アマゾン破壊と日本(その10)デマと情報操作

 日本ほど情報統制しやすい国は世界に他にないのではないか? アマゾン森林火災はデマであるとする情報が出されて、その問い合わせがいくつも来る。しかし、これはまったくありえない。正直、そのような馬鹿げた情報の対応にエネルギーを割きたくない。だけど、どうしてそうした情報が出てくるのかについてはもっと大きな問題が潜んでいると思うので、少し書きたい。

 まず、事実を押さえよう。ブラジル政府自身が森林火災の増加を認めている。ブラジルの国立宇宙研究所(INPE)のデータで8月は前年同月比約196%、ほぼ倍増だ(1)。規制官庁であるIBAMAの職員たちも危機を認め、現在の政権の対応に声を上げている(2)。ボルソナロ・ブラジル大統領は当初、NGOが火を付けた、などと根拠もなく言い逃れしていたが、世界からの批判を受けて、対策を打ち出している。つまり、アマゾン森林火災を一番否定したい立場のブラジル政府も否定できない事態なのだ(3)。
 緊急が要する事柄なので、世界もすでに動いている。G7は森林火災を止めるための緊急援助を決め、ブラジル産食肉のボイコットも検討されている。国連が動きべきとの声も上がっている。世界の市民はもう動いている。それにも関わらず日本ではそれを否定する情報が流れて、動かないというのはどういうこと? 唖然となる他ない。ありえない話だ。しかも、根拠付けるデータは一切ないのに。

 なぜ、そんなデタラメが流されるのか? これは明らかに森林破壊を止めようと動き出した人びとの動きをつぶすための情報撹乱のため以外の何ものでもないだろう。

 日本では何かあると、必ずこのような情報撹乱が始まる。人びとはどちらが正しいかわからなくなって立ち止まってしまう。もし、日本に調査報道がしっかりしていたら、人びとのリテラシーも上がっていくだろう。まずは事実をまず確かめるということが習慣になっていれば、変な情報が出回っても相手にされないだろうから。海外でもそのような情報は出てきても人びとは相手にせず、まともな情報をもとにすでに動いている。でも、日本は動こうとするとそんな情報が流れて少なからぬ人がそこで止まってしまい、動きが止められてしまう。だから日本だけ別の動きになってしまう。

 アマゾン森林の問題に限らない。放射性物質や農薬による汚染の件もしかり。世界では危険として規制されているのに、日本は真逆に安全だとして規制が緩和されてしまう。この情報撹乱で無力化されてしまうから規制緩和が止められなくなる。

 たとえ話。沈みつつあるタイタニック、乗客たちが船が沈むかもしれない、という情報を受け取っても、それはデマだ、という情報撹乱が行われ、その人たちは様子を見ればいいや、と思ってしまう。でもその人たちは忘れやすい。他の乗客はとっくに避難を開始しているのに、特定の乗客だけはのんびり座っている。下手したら、沈み行くタイタニックに最後まで乗っているのは日本語情報圏の人だけになっているんじゃないだろうか?

 日本語情報圏のおかしさに怖さを感じる。これが一番、破局的な力を生み出すのは私たちが震災などのパニック状況に陥った時だろう。関東大震災のことを私たちはもう忘れてしまったのだろうか? 何が正しく、今、何をすべきか、しっかりとした行動が取れる能力を私たちは大幅に失ってしまっているように思えてならない。権力への忖度ばかりに慣れて、自分たちの判断力を養ってこられなかったことのツケだろうか? そんな破局的事態が起きる前に、変わらなければならないと思う。このままでは歴史は繰り返すだろう。

(1) 共同通信:8月のアマゾン森林火災は最多ーブラジル、2011年以降でhttps://this.kiji.is/541037418991158369

(2) アマゾン破壊と日本(その7)EUで高まる保護を求める動き

(3) アマゾン関係について

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