遺伝子組み換え作物をめぐるこの10年

 ここ10年、世界の動きはより激しくなり、洪水のようにますます膨大な情報が流れてくる。良いことも悪いこともある。
 その中で悪いニュースからちょっと。遺伝子組み換え農薬とも呼ぶべき遺伝子に作用する農薬を米国環境保護局が承認する可能性がある。従来の農薬は化学成分が植物のアミノ酸合成を妨げたり、毒素タンパクで害虫の腸に穴を開けたりさせたりするものだったが、これは虫の遺伝子に作用して虫を殺す。どこかの実験室で遺伝子組み換えをするのではなく、自然環境の中でそれを起こすというもの。
 いいニュースは農業のあり方を変えて、生態系を適切に3割回復させることができれば7割の生物の絶滅を回避できるというもの。このままではあと30年で100万種の生物が絶滅すると予想されている。このシナリオを変えることは可能だということ。コロナなどの感染症もやはり農業のあり方、特に畜産業のあり方が大きく関係するということも明らかになりつつある。食を変えることの意味がより明らかになっている。 “遺伝子組み換え作物をめぐるこの10年” の続きを読む

種苗法+特許法:育成者権と特許権による種苗企業の知財権強化は何をもたらす?

牧田寛氏(元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授)のこのツイート

 ぐさりと響く。停滞を続け、この停滞からの脱出方法も見えなくなっている日本でその現実を見ようとしない人たちが多い中、事態を改善させるためにはやはり現実から出発しなければならない。このツイートで思い出したのはこのグラフ。 “種苗法+特許法:育成者権と特許権による種苗企業の知財権強化は何をもたらす?” の続きを読む

「ゲノム編集」種子の後代交配種は「ゲノム編集」ではない?

 「後代交配種、販売前届け出求めず−ゲノム編集作物の“子孫”」
https://this.kiji.is/687247960347903073?c=395501877279457
 厚生労働省のこの決定がどれほど日本の現在・未来を危うくするか。まず何を意味するのか、見てみよう。要するに「ゲノム編集」された作物は届け出する(義務ではない)。でもそれを親に作った品種は届け出すら不要。そして、この後者を流通させることにすれば消費者はまったく政府が公表する情報で「ゲノム編集」食品を避けることは不可能になるという仕組みである。こんなことを許したら食のあり方を決定する手段すら奪われるということになる。 “「ゲノム編集」種子の後代交配種は「ゲノム編集」ではない?” の続きを読む

スクラップされる遺伝子組み換え種子、遺伝子資源としては無価値

 モンサント(現バイエル)などが開発した多数の遺伝子組み換えトウモロコシ、コットンの品種をスクラップにすることが検討されている(1)。いわゆるBtコーン、Btコットンと言われる遺伝子組み換えで、害虫を殺すBt毒素のタンパクを作り出す遺伝子組み換えをした品種。 “スクラップされる遺伝子組み換え種子、遺伝子資源としては無価値” の続きを読む

中国・韓国に置いて行かれる日本:新品種育成で大幅減退

 SankeiBizが9月25日にこんな報道をしている。
「農水相が種苗法改正案の早期成立言及 中韓で36品種販売を受け」
 中韓で日本の品種が無断で使われたから、種苗法を改正しなければならない、と結論付ける記事になっている。しかし、本当にそうか? “中国・韓国に置いて行かれる日本:新品種育成で大幅減退” の続きを読む