モンサントの「ラウンドアップは安全」の宣伝の虚偽に関する裁判始まる

 この裁判はモンサントのラウンドアップ(その主成分グリホサート)の運命を決めるものとなるかもしれない。
 モンサントの除草剤ラウンドアップが人間や家畜には安全であるとする宣伝が虚偽で消費者を欺くものだとして市民組織がモンサントを告発した。しかし、モンサント社はこの訴訟を棄却するように裁判所に求めていた。米国のコロンビア高等裁判所は十分な証拠が提出されたとしてその訴えを5月7日に受理した。

 ラウンドアップは植物が必須アミノ酸を作るシキミ酸経路を阻害する。ラウンドアップをかけられた植物はアミノ酸を作れなくなり、枯れてしまう。ちなみに遺伝子組み換え作物はこのシキミ酸経路にバイバスを作らせ、通常のシキミ酸経路がブロックされても、枯れないで育つ。
 このシキミ酸経路は人や家畜には存在しない。だからモンサントは人体には安全だと断言している。

日本モンサント社の説明

 確かに人体にはシキミ酸経路は存在しない。でも人や家畜の体は膨大な数の腸内細菌に支えられている。その腸内細菌にはこのシキミ酸経路を持つものがある(進化の順序から行くと逆で、細菌がこうした仕組みを作り、それを植物が受け継いだのだろう)。だからグリホサートはシキミ酸経路を持つ腸内細菌は損なう。サルモネラ菌などの悪玉菌はやっかいなことにグリホサートの影響を受けにくい。善玉菌が損なわれ、悪玉菌は損なわれないから余計に大変なことになる。
 腸内細菌を損なえば当然、健康には大きな影響が出るわけで人体に安全だというのは消費者の欺く行為だ。しかも、訴訟を起こした市民組織Organic Consumers Association (OCA、有機的消費者協会)によると、モンサントはラウンドアップが腸内細菌を損なうことをすでに知っていて、この宣伝を行ったという。危険を知らずに安全と間違って宣伝していたのではなく、危険であることを知っていて、それを安全と偽って宣伝していた、そしてその宣伝を今でも続けているということになる。

Us Judge gives green light to misleading Roundup Label lawsuit against Monsanto

訴状(英文)

 訴訟では絶大な力を持つモンサントを負かすことは容易ではないだろうが、科学的な事実はさすがのモンサントと言えども否定できないだろう。この虚偽が証明されればモンサントの農薬ラウンドアップの世界的な禁止はもはや秒読みに入ることになるのではないだろうか?

 EUの主要国がすでにラウンドアップ(グリホサート)の3年以内の禁止に向かっていることはこうしたことを踏まえるならば当然の動きということができるだろう。それに反して、最大400倍の規制緩和をしてしまう現在の日本政府は本当に度しがたいならず者国家であるといわざるをえない。日本でも禁止に動く必要がある。
 日本政府を変えることは難しいかもしれない。でも世界では国単位でなくても、自治体でグリホサートの使用を禁止するところが出てきている。
 まずは公園や学校など公共の地域での使用を禁止する、鉄道や道路(実は鉄道や道路には大量の除草剤が使われている。ドイツで最大の除草剤の使用業者は鉄道会社)で禁止する。家庭菜園などの個人の使用を禁止する(すでにEUでは多くの地域で個人向けのラウンドアップの販売は規制されている)ことなど実現可能なことはいろいろあるはずだ。
 ぜひ検討していただきたい。

神戸新聞記事

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