ベロモンチダムはアマゾンに現在建設中の巨大ダムで、完成すると世界第3位の規模になる。この計画はブラジルが軍事独裁政権であった時に計画されたが、先住民族らによる反対により計画は中断していた。Stingがダム建設反対の国際キャンペーンに加わるなど、その反対運動は国際化していたが、労働者党政権は建設を強行。
このダムはアマゾンに深刻な影響を与える。このダムは巨額の資金を使って行われるが、使い物にならないと言われている。最大の問題は乾期の4ヶ月は発電できない、ということ。だからこのダム単独ではどうにもならず、さらに上流に多数のダム建設が計画されている。もしそれらがすべて実行されたら、アマゾン東半分の水体系は大きな影響を受ける。自然の恩恵と共に生きる先住民族や伝統的な住民(黒人独立共同体、小農民、小漁民など)の生存は危機に脅かされる。
しかも、さらに懸念をよぶのがその作られる電力が何に使われるかだ。
ベロモンチダムの近くに軍事独裁政権が建設したトゥクルイダムがある。このダムはその発電量の大半が日本が出資したアルミ工場に使われている(今回のベロモンチダムには日本の資本の直接の関わりは見いだせていない)。ボーキサイトの掘削とアルミ工場の操業は環境に大きな被害をもたらす。。ちなみにトゥクルイダムの発電する電力は地元のコミュニティではほとんど使われていないという。
現在、アマゾンに豊富に埋蔵されている鉱山資源に世界の企業が群がろうとしている。そしてベロモンチダムの発電するエネルギーはその企業の貪欲のために使われる可能性が強い。アマゾン破壊のエネルギーとなる。現にベロモンチダムの地域でカナダの鉱山企業Belo Sunがブラジル最大の金鉱山開発の計画を立てている。もし、こうした鉱山開発がさらに進めば何が起こるか?
アマゾンの崩壊であり、地球の気候変動の激化だ。
建設を進めているのは軍事独裁政権ではない。軍事独裁政権ですらあきらめたものを労働者党政権が推し進めている。ダム建設に反対する人は広汎な人に及んでいる。文化人、知識人もその反対運動に参加している。ブラジルの公共省はたびたび建設の違法性を指摘し、ダム建設中止の判決を得ている。しかし、それも中央政府の意向を強く受けた連邦総弁護庁(AGU)により覆されている。
このドキュメンタリー映画は昨年6月、市民の寄付を資金に完成した。英語字幕が邪魔でポルトガル語のオリジナルを見たいという人はこちらで見ることができる。1時間44分
時間がないという人はまったく別のものだが(上記映画の短縮版予告編ではない)”Belo Monte – Piaruçu”という6分26秒の作品があり、こちらには日本語字幕を入れてある。ぜひ見てほしい。