モンサント(現バイエル)の除草剤ラウンドアップ(主成分グリホサート)は安全とされる濃度であったとしても体内に入ると、腸内微生物叢を撹乱する。人間の免疫の中心である腸、そして第2の脳と言われる腸がこうやって撹乱されてゆく。
グリホサートは植物がアミノ酸を作るシキミ酸経路をブロックする。アミノ酸を作れなくなれば体が作れなくなる。だから枯れる。モンサントは植物は枯れるけど、動物や人間にはシキミ酸経路がないので、とっても安全、と言い切ってきた。確かに人には植物が持つシキミ酸経路はない。でも人を支える腸内細菌の中にはシキミ酸経路を持つものがいる(進化の順番からは細菌が先にシキミ酸経路を作り、それを植物がもらったのだろう)。だから植物を枯らせるグリホサートは腸内細菌もダメにしてしまう。しかも、いわゆる悪玉菌はグリホサートには耐性の多いものが多い。でも乳酸菌などの善玉菌は耐性がない。グリホサートを摂取することで腸内環境は悪化してしまう。
こんな話を全国各地でさせてもらってきた。それを裏付ける研究は多数あるのだが、英国、フランス、イタリア、オランダの共同研究が今年1月21日に米国国立環境衛生科学研究所(NIEHS)のサイトに掲載された(1)。グリホサートが腸内環境に与える影響はもはや論争の対象ではなく、確定だろう。後はどう影響を体から排除して回復するかということに焦点が当たることになるだろう。そしてこの結果にモンサント・バイエルも反論できない。
一方、日本では農薬の危険についての記事が出ると、販売代理店日産化学や農薬工業会が掲載したメディアに抗議状を送り、謝罪文を書かせることが通例になってきた。こうして日本ではそうした報道は止められてきた(果たして、彼らは米国政府にも抗議文を送っているのだろうか?)。そんな中、日本でも週刊誌や地方紙が最近問題をしっかりと報道するようになってきた(2)。これは明らかに時代が変わる予兆だろう。
免疫の中心である腸がやられることで関わる病気は多数に及ぶ。アレルギー、自己免疫疾患、糖尿病、自閉症スペクトラムなど。そして、血液にも酸化ストレス(活性酸素)が加えられていく。すべての臓器に負担を与える。しかも、安全と言われる濃度であってもダメなのだから、もはや禁止して排除するしかない。グリホサートを使う遺伝子組み換え作物はもちろん、収穫前にグリホサートを振り掛けた小麦も食べてはいけないことになる。
世界でグリホサートの規制が進むのもこうした事実が明らかになってきているからだ。最近のニュースではスウェーデンで今年10月からグリホサート系農薬が家庭菜園や学校・公園などの公的スペースで使われることが禁止される(3)。こうした動きは枚挙に暇がないほどで、まとめサイトのアップデートも追いついていないところがあるかもしれない(4)。
日本でも早く禁止すべきである。日本政府は今年以降、グリホサートの再承認作業にかかる。世界の動向を見れば、これからさらに再承認するというのはありえない。もっとも農業用も含めて完全禁止のためには代替手段の普及含めて時間がかかるだろう。ドイツやフランスはすでに完全禁止に向けたその移行期に入っている。日本はその決定をいつするか、ということだ。
—
(1) Use of Shotgun Metagenomics and Metabolomics to Evaluate the Impact of Glyphosate or Roundup MON 52276 on the Gut Microbiota and Serum Metabolome of Sprague-Dawley Rats
https://ehp.niehs.nih.gov/doi/full/10.1289/EHP6990
(2) 木村ー黒田純子さんの投稿参照
https://www.facebook.com/junko.kimura.kuroda.583/posts/3866210246829816
あと、日産化学のこの誇らしげなリストをぜひご覧ください。これでこれまでは日本の市民は知る術が奪われてしまっていたのです。
https://www.nissanchem.co.jp/news_release/news/n2020_01_23.pdf#page=30
(3) Roundup förbjuds i trädgårdar
https://landetsfria.nu/2021/nummer-219/roundup-forbjuds-i-tradgardar/
(4) Where is Glyphosate Banned?
https://www.baumhedlundlaw.com/toxic-tort-law/monsanto-roundup-lawsuit/where-is-glyphosate-banned-/