リオグランデドスル水害、ブラジルの食料危機に?

 リオグランデドスル州の被害は想像超えて、大きな問題になってしまいそうだ。大規模農業が盛んな地域だがセラード地域が輸出向けの大豆生産が多いのに対して、リオグランデドスル州ではブラジルの稲の7割を占め、それは国内向け。収穫が進んでいたものの、それは終わっておらず、国内の食料事情に大きな影響を与えそうだ。
 そして、この地域はアグロエコロジーによる米生産の半分を生産する地域。1万トンの有機米が失われた可能性がある。この有機米の多くはMST(土地なし農業労働者運動)に属する農民たちが作っている。もともと土地を持たない農業労働者が農地改革によって土地を得て、農薬も化学肥料も使わないアグロエコロジーによって生産を拡大してきた。そしてそのお米は都市部のホームレスにも提供されてきた。MSTはラテンアメリカ最大の有機米生産団体となっている。 “リオグランデドスル水害、ブラジルの食料危機に?” の続きを読む

食への権利:食の戦争体制が進む中で

 食料・農業・農村基本法改正案、そして食料供給困難事態対策法案の最大の問題点はここまで日本の食・農をダメにしてきた政策を変えずに「これまでのビジネスをそのままやらせろ」というのが基本になっていて、そんなことをすれば確実にやってくる食料危機に強権使って対応するというセットになってしまっていることだ。
 今、気候危機、生物絶滅危機などの多重危機の進行は予想を超えて進んでおり、このままでは世界全体で危機的な事態に陥る。その中でもっとも脆弱な部類の日本はさらに厳しい状況に追い込まれるから、もっとも機敏に対応しなければならないのだけれども、現在の政権の下ではそれは期待できない。官僚がマイクのスイッチを一度切ってしまったら、オンに戻させることすらできない大臣が構成する政権では無理だろう。 “食への権利:食の戦争体制が進む中で” の続きを読む

兵庫県佐用町でのユーカリ植林騒動、BS-TBSの報道を見る

 兵庫県佐用町でのユーカリ植林騒動、BS-TBSが特集した。短い特集なので深さは望めないが、取り上げ方は悪くなかったと思う。
 
 この騒動の発端は佐用町が住民に一切何も知らせずにユーカリ植林の試験植樹を始めたことに始まる。町民が知ったのは植林が始まって半年以上経ってからの新聞報道がきっかけ。番組によると、町の計画は東京農工大学と町と金融機関が組んで、ユーカリを本格植林して、バイオマス発電所を作り、そこで発電するというものらしい。 “兵庫県佐用町でのユーカリ植林騒動、BS-TBSの報道を見る” の続きを読む

ヨーロッパと日本のタネ:どう違う? ドキュメンタリー“SEEDS OF EUROPE”を見て

 世界でタネが焦点になっていることを5月4日に長い投稿でまとめた。ヨーロッパ、EUでは2つの動きがあることを伝えた。一つは有機農家のタネの促進をめざす方向、もう一つは「ゲノム編集」の導入に向けた動きだ。
 
 でも文字ではなかなか伝わらない。前者の有機のタネに関するとてもいい短いドキュメンタリーがある。“SEEDS OF EUROPE”(34分)。アイルランド、ルクセンブルク、フランス、イタリア、オーストリアとチェコ共和国の農家を訪れ、タネの問題を浮き上がらせる。 “ヨーロッパと日本のタネ:どう違う? ドキュメンタリー“SEEDS OF EUROPE”を見て” の続きを読む

岸田首相のブラジル訪問:何しに行った?

 能登半島ではまだ水さえ不足しているというのに岸田首相はフランス・ブラジル・パラグアイ訪問。何しに行ったのか?
 
 4.11億円と拠出し、日・ブラジル・グリーン・パートナーシップ・イニシアティブ(GPI) を行うと約束した¹。「環境・気候変動対策及び持続可能な開発を軸として、日本の技術活用による協力を通じて戦略的グローバル・パートナーシップの一層の強化を図るもの」としているけれども、環境や気候変動の名の下に、それに反することをやるのがこれまでだっただけに、中身が気になる。 “岸田首相のブラジル訪問:何しに行った?” の続きを読む

タネの危機と解決策としてのタネ:世界で広がるタネの運動

4月26日は国際種子デー(International Seeds Day)で、世界中でさまざまな動きがあった。記念日ということを超えて、この動きは近年急速に大きくなっている。タネが危機であること、そして同時に世界で進む多重危機の解決策もまたタネから始まるからだ。 “タネの危機と解決策としてのタネ:世界で広がるタネの運動” の続きを読む

フィリピン控訴裁判所:遺伝子組み換えのゴールデンライスとBtナスの差し止め判決

朗報:フィリピン控訴裁判所は4月19日、遺伝子組み換えのお米であるゴールデンライスと遺伝子組み換えナス(Btナス)の栽培と流通の差し止めを命じた下級審の判決を支持し、安全性が確認できるまで、ゴールデンライス、Btナスに関わる宣伝含めた一切の活動停止を命じた¹。とても重要な判決。 “フィリピン控訴裁判所:遺伝子組み換えのゴールデンライスとBtナスの差し止め判決” の続きを読む

モンサント・バイエル・住友化学時代の終わり

 圧倒的な力のある勢力によってすさまじい勢いで社会が変わり、それにはもう、なすべき手はないように思えてしまうことがある。でも、現実から目を遠ざけてしまえば、その無敵であるかのような勢力は実は大きな問題を抱え、没落の恐怖に慄いていること、そして、実に醜い手を打って、その没落のシナリオから逃れることを許してしまう。希望は現実の中にある。それを見逃してはならない。
 たとえばモンサント・バイエル・住友化学がまさにその典型だ。世界でもっとも売れたモンサントの農薬ラウンドアップ(有効成分グリホサート)は、その有害性ゆえ、次々と禁止・規制の動きが世界で起きる。でもその動きを米国政府が圧力をかけて撤回させる。
 しかし、いくら圧力をかけても、ラウンドアップの現状は厳しい。耐性雑草が増えて、効力を失う。さらには多くの人に健康被害が出た。その動きに鈍感なバイエルがモンサントを買収したが、その結果、モンサントが抱えていた構造的な債務を引き受けることになる。ラウンドアップ訴訟で16万7000件もの訴訟が起こされ、バイエルはすでに多額の賠償金の支払いを余儀なくされたばかりか、今なお5万件を超す訴訟に直面している。バイエルの株価は7割下落し、リストラを余儀なくされている。 “モンサント・バイエル・住友化学時代の終わり” の続きを読む