すばらしい消費者・市民の勝利! 10月31日、米国連邦控訴裁判所、米国政府のデタラメな遺伝子組み換え食品表示規程を違法と判断。この判断が確定すれば日本の遺伝子組み換え表示にも大きな影響があるはず。
米国では全国で遺伝子組み換え食品への表示を求める運動が高まり、州レベルでまともな遺伝子組み換え食品表示法が成立し始めた(2014年バーモント州など)。それに対し、遺伝子組み換え推進側の企業ロビーは連邦政府レベルで州政府の制度を無効にさせるよう圧力をかけ、米国農務省(USDA)はQRコードで遺伝子組み換え原料などの有無を表示すれば食品には何も表示しなくていいというルールを2018年に作った。しかも遺伝子組み換えならぬBIOENGINEEREDという名称に変えている(これではこの言葉の意味を知っている人しかわからない)。そして食用油などは表示義務を免除している。これは消費者の知る権利を否定するものだとして、食品安全センター(Center for Food Safety)などの米国の市民団体や小売業団体が2020年にUSDAを提訴していた。
2022年にはQRコードだけで済ませるUSDAの規則は違法だという地方裁判所の判決が出ていたが、そうした製品が市場に残ることを免責していた。今回の控訴審ではこの救済策を違法であるとして、USDAに新たな規則の作り直しを命じた。
QRコードはスマートフォンなどを持たない人は中身を知ることができないし、買う製品の一つ一つのQRコードをチェックしていたのでは買い物にならない。だから当然と言えば当然の判決であるが、今回の判決にはもう一つ、大きな判断が加わっている。食用油などへの遺伝子組み換え表示義務が認められたのだ。
日本政府も食用油やお酢などへの遺伝子組み換え原料の利用の場合は表示義務を免除してしまっている。だから日本のスーパーで売っている安いナタネ(キャノーラ)油、コーン油、大豆油、綿実油はほぼすべて遺伝子組み換え原料を使っている。また遺伝子組み換え原料が使われる7割ほどは、加工食品であり、それがこのルールによって、表示が課されない、つまり大部分の表示が放免されてしまうという問題がある。それが米国では違法であると判断されたのだ。
これは日本にとっても大きな判断だろう。なぜ食用油などの場合は表示が免除されるかというと、油では遺伝子が検出できないことを理由としている。「検出できないから表示義務を課せない」という言うのだ。それを米国の控訴裁判所は「物質が実際に存在するかどうかと、特定の方法を用いてその物質の存在を検出できるかどうかの間には、明白かつ重要な違いがある」と断定した。つまり、要するに製品から検出できなくても、それを作っている原料をトレースすれば遺伝子組み換えかどうかはチェックができる。現にEUではこの社会的検証を使って表示が義務化されている(日本企業が作ったお酢も日本では表示されないが、EUに輸出される時には遺伝子組み換えから作ったと明示してある。検出できなくても表示はできる証拠)。
日本だと遺伝子組み換え食品は「以前は騒いだけど、あまり問題ないんじゃない」というような受け止めが増えているかもしれない。でも、それは日本くらい。米国でも年々、遺伝子組み換え食品は食べないとする人が増えている。実際に近年、遺伝子組み換え作物は複数の混合農薬に耐えられるものへ、あるいは複数の殺虫毒素が加えられるに至っており、毒性は高まっていることが想定される。
そして遺伝子組み換え原料が多く使われる超加工食品がもたらす健康被害に懸念が高まる中、今回の控訴審判決は大きな意味を持つだろう。
米国政府と同様の遺伝子組み換え食品表示義務でごまかしてきた日本政府にとってもこの判決は重い。
Victory! Center for Food Safety Secures Win for the Public’s Right to Know in GMO Labeling Lawsuit
https://www.centerforfoodsafety.org/press-releases/7082/victory-center-for-food-safety-secures-win-for-the-publics-right-to-know-in-gmo-labeling-lawsuit
