遺伝子組み換え食品は世界では避けられるようになり、一方、日本では逆に年ごとに無警戒になっている。遺伝子組み換え食品は従来の食品と同等だ、というモンサントの宣伝文句がそのまま世界の政策になってしまったが、科学者たちからはこの宣伝文句が偽りであるとの警告が発せられている。その警告が日本ではほとんど知られていないからだろうか?
モンサント(現バイエル)の遺伝子組み換えトウモロコシNK603は詳細に分析すると117のタンパク質と91の代謝物が遺伝子組み換えによって変質しており、発がん性物質につながる物質の生成が著しく増加するとある研究が指摘している¹。
NK603はモンサントの農薬ラウンドアップに耐性を持つ。ラウンドアップ(グリホサート)は植物のタンパク質を構成するアミノ酸を作る回路(シキミ酸経路)をブロックしてしまうから、植物はタンパク質が作れなくなって枯れる。NK603は大腸菌の遺伝子の一部を組み入れることで、このシキミ酸経路にバイパスを作ることで、ラウンドアップをかけても枯れなくなる。
つまり、生命が自己を成長させ、維持する根幹のプロセスを遺伝子組み換えで変えてしまっている。エネルギー代謝が変わり、生命活動に必須物質ポリアミンの生成が異常に増加する。ポリアミンは異常生成されると、毒性を持ち、アレルギーの原因となったり、発がん性物質の発生にもつながる。
遺伝子組み換え食品による健康被害について、「問題なのは農薬で、遺伝子組み換え作物には問題ない」と勘違いしている人が時々いるのだが、実際には農薬を一切使わずに育てたNK603だけで発がんが確認されている²。
この遺伝子組み換えトウモロコシNK603は米国では2000年に承認され、日本でも2004年に承認されており、日本ではこのNK603を親とする遺伝子組み換えトウモロコシは40品種以上承認されている³。加工食品の原料や飼料として日本でも使われていることになる。
トランプ関税を避けるために、日本政府がトランプ政権に約束したのはもっと米国から大豆やトウモロコシをさらに買うということ。言うまでもないが、遺伝子組み換えのもの。インド政府は米国政府からの遺伝子組み換え作物の買い付け圧力に抗しているし、中国政府は少し妥協したが、中国による米国からの買い付けは大幅に減っている。日本の米国へのさらなる属国化は同時に遺伝子組み換え企業へのさらなる服従になってしまっていることに言及する報道は見たことがない。高市政権の外交を礼賛する報道ばかり。すでに日本は米国から7割を超える大豆・トウモロコシを買っており、これをさらに増やすことの異常さは明らかであるにも関わらず。
この動きに対しては、まず、遺伝子組み換え食品を食べないための方策を講じることから始めることだろう。
参考情報:
(1) An integrated multi-omics analysis of the NK603 Roundup-tolerant GM maize reveals metabolism disturbances caused by the transformation process
https://www.nature.com/articles/srep37855
こうした問題を分析するためにはゲノム情報だけでは不足で、プロテオーム解析(プロテオミクス)と言われる実際に細胞の中で生成されるタンパク質をすべて解析する必要がある。
(2) Long-term toxicity of a Roundup herbicide and a Roundup-tolerantgenetically modified maize
https://enveurope.springeropen.com/articles/10.1186/s12302-014-0014-5
(3) トランプ政権(第一次)からの圧力もあって、日本政府は遺伝子組み換え生物の規制を緩和してしまっており、以前は遺伝子組み換え作物を組み合わせて交配させた品種は別途承認が必要だったが、それも不要となってしまったため、日本に輸入されるNK603系統の品種がいくつになっているか、正確な数は把握困難になっている。
