日本は世界の動きに背を向けてきた。世界が小規模家族農業を強化しようという時に、大規模化を進め、民間企業に農業を明け渡す時代錯誤な農政を進め、さらに世界が規制を強化する農薬を逆に日本は規制緩和し、日本の農産物が輸入拒否されるまでの事態になった。
日本の有機認証農地面積では世界98位、有機認証が全農地に占める割合で世界109位。先進国で最下位であるだけでなく、アジアの発展途上国にもかなわない。日本は有機農業、自然農法のパイオニアの国の1つであるにも関わらず、政府の政策によってここまで落ちてしまった。
種苗の新品種育成でも日本だけ大幅に減り続けている(公的種苗事業は10年で半分に落ち込んでいる)。 “今、日本に必要なのは方針の大転換:生態系保護 、小規模分散、地方自治” の続きを読む
種苗法改正の目的は公的種苗事業の民営化!
26日から臨時国会が始まる。そして種苗法改正案が審議されようとしている。何度にもわたってその問題を書いてきたが、この改訂が何を目的としているのか、はっきりさせておきたいと思う。 “種苗法改正の目的は公的種苗事業の民営化!” の続きを読む
有機農業を加速する参加型認証(PGS)
NHKのクローズアップ現代で取り上げられた世界と日本の大きなギャップ。有機農業がなぜ、世界でこれだけ広がっているのに日本ではそうなっていないのか? どうすればできるのか?
世界の有機認証農地面積(単位ha) “有機農業を加速する参加型認証(PGS)” の続きを読む
クローズアップ現代の報道の意義:日本の現実を見つめよう
クローズアップ現代「世界でどう闘う?農産物のJAPANブランド」はとても画期的だったと思う。その理由第1。「モンサント文書」。実際に報道されたのは米国のラウンドアップ裁判でのモンサント社の社内文書(1)。モンサントは自社の研究でラウンドアップの人体への危険性は実際につかんでいながら知らせなかった。これがモンサントの敗訴の決定的な理由となっている。もっとも、番組の時間の多くを使っていたのはバイエル社による弁明で、衝撃は大いに弱められているが、実際に白血病になって訴訟を起こした人のインタビューやドウェイン・ジョンソン氏の裁判の映像含めて、流れたことは意義が大きい。 “クローズアップ現代の報道の意義:日本の現実を見つめよう” の続きを読む
公的種苗制度ともう1つの種苗制度の確立に向けて
種苗法改正は問題だ、とこちらは書き続けているが、一方で、種苗法改正ではそんなに変わらない、問題じゃない、いや賛成だと言っている農家の方たちも存在する。この種苗問題を紐解いていくと驚くほどの分断がある。それゆえ、その分断を超えて行動することは容易ではない。まず栽培している品種によって状況が違いすぎる。品種開発をする側の農家と使う側の農家も一見利害が対立するようにも見える。でも問題を紐解いていけば解決策は見えてくると思う。どんな問題があるのかを見てみたい。 “公的種苗制度ともう1つの種苗制度の確立に向けて” の続きを読む
遺伝子組み換え作物をめぐるこの10年
ここ10年、世界の動きはより激しくなり、洪水のようにますます膨大な情報が流れてくる。良いことも悪いこともある。
その中で悪いニュースからちょっと。遺伝子組み換え農薬とも呼ぶべき遺伝子に作用する農薬を米国環境保護局が承認する可能性がある。従来の農薬は化学成分が植物のアミノ酸合成を妨げたり、毒素タンパクで害虫の腸に穴を開けたりさせたりするものだったが、これは虫の遺伝子に作用して虫を殺す。どこかの実験室で遺伝子組み換えをするのではなく、自然環境の中でそれを起こすというもの。
いいニュースは農業のあり方を変えて、生態系を適切に3割回復させることができれば7割の生物の絶滅を回避できるというもの。このままではあと30年で100万種の生物が絶滅すると予想されている。このシナリオを変えることは可能だということ。コロナなどの感染症もやはり農業のあり方、特に畜産業のあり方が大きく関係するということも明らかになりつつある。食を変えることの意味がより明らかになっている。 “遺伝子組み換え作物をめぐるこの10年” の続きを読む
種苗法+特許法:育成者権と特許権による種苗企業の知財権強化は何をもたらす?
牧田寛氏(元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授)のこのツイート
そもそも軍事、産業分野で中国が日本から横取りするような科学技術上の成果なんてもうほとんど無いでしょうに。
30年前ならともかく。
僕の実感としては00年代に追いつかれ、10年代に完全に追い抜かれている。今となっては前をゆく中国の背中すら見えないと思うよ。
— Hiroshi Makita Ph.D. 誰が日本のコロナ禍を悪化させたのか?扶桑社8/18発売中 (@BB45_Colorado) October 15, 2020
ぐさりと響く。停滞を続け、この停滞からの脱出方法も見えなくなっている日本でその現実を見ようとしない人たちが多い中、事態を改善させるためにはやはり現実から出発しなければならない。このツイートで思い出したのはこのグラフ。 “種苗法+特許法:育成者権と特許権による種苗企業の知財権強化は何をもたらす?” の続きを読む
「ゲノム編集」種子の後代交配種は「ゲノム編集」ではない?
「後代交配種、販売前届け出求めず−ゲノム編集作物の“子孫”」
https://this.kiji.is/687247960347903073?c=395501877279457
厚生労働省のこの決定がどれほど日本の現在・未来を危うくするか。まず何を意味するのか、見てみよう。要するに「ゲノム編集」された作物は届け出する(義務ではない)。でもそれを親に作った品種は届け出すら不要。そして、この後者を流通させることにすれば消費者はまったく政府が公表する情報で「ゲノム編集」食品を避けることは不可能になるという仕組みである。こんなことを許したら食のあり方を決定する手段すら奪われるということになる。 “「ゲノム編集」種子の後代交配種は「ゲノム編集」ではない?” の続きを読む