なぜ、京大生協で「ゲノム編集」マダイ・バーガー販売なのか、ということなのだけど、その裏にはかなりやばい構造がある。
やばい構造とは何かというと、この「ゲノム編集」マダイを作っている企業の本社は京大の中にあるのだ。なんで国立大学の中に営利企業の本社が置けるのか、理解に苦しむのだが、その本社所在地は京都府京都市左京区吉田本町36番地1 国際科学イノベーション棟 京都大学である。
そして、その「ゲノム編集」マダイやトラフグを開発したのは京大と近畿大であり、国の支援を受けている。公的な支援を受けた研究は公的に還元されるべきだが、それは民間企業にそのまま吸い取られているだけでなく、本社まで京都大にあるということになっている。これっていったい何?
開発といっても開発者は遺伝子工学の専門家かもしれないが、水産関係の専門家でもなく、生態系の専門家でもない。しかし、一般の人はそうは取らないだろう。京大の先生が作ったのだから安全なはず、と思うかもしれない。でも、大学の中で、果たしてこうした開発の是非、食を進めることは正しいことか、という論議を経て、開発が決定されたわけではない。国が金を出す、企業が金儲けをする、研究者がそれを引き受ける、こうした条件が揃えば、今は大学がその下請け機関となってしまう。当然、京大の中にはこうした関係を否定的に見ている研究者は少なくないと思う。しかし、今、大学は独立行政法人で、予算を持って来られない研究者は研究が困難になる。人びとが望まない研究であろうと、スポンサーがついて、政府が後押しすれば成立してしまうのだ。研究者はそのまま企業の役員となり、企業の利益のために研究する。税金が民間企業にすべて吸い尽くされているのに、政府や京都府はこの大学ー企業の支援を止めない。
そして、大学生協もそれを一体となって支援する。職員組合も組合員の利益ということで擁護に回るかもしれない。そしてそうした組合に忖度する野党も反対の声を上げないだろう。市民の利益は完全に置き去りにされて、企業の利益だけが擁護される体制ができてしまっている。
大学は本来、人びとの健康や社会の安全に役立つ研究をする場であり、特定の勢力のためではなく、公平な立場で問題を究明する場であるべきだけれども、現在の大学ではそれとはまったく相容れない研究・開発が行われ、その推進に生協までが役割を担っていく、大学はハク付けに使われ、世界の市場が拒否している遺伝子操作食が日本で普及する上で活用されるとしたら、そんなことは市民が受け入れられるだろうか?
京都府はこうした大学を集めて、企業と連携して、フードテック・スマートバレーを作ろうとしている。政府や企業の利益にさえなれば、大学はそうした開発の下請け機関に容易になってしまうだろう。そして大学がバックにあることで、市民は容易に受け入れてしまうかもしれない。
果たして大学はこれでいいのだろうか? こんな大学でこの日本の未来はどうなってしまうのか? 学術会議で軍事研究問題が議論されているが、すでに日本の学術研究のあり方は危ない線を超してしまっていると思う。京都大学はリージョナルフィッシュ社の本社をいつまで学内に許容するつもりなのか。ひじょうに疑問である。
また、このような研究のあり方を根本から問う必要があるだろう。もし問えないのであればもはや税金を投入して支えるには値しないと思う。生協だけの問題ではなく、大学のあり方を根本から問い直すべきだ。