セラードはアマゾンに隣接するブラジル中央部に拡がる高原サバンナ地域。ユニークな植生を持つ貴重な生態系。今、ブラジルではセラードとカアチンガ(北東部に拡がる乾燥地域)をブラジルの自然遺産として憲法で守ることを求める運動が展開されている。
9月11日はブラジル政府が定めた「セラードの日」。それに合わせてセラードを自然遺産として守ることを求める56万人の署名がブラジル連邦議会に提出された(1)。
ブラジルではさまざまな媒体にセラードの自然の美しさを表現する映像が放映されている(2)。アマゾン地域は水蒸気も多く、雲があるためにアマゾン地域よりもこのセラード地域の方が紫外線が強い。その強い紫外線に耐えるためにその植生は独特の発達を遂げている。紫外線に耐えるために多くの植物は抗酸性物質を多く産出するために、薬草としての効果の高いものも多い。世界の他の地域には見出せない動植物が今なお存在している。
地道な運動は成果を上げ、中南米最大のテレビ、グローボも何度にもわたってセラードの価値を伝える番組を放映していることもあって、今やセラードというアマゾンにつぐ第2の生態系の重要さはブラジル社会に認知されてきた。しかし、アマゾンは憲法でブラジルの自然遺産と認められているが、セラードはそうではない。今回の署名はそれを認めることを求めるもの。セラードの日も制定され、政府の中でも認知はすでにある。
しかし、それにも関わらず、日本政府はこのセラードをいまだに「不毛の大地」と呼び続ける。そして、その独自の植生を引きはがして、大豆の一大穀倉地に変えたODA開発プロジェクトを奇跡の成功と言い続けている。
自然遺産と「不毛の大地」、この認識の差に唖然とせざるをえない。もし、日本政府がそう呼び続けるのであれば、もはや現実を認識する能力がないとみなさざるをえないだろう。
今なお、セラードの自然は破壊され続けている。現在ではアマゾンを超える森林火災が農業開発を目論むものたちのものの手によって引き起こされている(3)。これは明らかな犯罪行為なのだが、開発を号令するボルソナロ政権の下では裁くことがより困難になっている。この犯罪者と共に日本政府は農業開発インフラの拡大についてブラジル政府と協議を進めている。
このセラード開発=セラード破壊こそ、現在のアマゾン破壊に直結するものだ。起源は日本のODAプロジェクトである。ベルギーの大使はセラード保護のイベントに参加して、セラードはブラジルの水資源の心臓だとその価値を讃える(4)。日本大使館関係者はいったい何しているのだろう? 「不毛の大地」を唱える中央に忖度して、無視しているのか?
このままではセラードの自然は2030年にほぼ壊滅となり、そうなればアマゾンの熱帯雨林も終わりになるだろう。
セラードをブラジルの自然遺産に、そして世界遺産に。
(2) 中南米最大のテレビ局グローボによるセラードの日を伝えるニュース
とても反動的なテレビ局で中味はともかく、それでもセラードの価値を伝える。それすら認識しない日本政府ってどうなっている、ということ。もう恥でしかない。
Dia Nacional do Cerrado é comemorado em Montes Claros
No dia nacional do Cerrado, especialistas alertam sobre a importância da preservação
(3) 9月に入って森林火災がアマゾンよりもセラード地域の方が多くなっている。
Cerrado registra mais focos de queimadas do que a Amazônia nos primeiros dias de setembro