日本政府は国内の政治以上に国際政治では横暴な姿勢が目立つ。もはや、本来基づくべき民主主義の原則を大きく外れ、企業利益のための機関になりさがっていると言わざるを得ない。マスコミがほとんどカバーしないのでやりたい放題なのが現状。マスコミには奮起を願う。
種子法廃止・種苗法改正を基礎付けているものこそ、UPOV条約(1991年版)である。これは種子を育成した種子企業の知的財産権である育成者権を農民の種子の権利に優越させ、世界中で種子企業が利益を上げられるために作られた。反対が強く、世界での加盟は遅々として進まない。しかし、日本政府は世界からの反対も無視して、推進し続けてきた。
日本は1998年にこの条約に加盟し、種苗法も作り替えたが、すぐにUPOVに合わせることは難しかったため、20年以上の時間をかけ、徐々に育成者権を強化させる手段を取った。人びとは知らない間に種子の権利を奪われていき、2020年の種苗法改正で、あらゆる登録品種の種子は育成者の許諾なしに自家増殖できなくなったが、それはこの1998年からのプロセスが一区切り済んだ、ということを意味している。決して、2020年に突然やってきたのではない。 “グローバルなStopUPOVキャンペーン、非難される日本政府” の続きを読む
農民の権利を形骸化する日本政府に世界から非難の声
日本政府は国連の会議で農民の権利を形骸化し、種子メジャーの利益のために動いて、世界の市民団体から非難を受けた。現在の日本政府にとってはタネを守ることよりも、バイオテクノロジー企業の利便のために動くことが重要な行動原理になっている実態を多くの人に知ってほしい。
国連食料・農業植物遺伝資源条約(ITPGRFA)の第11回理事会(GB11)がペルーのリマで11月24日から29日までペルーのリマで開催された¹。この国連条約には農民の権利が明記され、農民の権利の重要性が認識した条約なのだが、このリマでの理事会はその農民の権利をめぐり、激しく対立した。種子企業・バイオテクノロジー企業の利益のために、農民の権利を形骸化させたからだ。特に議長国のスイスや日本の動きには批判が集中している²。 “農民の権利を形骸化する日本政府に世界から非難の声” の続きを読む
種子主権なきタネのグローバリゼーションを止めろ(Stop UPOVグローバリゼーションデーを前に)
人の命を握るものの圧倒的基盤がタネにあることは議論を待たないことだろう。でも果たして、タネをめぐる議論は日本でまっとうに行われてきただろうか? “種子主権なきタネのグローバリゼーションを止めろ(Stop UPOVグローバリゼーションデーを前に)” の続きを読む
グローバルな #StopUPOV キャンペーン、12月2日に
今からちょうど60年前、大種子企業が世界の種子市場の独占に向けて、同盟団体を作り、民間企業による、民間企業のための国際条約を作った。それがUPOV条約。遺伝子組み換え企業の登場と共にその条約はより企業を利するものとなって、世界の国の種苗法を変え、農家のタネを奪い、多様なタネからわずかな種類のグローバル品種へと変えつつある。その勢いはもう全世界に及ぼうとしている。その動きに対抗しようという農民・市民の動きが今年12月2日に世界同時で計画されている。#StopUPOV
日本はこの動きにどう関わっているか。日本は1998年にUPOV1991年条約に参加し、徐々にUPOV体制の徹底を図ってきた。2017年の主要農作物種子法廃止も2020年の種苗法改正もそのプロセスの1つ。タネの生産はグローバル化され、大きな企業は海外で安くタネを作り始めた。タネの自給率は激減した。政府はタネの生産から手を徐々に引き、地方自治体が作るタネの新品種はこの20年間に半減した。そして、民間企業のその座を譲ろうとしている。全国で300品種近く作られていた稲の品種も今後、民間品種のわずかな品種に集約されてしまう可能性がある。そうなれば多様性は奪われ、少数企業に日本の食は支配されてしまう。
食はグローバル企業に支配され、農民は世界中で競争させられる。その競争の中で、農民は数が激減し、環境も壊されていく。
日本政府の動きはそれだけではない。アジアを中心に海外の政府にUPOVへの加盟を強要する。それを元に来年、種苗法を再改訂する計画がある。山梨県知事と小泉農相が会談するにいたったシャインマスカットはその前哨戦だろう。つまり、戦略的な農産物を海外で生産し、日本で輸出できない時期に限り、日本の種苗のための世界の市場を作る。そんな戦略的海外ライセンスを導入することが目的。
日本政府はあくまでタネのグローバリゼーションを進めようという路線を変えようとしない。でも果たして、それで儲かるのは誰か? タネのグローバリゼーション政策の中で、日本の野菜のタネの自給率はなんと1割まで落ち込んでしまった。大豆のタネの種採り農家は今や消えてしまう危機にある。タネがなくなれば日本の食はどうなる?
実はこのUPOVによるタネのグローバリゼーションの中で、もっとも危うくなっているのは実は日本の地域の食に他ならない。
世界で12月2日にはさまざまな行動が組まれる。その動きに学びつつ、日本は何をすべきか、早急に考える必要がある。
The #StopUPOV campaign
https://grain.org/e/7315
UPOVとはフランス語でUnion Internationale pour la Protection des Obtentions Végétalesの略(植物新品種保護国際連合)。ユポフあるいはウポフと発音。スイスに本部があるが、国連機構ではない。
東アジア植物品種保護フォーラム・UPOVと日本の問題に関するWebinar
気温が高い。本当に夏を越せるのか、不安になっている人もいるのでは。僕も実はその一人だけれども。すでに世界では異常な高温やそれに伴う自然災害で多くの人が命を落としている。これはすでに1970年代から警告されてきたことだ。それなのに各国政府が対策を怠ってきた。気候対策は一部の企業の利益を損なう(すべての企業ではない)。そうした企業は政府に対策を取らせないように巨額を使って、政府に働きかけてきた。その結果がこれだ。その気候対策をストップさせてきた企業は殺人企業の名を使わねばならないだろう。
その企業で一番先に槍玉に挙がるのはエクソンモービルのような石油会社だろうが、実はそれだけではない。種子・農薬・化学肥料・食肉企業・流通企業なども実は気候対策を妨害する上で、大きな力を発揮してきた。 “東アジア植物品種保護フォーラム・UPOVと日本の問題に関するWebinar” の続きを読む
石破政権の農政転換は本物? 危険なその方向
石破政権はコメの価格高騰対策として、増産に向けた新たなコメ政策への転換を昨日の閣僚会議で決めたと報道されています。これまでの減反政策が変わるということで、重要な政策転換と見るむきもあるかもしれません。
でも、これは本当にどんな転換になろうとしているのか、注意が必要です。これまでの自民党農政とは何であったか、というと、米国農産物の大量買い入れを前提とした食料生産抑制政策であり、その柱が減反政策であったと思います。減反政策が変わったとしても、米国農産物の大量買い入れは、トランプ関税交渉を見れば明白なようにむしろ強化されかねない状況です。この農政全体が変わるわけではないことがわかります。それでは石破政権は農業政策をどう変えようとしているのでしょうか? “石破政権の農政転換は本物? 危険なその方向” の続きを読む
種苗法再改正に向けたパブコメ3
「優良品種の管理・活用のあり方等に関する検討会 中間報告案」要するに種苗政策に関するパブリックコメント(16日締め切り)
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcmSp/1031?CLASSNAME=PCM1031&Mode=0&id=550004136
締め切りが近いので、とにかくまとめてみました。 “種苗法再改正に向けたパブコメ3” の続きを読む
種苗法再改正に向けたパブコメ2
米不足で国内の生産をしっかり増やすことが必要な事態になっても、米輸出の計画に力を入れ、同時に米の輸入を増やすという愚策に走る政府。これは根本的に異常な方向なのであり、これを放置していたらさらにおかしな事態に陥る。
今、日本の2020年の種苗法改正が何であったか、英語でまとめている。海外の団体から出版する予定なのだけど、その改正の目的をめぐり、理解してもらうのに苦労した。なぜかというと、普通、種苗法改正とはタネを売るためのものなのだ。でも、2020年の改正では売るのではなくて、売らないことが先に来る。「そんなことありえない」というのが海外の人から見た最初の感想。 “種苗法再改正に向けたパブコメ2” の続きを読む
