超加工食品への取り組みが世界で進行中

超加工食品問題に世界の注目が集まっている。日本でも、野菜が高い、時間がない。だから手っ取り早く食べられて比較的安価な超加工食品に手がいってしまう傾向は高まっているだろう。でも、超加工食品が健康や社会に与える影響は甚大だ。
 超加工食品は腎臓や肝臓への影響のみならず、死亡率、がん、精神疾患、呼吸器疾患、心血管疾患、消化器疾患、代謝疾患を含む32項目(71%)の健康指標との間に直接的な関連が認められると指摘する研究も発表されており¹、最近では認知機能の低下に関する研究も発表されている²。この問題への取り組みが一番進んでいる地域はラテンアメリカかもしれない。
 ラテンアメリカではとりわけ低所得者層で肥満、腎臓疾患などが急増し、社会問題化した。近年、地域の生鮮野菜を作っていた小規模農家の減少が激しく、一方、遺伝子組み換え作物の栽培に代表される大規模農業の進展が著しい。その結果、地域の食のシステムが衰え、人びとの食生活に大きな影響を及ぼした。生鮮野菜などは価格が高騰し、購入が激減し、代わりに登場したのが超加工食品。この食生活の変化が人びとの健康に大きな影響を与えたとして、超加工食品への取り組みが本格化した。
 ブラジルではCONSEA(全国食料栄養保障協議会)が先住民族を含む貧困コミュニティも含めた議論を元に栄養ガイドラインを作成、超加工食品が健康に持つ問題に光を当て、国連栄養サミット(2014年)で発表され、大きな注目を集めた。
 一方、政策で先行したのがチリ。チリは2016年に砂糖、飽和脂肪、塩分、カロリーが高い超加工食品に対して、食品表示を義務化した。こうした取り組みはラテンアメリカのデファクト・スタンダードになり、次々に他の国に広がっていった。ペルー(2019年)、メキシコ(2020年)、コロンビア(2021年)、ブラジル(2022年)でもほぼ同様の食品表示が義務化された。単に食品表示が義務付けられただけでなく、メキシコなどでは警告ラベルが表示される製品は子ども向け広告やキャラクター使用が禁止されるなど、先進的な取り組みが行われている。そして、その効果が上がっていることも確認されている³。
 
 ラテンアメリカだけでなく、米国でも取り組みが始まっている。遺伝子組み換えや「ゲノム編集」を使っていない食品を認証するNon-GMO Projectは新たに「Non-UPF Verified」(UPFはUtraprocessed Food、超加工食品)という超加工食品でないことの認証ラベルを始めた⁴。
 このアプローチは日本でも必要かもしれない。というのも、ここ数年、とても自然とは思えないフードテックが急速に出現している。「ゲノム編集」食品や遺伝子組み換え大豆で作った代替肉や、さらには究極の遺伝子組み換えと言われる合成生物学など。米国ではそれらは十分わかりやすい表示がなされないケースが多く、日本でもどうなるか心配がある。でも一つ一つ、「ゲノム編集でない」、「合成生物学でない」、…、とラベルを作っていくと、食品にラベルをいくつも付けなくてはならなくなる。
 このNon-GMO Projectの「Non-UPF Verified」はこうした問題ある原料を使っていないことを認証するだけでなく、アニマルウェルフェアや労働環境や水資源を守る製品であるなど8つもの基準をクリアしたものだけに表示される。
 
 もう一つ重要なのは子どもたちが超加工食品に慣れてしまわないようにすることだ。ラテンアメリカでは、こうした取り組みは進んでいるが、米国カリフォルニア州も学校給食での超加工食品の使用を2032年までに禁止する⁵。韓国での学校給食でも合成添加物を使わないチェックがすでに制度化されている。
 
 ラテンアメリカの超加工食品の表示はとても目立つのでわかりやすい。ブラジルの遺伝子組み換え食品表示も誰でもわかるアイコンで示される。一方、日本は食品表示は消費者庁が無添加表示を止めようとしたり、より加工食品企業を利する動きをしており、「遺伝子組み換えでない」は「IP管理済み」などよりどんどんわかりにくいものに変えている。本当に日本の消費者庁、なんとかしないと、まずい。政権交代とぶれない消費者庁長官が必須かもしれない。
 
(1) Ultra-processed food exposure and adverse health outcomes: umbrella review of epidemiological meta-analyses
https://www.bmj.com/content/384/bmj-2023-077310

(2) Consumo excessivo de alimentos ultraprocessados pode aumentar risco de declínio cognitivo

Consumo excessivo de alimentos ultraprocessados pode aumentar risco de declínio cognitivo

(3) Novas pesquisas comprovam que alertas em alimentos funcionam
https://abrasco.org.br/novas-pesquisas-comprovam-que-alertas-em-alimentos-funcionam/

(4) New ‘Non-UPF Verified’ Certification Sparks Enthusiasm in Natural Foods Community

Press Release: New ‘Non-UPF Verified’ Certification Sparks Enthusiasm in Natural Foods Community

(5) Newsom signs ban on ‘ultraprocessed’ food in California school lunches
https://www.politico.com/news/2025/10/08/newsom-signs-ban-on-ultraprocessed-food-in-california-school-lunches-00599256

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