多国籍企業による食のシステムの乗っ取り

 タネから流通まで、そして食のあり方まで巨大企業が乗っ取る、国連を乗っ取り、各国政府の政策まで決めていく。今、そんな動きがはっきり見えてきた。遺伝子組み換え企業だけでなく、今やAI、ビッグデータ、インターネット企業、金融セクターが結びつき、この乗っ取りが動き出している。
 国連は世界食料危機を契機に、食の政策については農民団体、市民組織に開かれた制度改革を打ち出し、小規模家族農業と生態系を守るアグロエコロジーの2つを柱する政策に大きく転換していた。世界で有機農業、化学肥料や農薬への規制が大きく進んだ。この流れを大きく変えるために、遺伝子組み換え企業=化学企業が中心となり、大きな企てをしている。 “多国籍企業による食のシステムの乗っ取り” の続きを読む

米国で気候危機を回避する議員立法「農業リジリエンス法案」提出

 アースデーに米国では気候危機を回避する上で重要な変化を可能にする農業リジリエンス法案が再提出された(1)。この法案は気候危機に曝される農家を守り、土壌の力を回復させ、農場からの気候変動効果ガスの排出を減らし、2040年にネット排出量ゼロをめざすものだが、単に数値目標だけをめざすよくある法案ではなくて、提案者のチェリー・ピングリー(Chellie Pingree)下院議員(写真左)自身が1970年代からの40年を超える有機農家であることもあって、農家の視点がある法案となっており、有機農業団体はもとより、科学者たちのNGO、米国の行動する科学者連合(Union of Concerned Scientists、UCS)など、多くの団体が賛同を表明している(2)。 “米国で気候危機を回避する議員立法「農業リジリエンス法案」提出” の続きを読む

ラウンドアップをめぐる動向(デトックス・プロジェクト・ジャパン2周年)

 モンサント(現バイエル)のラウンドアップ(成分名グリホサート)をなくそうとする世界の動きはより確実なものになってきている。
 グリホサートが与える広範な影響も明らかになってきている。米国の裁判ではグリホサートがガンの原因となったことが争点になっているが、人の健康に悪影響を与えるだけでなく、ハチや蝶の激減(1)、さらには土壌の中の微生物にも悪影響を与え(2)、そして害虫や病原菌への植物の防御機能にも悪影響を与えることが指摘されるようになった(3)。 “ラウンドアップをめぐる動向(デトックス・プロジェクト・ジャパン2周年)” の続きを読む

漁業法改正が持つ大きな問題

 私たちの生きる上で不可欠な公共圏を民間企業の独占物にできる法改正があらゆる領域で進行した。農業関連でも種子法廃止、農業競争力強化支援法、種苗法改正、農地法…、これに加え、森林法も、水道法も、法律改正は不要とみなされれば国会審議もまったくなしにさまざまなレベルで進められている。そして、漁業法も改正された。それがどんな問題をはらんでいるのか東大の鈴木宣弘さんの論文をもとに10分間のビデオで全体像がわかる。
 そのさわりを紹介する。漁業でも日本では漁獲量が激減。その原因は大型資本による乱獲、行き過ぎた貿易自由化、大規模小売業を頂点とする流通業界の買い叩きが主因。これまで沿岸漁業者は共同で漁獲して利益は分配する伝統的な「もやい漁業」を行い、資源管理も行ってきた。そのあり方は世界の最先端であると欧米も注目する。しかし、漁業法の大改正はその沿岸漁業者を犠牲に、大型漁業産業を儲けさせるもの。大手による独占が進み、沿岸漁民は職を失ったり、かつての「蟹工船」の世界が出現することが危惧される。… “漁業法改正が持つ大きな問題” の続きを読む

気候変動を解決する自然に基づくとする方法が持つ落とし穴

 植物は光合成によって作った炭水化物のかなりの部分を地中に放つ。植物によって放たれた炭水化物に土壌微生物が群がり、その土壌微生物は植物からの炭水化物をエネルギーとして繁殖していく。そして植物にミネラルや水分をその交換に渡していく。実に見事な共生の関係がここにある。大気中の二酸化炭素は土壌の中に蓄えられる。この機能は気候変動が激化する中、さまざまな方面から注目が集まっている。気候変動を止める炭素固定法の中で、もっとも安全でもっとも有効な方法であるとして。
 昨年、米国の超党派の議員が提案した気候変動解決法案(Growing Climate Solutions Act)は土壌に炭素を蓄える農家にお金を与えるというもので党派を超えた支持を集めている。しかし、この法案に環境団体や農民団体、特に土を生き返らせる環境再生農業(Regenerative Agriculture)を進める団体までもがこの法案に反対している。なぜなのか? “気候変動を解決する自然に基づくとする方法が持つ落とし穴” の続きを読む