世銀が描く世界の農業の民営化(企業による私物化)

 「種苗法改正」が前国会で進まなかったことで産経や日経をはじめとしたメディアが「改正は不可欠だ」「反対している人たちは勘違い」などと連日のように記事を流し続けている。議論なしで即日採決されると思っていた改正案が通らなかったことはよっぽど悔しかったのだろう。

 その論調は種苗法改正は農家の経営に与える影響は無視できる、というようなものばかりで、種苗法改定がどんな文脈で出てきているか一切触れていない。そんな記事ばかり。これまで農家が種苗法を意識する必要はほとんどなかった。だから多くの方がいまだ、あまり問題と感じていない方たちが多いかもしれない。
 でも、もしそのまま法が通ってしまって、10年後あるいは20年後になって、なんでこんなことになってしまったのか、と振り返った時に、2020年の種苗法改定がこんな変化をもたらしたんだよな、と総括されることになるかもしれない。でもそれではあまりに遅すぎる。 “世銀が描く世界の農業の民営化(企業による私物化)” の続きを読む

新たなタネ、食のあり方を模索する世界、無視する日本政府

 未来を先取りして、犠牲を少なくし、より安定した社会を作る。政治を担う人にはそうした姿勢をぜひ持ってもらいたいものだ。ところが日本ではいまだに戦艦大和的な時代錯誤に固執する例がつきない。核エネルギー、石炭発電、「ゲノム編集」などのバイオテクノロジー、種子法廃止・種苗法改悪に向かう動きもその1つと言えるだろう。 “新たなタネ、食のあり方を模索する世界、無視する日本政府” の続きを読む

英国、「ゲノム編集」EU規制離脱踏みとどまる

 BrexitでEUから離脱した英国、規制の強いEUから離脱するこの機会をチャンスと捉えるのがバイオテクノロジー企業。「ゲノム編集」はEUでは遺伝子組み換えとして規制されるが、EUから離脱すればその規制をなくせる、として、規制をなくす農業法案(1)が出されて大問題になった。市民団体のキャンペーンが功を奏して、この法案は撤回された(2)。 “英国、「ゲノム編集」EU規制離脱踏みとどまる” の続きを読む

ラウンドアップやジャンクフードと闘うメキシコ

 メキシコ政府がTPPや米国・メキシコ・カナダ協定などの自由貿易協定・経済連携協定によって、メキシコでの種子の権利を危うくしようとしている現状について書いた(1)けれども、それだけで終わってしまっては不当な扱いになるだろう。

 なぜなら一方でメキシコ政府はかなりがんばっているからだ。その最大の象徴はモンサント(現バイエル)の農薬、ラウンドアップ(その主成分グリホサート)の禁止に向けた措置だと言える。 “ラウンドアップやジャンクフードと闘うメキシコ” の続きを読む

育種農家と種苗法改定について

 ブドウの育種を手掛ける農家で林ぶどう研究所の林慎悟さんにお声をかけていただき、「種苗法改正」について議論させていただきました。林さんは登録品種マスカットジパングという新品種を育成された方です。しかし、農家による新品種の育成は現在大きな困難に見舞われており、種苗法改正はそれを変えるとして、法改正に賛成されています。
 法改正に賛成される林さんと反対する僕との間で議論は成り立ったか、ご覧いただければ幸いです。 “育種農家と種苗法改定について” の続きを読む

メキシコ:トウモロコシ保護法はトウモロコシ国家管理法?

 生物多様性こそが私たちの命を守ると書いた(1)。その多様性を守ってきた農家のタネが危うくなっている。ラテンアメリカの他の国々でも大きな問題となっている。

 特にメキシコが今、とても危ない。TPPや米国などとの自由貿易協定が大きな制約をもたらそうとしている。 “メキシコ:トウモロコシ保護法はトウモロコシ国家管理法?” の続きを読む

ブラジル:在来種を守る条項はいかに生まれたか?

 ウイルス感染症は人間や家畜だけでなく、植物もターゲットになる。作物の多様性を失えば、作物が全滅する、そんな脅威に直面する。

 実際にアイルランドで19世紀に悲劇が起きている。ジャガイモが菌病にやられ、ほとんど全滅。同じ品種だけ大量栽培していたことが原因。そのために多くの貧農が食べていけなくなり、2割が餓死、2割が国を捨てて移民せざるをえなくなった。

 何がその後の救いとなったかというと、ジャガイモの原産地の南米にはきわめて多様なジャガイモが存在していたこと、その多様な生物資源を使うことでその後は難を逃れることができたこと。つまり、ヨーロッパの人びとは南の地域の生物多様性に助けられたということができる。生物多様性を守ることはそうした脅威から命を守ることにつながる。 “ブラジル:在来種を守る条項はいかに生まれたか?” の続きを読む

土壌微生物、テーハ・プレータ、アマゾンとわたしたちの未来

 未来への希望は足下にある。土壌が持つ不思議な力。土いじりしている時の充足感には何か確実に根拠があるのだろう。

 アマゾンの先住民族は土壌微生物を育てる手法をはるか昔に開発して、自然が作る森よりもより豊かな森と畑を作り出していたことが近年、確認された。それがテーハ・プレータ(Terra Preta、黒い土)から知ることができる(1)。 “土壌微生物、テーハ・プレータ、アマゾンとわたしたちの未来” の続きを読む