ブラジルの巨大ダム政策がもたらした悲劇、ベロモンチダム

 ブラジルの巨大ダム政策がもたらした悲劇。軍事独裁時代に計画されたベロモンチダム、スティングなどが参加した国際的な反対運動もあって、長く建設を阻止できてきたものが労働者党政権下で建設強行。建設に反対する人びとが指摘していた問題が実際に完成後に次々に現実のものとなる。
 ベロモンチダムの完成はダム反対運動の敗北で終わりだろうか? このドキュメンタリーはそれで終わりにならないことを示している。 “ブラジルの巨大ダム政策がもたらした悲劇、ベロモンチダム” の続きを読む

ブラジル政府が巨大ダム建設政策を転換?

 ブラジル政府が巨大ダム建設政策を転換?

 もし、本当だとすると、これは時代を画する政策転換となる。ブラジルでは水力が7割以上のエネルギー源となっており、経済発展政策の中で、巨大ダムをアマゾンを中心とした地域に作り続けるのがこれまでの柱となってきた。いわば、核をエネルギーの核に据えてきたフランスがその政策を変えるに等しい大きな政策転換となる。 “ブラジル政府が巨大ダム建設政策を転換?” の続きを読む

ベロモンチダムー戦争の布告

ベロモンチダムはアマゾンに現在建設中の巨大ダムで、完成すると世界第3位の規模になる。この計画はブラジルが軍事独裁政権であった時に計画されたが、先住民族らによる反対により計画は中断していた。Stingがダム建設反対の国際キャンペーンに加わるなど、その反対運動は国際化していたが、労働者党政権は建設を強行。
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バイオパイラシー問題を考える:ピープルズ・サミットでのセミナーから(その2)

バイオパイラシーとは盗みであり、新たな植民地化を許してはならないという力強いバンダナ・シーバの講演の後、バイオパイラシーの具体例についてのセッションに移った。

最初はアマゾンのブラジル(アクレ州)、ペルー国境をまたがって生きている先住民族アシャニンカのベンキ・ピアンコ・アシャニンカ(Benki Pianko Ashaninka)氏が証言した。 “バイオパイラシー問題を考える:ピープルズ・サミットでのセミナーから(その2)” の続きを読む

Rio+20/ピープルズ・サミット:注目すべき会議・イベント(1)

Rio+20ではリオデジャネイロ市街から30kmほど離れたリオセントロで国連の公式会議が開かれる。リオデジャネイロの市街、フラメンゴ公園(フラメンゴの埋め立て地に作られた公園)では3万人もの世界からの社会運動、NGOなどが参加してピープルズ・サミットが開かれる。

さらにリオデジャネイロから遠く離れてアマゾン奥地のアルタミラでXingu+23という会議が13日から17日まで開かれる。これは現在、建設が強引に進められているベロモンチダムに反対する先住民族、川の民、アルタミラの住民、支援団体・個人が開くもので、ダムの建設を進めるブラジル政府に対して強い反対の意志を表示しようというものだ。

Xingu+23のサイト

この+23とは23年前の1989年にベロモンチダム建設が止まった、それから23年を意味している。ベロモンチダム建設は軍事独裁時代の70年代に計画され、それ以来、長い反対の闘いが続けられてきた。そして昨年ついに建設が始まってしまった。

昨年作られた以下のビデオは建設が始まる直前の状況を語る。

昨年建設開始以降、大きな問題がすでに作られてしまっている。政府は住民に対して影響力を最小限にするための施策を保障した。しかし、それは裏切られ、契約された大勢の労働者が来ているにも関わらず、町の病院などのインフラはそのまま、少女買春の急増、さらにはその労働者の労働条件を巡るたびたびのストライキなど混乱が続いている。川のせき止めも始まり、水が濁り、川で生活する人びとの生活に直接的な影響が生まれてしまっている。

この動きに対して、前環境大臣で先の大統領選で善戦したマリーナ・シウバ、ブラジル音楽の巨匠で元文化大臣のジウベルト・ジル、解放の神学者として有名なレオナルド・ボフなど著名人も賛同し、ベロモンチダムを止めるために動いている。

しかし工事は進み森林破壊は広がっている。その状況を伝えるAPFの番組(ポルトガル語)

ベロモンチダムの他にもアマゾンに多数のダム建設が進められようとしている。ダム建設はアマゾンの生態系に大きな影響を与える。このRio+20が終わると一斉に建設が加速するのではないか、先住民族や環境問題に関わる人びとにはそうした懸念がある。こうして開発されるダムの多くはアマゾンでの鉱山開発のためのエネルギー、あるいはアマゾンに建設される工場などで使われる可能性が高い。いずれにしてもアマゾンとその住民には何のメリットももたらさない開発計画である。こうした現状にはぜひ目を向けてほしい。

ベロモンチダムのビデオ紹介 & Xingu+23

ブラジルのベロモンチダムにより大きな影響を受ける先住民族が他の遠くの地域の先住民族と共にダム建設と闘う決意を語るビデオ。マトグロッソ州ピアルスで300人、18の­異なる民族を代表する先住民族が集まり、ベロモンチダムが先住民族に対して与える影響を語り合い、決意を固める。

オリジナルは”Belo Monte – Piaruçu”
すでにダムの建設は2011年に始まり、川は濁り、人びとは大きな影響を受けている。現地で何が起きているか、上のビデオをぜひ見てほしい。映像も音楽も美しいビデオなので、そのまま再生させるのではなく、歯車のアイコンをクリックして、解像度を720p HDを選択し、さらに全画面で見てほしい。

ベロモンチダムに影響を受けるシングー川周辺先住民族や住民はRio+20が開かれている同じ時期、ダム建設地に近いアルタミラに集まり、Xingu+23という集まりを持つ。+23とは1989年にベロモンチダムの建設を止めた年から23年ということを意味する。

すでにサイトも立ち上がっていて、寄付も受け付けている。Xingu+23
資金的にも厳しい中行われるこの会議、なんとか支援したいところだが、日本からは直接寄付が難しいようだ。

支援するいい方法がないものか模索中。

ジウマ・ルセフ大統領へのメッセージ:ベロモンチダム建設を中止してください

ジウマ・ルセフ大統領、

ベロモンチダムの建設を中止してください。

ベロモンチダムはブラジルの地域社会のニーズに応えるものではありません。

現に現地に住む先住民族や伝統的住民は長年強く反対の声を上げてきました。その声は無視されています。

ベロモンチダムはアマゾンの鉱物資源開発に使うものと理解せざるをえません。そしてその資源の多くは海外に輸出されます。その開発の過程で、アマゾンの生態系は大きく破壊されてしまうことでしょう。

一時的に鉱山開発でブラジルが外貨を獲得し、利益を得たとしても、アマゾンの生態系が破壊されてしまえば、長期的にみればブラジル社会にとっては大きな痛手になります。鉱山資源は永続しません。しかし、アマゾンの生態系は今後長くブラジル社会を支える資源となります。

自然を破壊し続ける開発がこのまま続けばブラジルはもちろん、世界は崩壊するでしょう。その端的な例を私たちは東京電力福島原発事故で経験しました。この事故によって日本、そして世界は放射能汚染に長く苦しむことになります。このような開発はもはや続けることができない、ということを東電原発事故は示しています。

日本列島の住民はアマゾン破壊で作られるアルミや鉄を使って便利に生活してきました。そしてそのことを十分知らずに来ました。しかし、その生活はさまざまな浪費を生み出し、世界を汚染しており、もはや維持できるものではないと思います。

ベロモンチダムがひとたび建設されれば、先住民族を初めとする人びとの失われる生活、そして森、川は戻ってきません。鉱山資源はそう長くは続きません。どちらが重要か、ブラジル社会が長く幸せになれる道はどちらか、熟慮いただき、ベロモンチダムの建設を中止するようお願いいたします。

2011年8月22日

印鑰 智哉