EU、「ゲノム編集」規制緩和の圧力に屈する?

 すでに想定はされていたけれども、最悪のシナリオが現実のものになりそうだ。EUが「ゲノム編集」を来年夏から規制なしの流通を認める方向で動き出した。
 米国や日本が「ゲノム編集」食品の規制無し流通を認める中、EUでは2018年7月に欧州裁判所が「ゲノム編集」生物は従来の遺伝子組み換え生物と同様の規制をしなければならないと裁決した(1)。「ゲノム編集」が従来の遺伝子組み換えと同様に外来の遺伝子を挿入して遺伝子操作していることを考えれば当然の判断であった。
 バイオテクノロジー企業はEUのこの判断を潰すために大金を投じていることが市民団体がもとめた情報公開請求によって曝露されている(2)。遺伝子組み換え企業のロビー団体やビル・ゲイツ財団が資金を提供する財団から出向した「科学者」が欧州委員会が設置した検討会で、欧州が「ゲノム編集」を解禁するために準備を着々と進めていた。
 この5月にEU各国は会合を行うことになっており、EUとしてのパブリック・コンサルテーションが始まり、期限は7月。市民を含むステークホルダーがそれぞれの意見を述べるプロセスだが、すでに欧州委員会側から検討されている項目はすべて遺伝子組み換え企業・バイオテクノロジー企業が用意した内容のみとなっており、パブリックコメントをやるにしても、すでに初めから結論は決まっているようなものだとヨーロッパの市民団体は言う(3)。科学的な研究結果を無視して、バイオテクノロジー企業が提出する企業に都合のいい事実に基づいて政策が捻じ曲げられている。そして、来年2023年夏にはEUで「ゲノム編集」解禁となってしまう危惧が高まっている。

 EUではイスラエルが開発したオスが孵化できずに死ぬ「ゲノム編集」鶏が出てくることが想定されている。鶏卵を生まないオスは生まれてもすぐに殺される。だったら初めから生まれないように「ゲノム編集」するというものだ(4)。日本の鶏もその99%の親鳥(種親)は海外からの輸入に頼っている。だからヨーロッパの鶏が「ゲノム編集」になってしまった場合、日本にも直接影響が来ると考えなければならないだろう。
 
 もちろん、欧州の市民もこのまま手をこまねいているわけではなく、さっそく、この企業の利益に占められた欧州委員会への批判が湧き上がっている(5)。この市民の力が欧州の規制緩和を止めることができることを祈りたい。
 
 気候危機も生物大量絶滅危機も破壊的な食のシステムがその大きな一因となっている。そして、現在の感染症の蔓延もまた、この食のシステムが引き起こす主要因の一つであると言えるだろう。この危機から脱出するためにはこの破壊的な工業的な食のシステムを、より生態系に配慮したシステムに急激に変えていかなければならない、これは科学者含めた共通理解だと言えるだろう。それには時間的な猶予がない。急いで変えなければ地球は燃えている、そして生物は絶滅に瀕している、人びとは食料危機に瀕しようとしている。それにも関わらず、こんな段階においても企業の利益を優先した政策によって、食はさらに危険の度を増そうとしている。
 
 もし、EUが規制緩和してしまえば、世界中でバイオテクノロジー企業は「ゲノム編集」食品を次から次へと出してくるだろう。どう対抗していくのか、すでに模索は始まっている。
 
 地域の食を、自分たちの手で守っていく、「ゲノム編集」されていない、遺伝子操作されていないことを表示していく、その道以外に私たちに残された道は残っていないだろう。
 
 次の世代に遺伝子操作されていない安全な食を果たして私たちは手渡すことができるのだろうか? 今、それが問われている。地域でその活動は世界各地で生まれており、それを育てることはまだまだできるはずだ。
 
(1) Gene-edited plants and animals are GM foods, EU court rules
2018年、欧州裁判所の裁決。「ゲノム編集」生物は遺伝子組み換え生物。
https://www.theguardian.com/environment/2018/jul/25/gene-editing-is-gm-europes-highest-court-rules

(2) 市民団体の情報公開請求によって曝露されたEUでのバイオテクノロジー企業のロビー活動
2021年4月5日の印鑰の投稿
https://www.facebook.com/InyakuTomoya/posts/pfbid02c5CVqzMCmv3YGyWRtZzSyt2LQ9j4Daz6J9t5uu6BDyCdsG1wjn7acysL5KRjgwpEl

(3) EU-Commission starts consultation on New GE
Biased questions indicate expected outcome
https://www.testbiotech.org/en/news/eu-commission-starts-consultation-new-ge

(4) イスラエル企業が開発した「ゲノム編集」鶏に関する印鑰の投稿(2022年3月20日)
https://www.facebook.com/InyakuTomoya/posts/pfbid0DbtNvaEy3Vdthh6L1HWFKNEbx9AcuWDG2j71jSTtMH6esrQoGYZa2evq4X7mDVn1l

(5) 食品流通企業による「ゲノム編集」規制緩和に反対する声明にかする印鑰の投稿
https://www.facebook.com/InyakuTomoya/posts/pfbid0osQEavfQSRkjneePbi1X9Ngss2RsuKM6WF7SpVea1Em7PeJ8oNMJKdGCwmn48MrPl

Friends of the Earthによる欧州委員会の批判
New GMOs: Commission serves big agribusiness’ interests
https://friendsoftheearth.eu/press-release/eu-commission-serves-big-agribusiness-interests-with-latest-consultation-on-new-gmos/

ローカルフード法・条例に向けたサイト
https://localfood.jp/

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