食料危機で日本はどう変わるか?

 なぜ、日本のメディアは大騒ぎしないのか。かつてない危機が日本に迫っている。その危機は他の先進国には存在していない。先進国の中では日本だけだ。食料危機である。ファイナンシャルタイムズはこう警鐘を鳴らす。「以前からその兆候はあったが、日本は一時的な現象と考えて行動を起こさなかった。今からコースを変えるには遅すぎるかもしれない」(1)
 アフリカの国でも持ちこたえても日本は持ちこたえられないというレベルで危機なのだ(2)。みどりの食料システム戦略が公表された時にこの戦略だけでは到底不十分であり、日本の食の政策を根本から変えることを国会で論争を行い、そのまま参院選の焦点に、と訴えた。しかし、論争は不発。参院選でも焦点にはならなかった。
 
 何が起こるか、すでに価格高騰は起きているが、これがさらに酷くなる。まだ高くなるだけならばいい。商品自体がスーパーから消えていくかもしれない。国内の生産者が生産を続けられなくなってきており、さらに輸入も困難になっていく。南北米大陸でもアジアでもヨーロッパでも記録的な水不足、その一方でパキスタンのような氷河崩壊と集中豪雨による大洪水。世界の穀倉地帯が生産を大幅に減らす可能性がある。それにも関わらず、政府は根本的な農業強化の姿勢を取ろうとしてこなかったが、ようやく政府は昨日、食料・農業・農村基本法の法改正に向けて動き始めた(3)。
 
 しかし、これを本格的な食・農の政策転換にできるだろうか? これまで肥料や生産資材の高騰への補助金という一時しのぎの策しか政府は出していない。
 
 何が必要かというと、ほとんど米国を中心とした海外から輸入を前提としてきた食料調達を国内・地域からの調達に切り替えるというとてつもない大きな外科手術が必要になっている。これは単に生産増強のみならず、食品加工、流通の仕組みに至るまでシステムを変えなければ到底機能しない。そして、それは政府が動けば変わるというものではまったくない。地域からのボトムアップの動きがなければ絵に描いた餅に終わる。
 
 しかも、生産のあり方も大幅に変えなければならない。利用できる化学肥料も激減するから、化学肥料の大量使用に依存しない農業へと急速に舵を切る必要がある。有機農業と言わないまでも、カバークロップ、輪作、不耕起などの方法を効果的に使うことによって、化学肥料の利用を大幅に減らすことができることが可能であることは世界で実証されており、その農法は急速に進みつつある。化学物質に依存した農業から生態系の力を効果的に使う農業に大転換する、革命的な動きが世界大で進みつつあり、その転換に成功した国・地域はこの危機の中でも安定を保つことができる。しかし、日本でのその転換はまだまだだ。政府も化学企業への忖度があるのか、どこまでそれを進めようとしているのか、やる気が伝わってこない。
 
 そもそも防衛費に巨額な予算を投じている場合ではない。食べられなくなれば人は生きていけない。防衛費は逆に削減をして、この大きなシステム転換に注ぎ込むくらいでなければ、大きな犠牲は避けられないだろう。また「ゲノム編集」や細胞農業などに税金をつぎ込んでいる場合ではない。これらの技術はむしろ、現在の工業的農業をさらに進めるものであり、それにエネルギーをつぎ込む時代ではもはやない。
 
 本当にもう待ったなしなのだ。これまでの生産の仕組みを前提にせずに、地域循環の仕組みを作ること、そのためには個々の消費者の力だけではどうにもならない。地域に製粉場を復活させ、そしてそれを地域のユーザーが使っていく。地域の穀物生産を地域で回していく。生産者、消費者、食品加工業者、流通業者、地方行政が連携できなければこの転換は起こらないだろう。地域は狭く取る必要はない。北海道から沖縄まで、まずは国内での循環から始めて行けばいいだろう。その点では自治体間提携が不可欠になる。
 
 これまでの生活を維持しようと思えば、絶望せざるをえなくなるだろう。自分だけその生活にしがみつこうとすれば、社会的に大変な歪みが出る。紛争は絶えず、不幸が増殖するだろう。
 新たな食生活を作り出す、生態系と社会を調和できる食のあり方を作り出す必要がある。共有財産としての食の再発見、排他的独占と支配を生む資本による資本主義に代わり、共有によって価値を発揮するタネを基盤とするあらたな経済のあり方の発見がそこにあるかもしれない(4)。新しい時代がここから始まる。

(1) Financial Times:Can Japan feed itself?
https://www.ft.com/content/af52f367-90d2-41dd-9a0f-a2a7b1b9624a
早急な農業改革がなければ日本はグローバルな食料危機に脆弱であると結論付ける。
もう率直に海外が日本をどう見ているかをはっきり示した記事。ただし、この記事の解決策はあまりに工業的、産業的に思う。

(2) 日本の食料危機。世界で餓死する人の3割は日本人? 8月23日の投稿
https://project.inyaku.net/archives/8189

(3) 共同通信:首相、農業基本法の見直し指示 ウクライナ危機で食料安保強化
https://nordot.app/940794076371386368?c=39550187727945729

(4) Grain: The urgency to localise food supplies
https://grain.org/e/6879

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