なんと米国政府が「農場から学校へ(Farm to School)」を後押し!
新型コロナウイルスのパンデミック、さらにはウクライナ戦争でグローバルな食のシステムが揺らいでいる。グローバルな食のシステムに依拠せずにローカル(地域)の食のシステムを作らなければ、という声は世界中で出ている。そして、このグローバルな食のシステムを世界に押しつけてきた当の米国政府がなんと「学校のためのローカルフード協力合意プログラム(the Local Food for Schools Cooperative Agreement Program、LFS)」を始めるようだ(1)。
つまり、パンデミックで食の供給システムが厳しくなったことに対して、地域の食を買い上げ、学校に届ける費用について連邦政府が州政府を支援する、というもの。単に一時的に買い上げるだけでなくて、「公正で競争力があり回復力のあるローカルフードのネットワークの構築を支援することで、学校のフードシステムを強化し、歴史的に十分なサービスを受けていない生産者や加工業者からの購入に重点を置いて、地元および地域の市場を拡大する」というもの。そのための連邦政府の予算は2億ドルというから今のレートだと273億円、本格的な転換にはちょっと足りない額だけど、スタートさせるための手付金みたいなものか。
韓米自由貿易協定では韓国の学校給食で地域から食材を調達するとした条例が、米国からの食料輸入に関する貿易障壁になるとして攻撃していた国が、まったくその逆を行く動き。海外の生産者や地域の食を潰しておいて、一体何だと怒りたくもなるが、しかし、これは朗報なのでは?
日本だと、たとえば遺伝子組み換えや「ゲノム編集」食品の規制でも、農薬規制でも、学校給食の取り組みでも、取り組みを提案すると、「そんなこと言ってもISD条項があるから抵抗できない」などと、安保体制の影を見て、思考停止してしまう人が少なくない。「ほら、これも米国が背後にいる。だから日本で抵抗しても無駄」と思考を止めてしまう。
でも決して、そんなことはないと言い続けてきた。何事も突破できるのに、初めからダメと決めつけて抵抗しない。ゆでガエルのできあがり。
日本政府もいつまでも米国から食料を買い続けることが日本政府の務めなどと考えずに、まずは日本の中で食をどうしていくか、真剣に再考する時だろう。このままでは日本は世界で最大の餓死者を出しかねないという可能性だってある(2)。思考停止のまま、前例踏襲で同じことをやっていけば、悲劇に終わる。
日本政府もまた日本版の「農場から学校へ(Farm to School)」、地域の生産者、地域の食品加工・流通業者支援を打ち出す必要があるだろう。そして、日本のすべての地域から国会にその要求を突き付ける必要があると思う。
地域が主体になる時代。国はそれを支える。
(1) 米国農務省:USDA
Local Food for Schools Cooperative Agreement Program
https://www.ams.usda.gov/selling-food-to-usda/lfs
National Farm to School Network
https://www.farmtoschool.org/
(2) 核の冬と日本の食料危機
https://project.inyaku.net/archives/8189