植物が自分が生きるために作り出した光合成によって作り出した炭水化物、それを植物は土壌微生物に提供する。そして土壌微生物は植物が生きるために必要とするミネラルを提供する。植物と微生物の共生関係、これは尽きない興味を生み出す。莫大な量の微生物が植物を、そしてわたしたちの命を支えている。まだ人類はこの共生関係のほんの一部しか理解できていない。この共生関係はわたしたちの命の根拠であり、そして危機にあるわたしたちを守る解決策でもある。
この共生関係がどのように破壊されてきてしまっているか、研究が進んでいる。まず化学肥料がこの共生関係を断ち切る。微生物によって守られていた植物が雑草に負け、菌病などに犯される。そして農薬が不可避となっていく。この農薬は問題の解決とはならず、さらなる悪循環を作り出す。
モンサント(現バイエル)の農薬ラウンドアップ(主成分グリホサート)などの農薬は抗生物質作用を持つ。モンサントはグリホサートを抗生物質として特許を取っているくらいだ。モンサントはグリホサートは土壌に入ったら、すぐ微生物に分解されると説明していたが、実際には逆に微生物の活動を抑えてしまうため、その散布はわずかな量でも土壌の微生物の環境を大きく変えてしまう。土壌の中に抗生物質耐性菌、つまり薬が効かない菌が生み出される(1)。これは人への感染症の脅威にもなりうる。 “抗生物質としての農薬。農薬が耐性菌を生み出している” の続きを読む
ベトナム戦争の犠牲者が問うモンサントなどの企業責任
フランスで歴史的な裁判が始まった。米国のベトナム戦争での枯れ葉剤作戦によって枯れ葉剤を浴び、自身の健康被害のみならず、生まれた子、孫にも深刻な健康被害が出たトラン・ト・ンガさんが米国化学企業14社を相手に起こした。日本語字幕の付いたビデオをぜひみてほしい(5分10秒)(1)。 “ベトナム戦争の犠牲者が問うモンサントなどの企業責任” の続きを読む
政府が見逃す「ゲノム編集」が作り出す問題
「ゲノム編集」の問題について続々と新情報。政府や企業などゲノム編集」推進側が流す情報とあまりに異次元。推進側は「ゲノム編集」によって起こる変化は自然界でも起きていることと同じだという。確かに紫外線や自然放射線に生物は曝され続けていて遺伝子が壊れて、変異することは起きる。でもこれは長い進化の中で、その変異から守る仕組みも発達させてきている。
ところが「ゲノム編集」はその防御の仕組みをかいくぐって遺伝子を破壊する。問題は遺伝子だけに留まらない。ゲノムの中の遺伝情報がコーディングされている遺伝子はわずか2%に過ぎず、以前は残りをジャンク(ゴミ)と呼んできた。しかし、残りの部分が遺伝子発現に大きな役割を果たしていることもわかってきた。まったく同じ遺伝子を持つ細胞でも、あるものは心臓になり、あるものは目になる。これはDNAメチル化によって可能になる。DNAメチル化はゲノムに入り込んできたウイルスの遺伝子の発現を抑制したり、ガン化にも大きな関わりがあるという。このDNAメチル化をCRISPRを使った「ゲノム編集」は変えてしまうというのだ(1)。 “政府が見逃す「ゲノム編集」が作り出す問題” の続きを読む
「ゲノム編集」は世代を超えて想定外の影響を与える可能性が明らかに
CRISPR-Casによる「ゲノム編集」(遺伝子組み換えVer.2)は意図しない傷をDNA以外のゲノムに残し、遺伝子発現に影響を与え、それは世代に渡って継承され得ることが明らかに(1)。
「ゲノム編集」は意図しないDNAの破壊を生むことがあると指摘されるが、この研究が示すのはDNAそのものの破壊ではない。DNAの変化によらない遺伝子発現の変化に関わるもの、つまりエピジェネティックな変化であり、世代に渡って影響を与える可能性がある。 “「ゲノム編集」は世代を超えて想定外の影響を与える可能性が明らかに” の続きを読む
遺伝子組み換え作物安全神話の崩壊: Bt毒素は20倍も有害
遺伝子組み換え作物の「安全」の虚偽がまた暴かれる。今度はBt毒素(殺虫毒素)が想定されていたよりも20倍も有害であることが明らかに。
「安全」と宣伝されていたものが実はきわめて危険であることが数十年かけてわかってくる。環境にも健康にもとっても安全と言われていた農薬が実は腸内細菌も土壌細菌も損ない、さらには発ガン性があるばかりか、数世代後にも影響を与えることがわかってくる。実はそうした危険は製造メーカーはすでにとっくに知っているケースが多い。でもそれは伏せて、販売しまくる。モンサントはラウンドアップの毒性を社内の実験で数十年前につかんでいながら、社外で危険性の指摘があると根拠がないとして攻撃し続け、「安全」神話を守り続けてきた。 “遺伝子組み換え作物安全神話の崩壊: Bt毒素は20倍も有害” の続きを読む
遺伝子組み換え作物をめぐるこの10年
ここ10年、世界の動きはより激しくなり、洪水のようにますます膨大な情報が流れてくる。良いことも悪いこともある。
その中で悪いニュースからちょっと。遺伝子組み換え農薬とも呼ぶべき遺伝子に作用する農薬を米国環境保護局が承認する可能性がある。従来の農薬は化学成分が植物のアミノ酸合成を妨げたり、毒素タンパクで害虫の腸に穴を開けたりさせたりするものだったが、これは虫の遺伝子に作用して虫を殺す。どこかの実験室で遺伝子組み換えをするのではなく、自然環境の中でそれを起こすというもの。
いいニュースは農業のあり方を変えて、生態系を適切に3割回復させることができれば7割の生物の絶滅を回避できるというもの。このままではあと30年で100万種の生物が絶滅すると予想されている。このシナリオを変えることは可能だということ。コロナなどの感染症もやはり農業のあり方、特に畜産業のあり方が大きく関係するということも明らかになりつつある。食を変えることの意味がより明らかになっている。 “遺伝子組み換え作物をめぐるこの10年” の続きを読む
世銀:化学肥料の神話は終わった
かつて解決策だと信じられてきたことがそうではないことがわかっても、なかなかその神話を捨てられないことがある。農薬は世界の農業を解決すると思っていた人は多かっただろう。でも、今、世界は脱農薬に進みつつある。
農薬について関心は高くても化学肥料については関心はまだ高くない。でも化学肥料が実は問題が生まれる起点となる。そして化学肥料が環境や健康を破壊していることを知っている人はまだ少ないのかもしれない。
あの世界銀行(世銀)は化学肥料の利用をこれまで世界に大々的に推進してきた。その世銀が今やその危険を公言する事態になっている(1)。 “世銀:化学肥料の神話は終わった” の続きを読む
EUが禁止した農薬を世界で一番輸入する日本
ヨーロッパは世界の環境先進地域として有機農業の割合も高い上に、それを現在大幅に高めようと各国政府が務めている。使われている農薬や化学肥料も全体としてさらに大幅に減らす計画が立てられている。さすがである。
ところが、このヨーロッパが偽善的であるとして、ヨーロッパの市民団体によって告発されている。なぜならば、危険過ぎるということでヨーロッパで使用が禁止されている農薬をヨーロッパの化学企業が製造し、世界に輸出しているからだ。自分のところでは危険過ぎて使えないけど、他のところであればいい、として作って売ってしまうという偽善性。
そして、世界のどこがヨーロッパの禁止している農薬を一番輸入しているかというと…、 “EUが禁止した農薬を世界で一番輸入する日本” の続きを読む