遺伝子組み換え作物の商業栽培が始まって25年。その負の影響はもはやさまざまな分野で明らかになっているが、その最大の問題の1つが、遺伝子汚染だと言えるだろう。この問題は「ゲノム編集」ではさらに危険になると言わざるを得ない。この問題を解決しないで、「ゲノム編集」作物の栽培は許されてはならない。
モンサントなどによって世に出された最初の世代の遺伝子組み換えトウモロコシ、40を超える品種がスクラップになろうとしている。なぜかというと、もはや無用の長物でしかないからだ。虫が食べたら虫が死ぬようなタンパク(Bt毒素)を作り出すように遺伝子組み換えされたトウモロコシが作られているが、このBt毒素に対して虫たちは耐性をつけてしまったのでその品種はもはやまったく意味がない。遺伝資源としても保持する意味がない。
でも、スクラップにしようとしても、商品棚から外すだけで、話は済まない。というのもその遺伝子は花粉の飛散によって在来種にその遺伝子を移してしまっているからだ。
遺伝子組み換え技術の推進側はこの遺伝子組み換えトウモロコシは人の手を加えないと育たず、生命力は弱いので、勝手に遺伝子組み換え作物が他を制圧することはありえない、環境には影響を与えないなどと言って、正当化を図ったりするのだが、遺伝子組み換え作物が自生するという形態ではないとしても、この遺伝子汚染は実際、世界で拡がっている。
その実態とその事態に対して、どうメキシコの農民たちが抵抗して、遺伝子汚染に対応しているかをまとめた本が作られた。総ページ数327ページ。全文無償ダウンロード可能(ただしネットワークが遅いので時間はかかる)。
ちなみにメキシコでは遺伝子組み換えコットンと大豆の栽培は行われているが、遺伝子組み換えトウモロコシの栽培は一時、解禁されかけたが、禁止されている。それにも関わらず、米国から輸入される遺伝子組み換えトウモロコシや一部の違法栽培などからの影響からであろう。遺伝子汚染は深刻な問題になっている。
遺伝子組み換え作物の場合、現在の承認の仕組みではこのような在来のトウモロコシの遺伝子汚染をする問題は考慮されない。野生のトウモロコシの種に影響を与えないとされれば問題ないということになる。トウモロコシは中南米原産で日本には野生のトウモロコシはないから、そもそも危険ないので、すぐ承認ということになる。さらに「ゲノム編集」の場合はその審査すらも何も存在しない。遺伝子組み換え作物以上にさらに大きな問題になりうる。
メキシコでは多くの農家の犠牲の下で、遺伝子汚染を取り除く努力がなされている。本来は遺伝子組み換え企業が賠償すべきであるにも関わらず。東電が原発事故でまき散らした放射性物質に責任を取らないのと同様に、バイオテクノロジー企業は遺伝子操作した花粉の責任を取ろうとしない。
それをさらに無規制に「ゲノム編集」作物でも許し続けるのか、問われている。
Maíz, transgénicos y transnacionales
https://www.biodiversidadla.org/Recomendamos/Maiz-transgenicos-y-transnacionales