問題についてコープ自然派兵庫が12月7日に学習会を開催し、秋田県立大学教授で有機農業学会会長の谷口吉光さん、分子生物学者で遺伝子組換え食品を考える中部の会代表の河田昌東さんとOKシードプロジェクト事務局長の印鑰がこの問題について話し合う。谷口さんからは秋田でどんな動きを作り出しているのか、そして河田昌東さんからは重イオンビームがどんな変化を稲に作り出すのか聞けると思う。
 
 オンラインもあるとのことなので、ぜひご参加を!

兵庫のお米が変わる⁉何がどう変わるの⁉
2023年12月7日(木)13:30~16:00
中央区文化センター会議室1001・オンライン併用
(神戸市中央区東町115 番地)
申し込みは12月3日締め切り
https://www.hyogo.shizenha.net/event/30824/

(1) 「令和2年度主要農作物品種審査会(稲,大豆)」会議録
https://www.pref.miyagi.jp/documents/18668/839311.pdf
「収量につきましても,カドミウムを吸わない遺伝子をのせると落ちてしまう傾向があります」と県の担当者が発言している。

(2) 埼玉県試験研究の実施状況
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/83965/3sikenkenkyuu.pdf
「コシヒカリ環1号は、コシヒカリと比較して、ほぼ同様の生育であったが、穂長が短く、収量が少なく、整粒粒比も低かった。また、稈長が長く、耐倒伏性が低かった。」

(3) 秋田県生産者向けリーフレット
https://www.pref.akita.lg.jp/uploads/public/archive_0000073119_00/生産者向けリーフレット.pdf
収量は「あきたこまち」100に対して、「あきたこまちR」は98。10aあたり15キロの減収。

これらのデータから見ると収量が減る傾向なのはかなり確率が高いと考えられる。望まない・必要のない地域に全量転換を強いることが許容される品種にはなっていないのではないか?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA