放射線育種なしにカドミウム対策は可能?

 毎日「あきたこまち」をいただいています。とてもおいしいお米だと思います。しかし、これを放射線育種米に転換してしまう動きが進もうとしています。秋田県は2月24日県議会農林水産委員会で、「あきたこまち」をカドミウムをほとんど吸収しない新品種「あきたこまちR」に2025年以降、全面的に転換することを報告したと報道されています。でも、この報告では「あきたこまちR」が放射線照射によって作られた交配種であることは伝えていません(1)。「あきたこまち」は秋田県が作るお米の7割を超える主力品種です。

 放射線育種は核の「平和的利用」という大義名分のため、かなり昔から使われている技術です。しかし、放射線によって遺伝子を傷つけることが果たして望ましい育種であるか、しっかりとした議論はされてきたでしょうか? ほとんどの人は知りもしない中で進められていたのが実際ではないでしょうか? 

 でもこう言うと、カドミウム汚染の問題はどうするんだ、と言われるでしょう。今回の放射線育種米への転換はカドミウム・ヒ素汚染対策の一環であり、放射線照射によってOsNramp5遺伝子の1塩基を壊すことでカドミウムをほとんど吸収しないお米が作ることができる。その品種に全量転換すればカドミウム被害を減らすことができるというわけです。確かにカドミウム問題は大きな問題だと思います(2)。

 でもちょっと待った! カドミウム対策には放射線育種が必須なのか、それ以外に方法がないのか、しっかり検証が必要です。

 実際に、遺伝子操作による「品種改良」は決してうまく行っているとはいえません。これまでさまざまな遺伝子操作による品種が作られてきましたけど、ほとんどのものは遺伝子操作を使わない、従来の品種改良で作られたものの方がすぐれた品種が得られています。たとえば、塩害耐性、干ばつや高温に耐えられる品種、低リグニンの品種、収量の多い品種など、さまざまなものが作られましたが、たいがいのものは遺伝子操作使わない従来の品種改良の方がよりよいものが実現できているのです。

 唯一の例外が除草剤耐性、害虫抵抗性という分野です。もっともこれはラウンドアップかけても枯れないとか、虫を殺す毒素を作り出すというもので、この分野だと確かに遺伝子操作が強みを発揮しますが、この効能が有効なのは数年のみで、すぐに雑草も虫も耐性を獲得してしまい効果が減ってしまいます。結局、長く使い続けることはできず、画期的な品種とは呼びがたいものです。こうした遺伝子操作品種が環境や健康への懸念は大きいのもマイナスです。

 カドミウムおよびヒ素汚染対策として、今後の日本の食をカドミウムやヒ素汚染から防ぎ、また環境中の汚染をどう減らしていくかは重要な課題です。でも、世界の中に存在する多数の在来種、そして農法によって解決する道は存在していると思います。もしその道が見つからなければ有機の「あきたこまち」は姿を消してしまいます。

 もし、放射線育種を選択するというのなら、それは政府や地方自治体が勝手に決めるのではなく、お米の生産者、そしてお米を食べる人がその議論に参加する必要があると思います。知らされずに食べさせられることだけはちょっとゴメンです。

 OKシードプロジェクトでは5月9日にオンライン学習会を開催します。ぜひ、ご参加ください。

OKシードプロジェクト学習会「放射線による突然変異育種って何?」
https://okseed.jp/news/entry-177.html

 僕は、この放射線育種ではない「あきたこまち」を2025年以降も食べ続けたいと思います。放射線育種を使わずにカドミウム対策もできる道を見つけることができると思います。

(1) 秋田県農林水産委員会
https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/70452
ここの資料では放射線育種については一言も触れられていない。

「あきたこまちR」、秋田県の奨励品種に カドミウム吸収抑制、農家の負担軽減へ
https://www.sakigake.jp/news/article/20230225AK0016/
秋田魁新報社の報道でも一言も触れられていない。

しかし、「あきたこまちR」は重イオンビーム照射によって作られた「コシヒカリ環1号」の後代交配種
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fertilizerscience/44/44/44_77/_pdf

(2) お米のヒ素・カドミウムを同時低減する技術
https://www.affrc.maff.go.jp/docs/project/seika/2020/r2_seikashu_14.html

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