EUグリホサートの5年使用延長を承認

 11月27日、欧州委員会でモンサントの農薬グリホサートの8回目となる承認に向けた投票が行われ、棄権予定のドイツが賛成に回ったため、EUでグリホサートの使用が5年間延長されてしまった。

 ドイツはこの間、ずっと棄権の立場を取ってきた。国内ではグリホサートに対する反対は強く、一方、ドイツは世界の6大遺伝子組み換え企業の2つの企業の母国となっており、その1つのバイエルはモンサントを買収しようとしている。それではドイツ政府はどうして賛成に回ったのか? これが謎だ。ドイツ環境相(SPD社会民主党)は反対の立場を取っており、農業相(CSUキリスト教社会同盟)は賛成していたが、事前の確認ではメルケル首相は棄権することで合意していたと言われる。
 首相の意に反する行動が行われ、モンサントや遺伝子組み換え企業が救済されたことになる(グリホサートはモンサント以外の遺伝子組み換え作物にも使われる)。EUの核となってきたドイツ政府のガバナンスを疑わせる事態となってしまった。
 ドイツが棄権を維持すればこの投票でも承認に必要な票が集まらず、12月15日でグリホサートの使用認可が切れるという事態になるところだった。モンサントのビジネスの基盤であるグリホサートが禁止になれば、その影響は世界にも広まる。モンサント・バイエルは必死にドイツの票を賛成にさせるための圧力をかけたことは間違いない。再び、その黒い姿を感じさせるケースとなった。

 このEUでのグリホサートの承認、昨年3月段階では15年の承認だったが、それが5年に短縮された。それは少なからぬ成果ではあったが、今回の承認が持つ影響は小さくないだろう。まず、EUでは来年、バイエルによるモンサントの買収についての承認可否が決定される。EUの核となるドイツでのいわばクーデタ的な動きが出てしまったことがこの買収の承認にどう影響するだろうか?

 さらに日本にとっても大きな問題だ。日本政府は6月にグリホサートの大幅規制緩和の方針を決め、パブリックコメントも終わらせており、8月には規制緩和実施か、という状況だった。しかし、11月に入っても、その動きが示されない。さすがにEUが禁止するものを大幅規制緩和するのがあまりにあまりの行為だったので、EUでの動きをじっと待っていたのではないか。もしそうだとするとすぐに規制緩和を実施するだろう。もちろん、そんなことは許されてはならないが。

 もし、日本政府がグリホサートの規制緩和を実施すれば、日本列島住民のグリホサート摂取量は劇的に大きくなることが懸念される。このグリホサートは発ガン性物質であり、腸内細菌や神経を損ない、内分泌撹乱物質として生殖にも大きな影響を与えることが想定される毒物である。
 中でも小麦によるグリホサート摂取量が遺伝子組み換え大豆の摂取量を大幅に上回る事態となる。小麦はまだ遺伝子組み換えはされていないが、グリホサートの収穫前散布(プレハーベスト)が米国などでは行われており、含まれるグリホサートは遺伝子組み換え大豆と同じレベルとなっている。そして現代では日本列島住民はコメよりも小麦を多く食べるようになっている。日本政府の動きを監視しないといけない。

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この記事の最後にグリホサートの発ガン性はWHOの研究の後、否定されていると書かれているが、否定しているのはモンサントであって、独立した科学がそう判定しているのではない。EFSAはグリホサートの発ガン性を否定する見解を発表したがそれを起草したのはなんとモンサントの関係者自身だった。「モンサント文書(Monsanto Paper)」として暴露され、それ自身が大きな問題になっているのだが、発ガン性の否定だけがこうして書かれてしまうことに大きな違和感

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