農薬規制と効果的な除草法

化学農業の限界がはっきり見えた。巨額の開発費をかけてもあっという間に自然は耐性を身につけてしまう。そして、一方で多くの生物がその化学物質によって滅ぼされていく。土壌微生物から植物、昆虫、鳥類、魚などの水生生物、動物、そして言うまでもなく人間も大きく傷ついていく。化学農薬を使わなくても生産性を保ちつつ、人間を含む生態系を守ることは可能。世界はそちらに舵を切り始めた。でも日本は?
この間、日本政府は次々に農薬の規制緩和を続けている。ラウンドアップ/グリホサートの残留基準値は最大400倍に緩和された(2017年)。使用量も年々増えている。まさに世界の逆を猛烈な勢いで進む日本政府。でも、それを見直す機会がやってくる。

今年から日本政府は、ネオニコチノイド系農薬などと共にグリホサートは再評価を行うことになっている。農薬メーカーは2022年3月までに農水省に資料を提出することになっている。でも、いまだその評価方法が明示されていない。ここで再承認されてしまえば次の再評価は15年後。その間、世界が禁止しつつある農薬を使い続けるのだろうか? 今、市民が注目していることを伝えることはとても大事になる。

多国籍企業の圧力は大きいがその圧力にも関わらず、規制は進んでいる。ルクセンブルクは2020年12月31日、完全禁止となった。そして、EU全体での承認も2022年12月15日に切れる。EU諸国は来月に欧州食品安全機関(EFSA)に草案を送る予定になっている(1)。禁止を求める市民と農薬企業=遺伝子組み換え企業との攻防がまた始まることになる。バイエルは再承認を勝ち取るためにロビー活動を強化している。EUでの動向は確実に日本の審査にも影響を与えざるをえないだろう。

米国は環境保護局(EPA)が2020年1月に再承認してしまっている(2)。次の再承認は15年後となるのかもしれないが、その前に事態は動くだろう。EPAのこの判断は有効性に疑問がついているからだ。ラウンドアップによる発ガンの責任を問う裁判で2件、連続、賠償責任を認める判決が続き、EPAが承認していることを根拠に、その判決の無効を訴えていたバイエル社の主張は裁判所によって拒絶されている。さらに集団訴訟は続いており、バイエル社の旗色はきわめて悪い。買収したモンサント社自身が社内の調査でラウンドアップの毒性を知っており、それを隠して売っていたことが裁判の資料公開請求で明らかになっており、それを覆すことはもはや不可能だからだ。

米国政府機関の姿勢はモンサント/バイエル擁護になっているが、一方で、カリフォルニア州では売る側の責任も問われる事態になっている。製品を製造する会社が危険を隠して売っていたことがばれる→売る側もそれを知らせずに売ることは許されない、ということになり、販売店も訴訟の対象になりかねない。すでにコストコやB&Qは販売をやめており、米国の市民運動はHome DepotとLowe’sにも販売をやめることを求めるキャンペーンを展開しており、多くの人がラウンドアップ/グリホサートの問題に気がつき始めている(3)。
日本でも小樽・子どもの環境を考える親たちの会の手紙に応える形で100円ショップのダイソーがグリホサートの販売をやめている(4)。

地方自治体が公園、道路、学校などでの除草にグリホサートの使用を禁止する自治体も世界で急速に増えている。スチーム熱による除草機やさまざまな抑草技術など代替方法も開発されてきている(5)。

スチーム除草
働きかける相手と内容として、特に農家の代替手段の確保が一番大変になると思われるが、ドイツやフランスでは政府が農家に代替手段を提示して、時間をかけて2024年までに禁止するという方針を提示している。これは日本でも参考になるだろう。

・ 地方自治体/学校による農薬使用の禁止
・ 個人向け販売の禁止(農家除く。ホームセンターや薬局などで販売させない)
・ 鉄道会社など企業による散布禁止の働きかけ
・ 農家の代替手段を確保を前提に農業用の禁止(特に収穫前散布の禁止、最終的にすべての使用禁止)
などステップを踏めば、着実に影響を減らしていくことは可能だろう。

グリホサートの禁止に向けて、政府の再評価(6)に注目せざるをえないのだが、傍観していては何も進みそうにないので、交渉していく必要がありそうだ。

デトックス・プロジェクトの活動にぜひ、ご注目ください!(7)


(1) European Commission: Glyphosate Status of glyphosate in the EU
https://ec.europa.eu/food/plant/pesticides/glyphosate_en

(2) EPA: Glyphosate
https://www.epa.gov/ingredients-used-pesticide-products/glyphosate

Which Countries and U.S. States are Banning Roundup?
https://www.carlsonattorneys.com/news-and-update/banning-roundup

Where is Glyphosate Banned?
https://www.baumhedlundlaw.com/toxic-tort-law/monsanto-roundup-lawsuit/where-is-glyphosate-banned-/

(3) Over 65 Organizations Call on Home Depot and Lowe’s to End Sales of Cancer-linked Roundup
https://foe.org/news/over-65-organizations-call-on-home-depot-and-lowes-to-end-sales-of-cancer-linked-roundup/

(4) 小樽・子どもの環境を考える親たちの会
https://ameblo.jp/rudoharu/theme-10110449254.html

(5) スチームや熱水除草など(写真はMoms Across Americaから拝借。何度も言及しているのですでにご存じの方はご存じと思うのだけど、スチームの熱による除草です。撒いているのは水です)
https://www.facebook.com/InyakuTomoya/posts/5130773083616147
Moms Across America(ラウンドアップの10の代替策。日本語!)
https://ja.momsacrossamerica.com/10_alternatives_to_roundup

(6) 農水省: 農薬の再評価
https://www.maff.go.jp/j/nouyaku/saihyoka/

(7) デトックス・プロジェクト・ジャパン
https://www.facebook.com/DetoxProjectJapan

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