ブラジルの若者たちが作ったアグロエコロジーに関するビデオが国連の気候変動に関する若者たちによる国際ビデオコンクールで賞を取った。3分という短編ビデオだけど、アグロエコロジーの本質が表現されている。英語の字幕があるので、ポルトガル語わからなくても理解可能。英語がわからなくてもアグロエコロジーがどんなことなのか映像から感覚的につかんでもらえると思うので、ぜひ、みてほしい。
アグロエコロジーとは生態系の力を引き出す農業に関する科学であり、農業実践であり、社会運動。登場するのは年配の農民が多いのだけど、その本質を語る言葉には実践の裏付けがあるだけに力がある。
見慣れた畑と大きく違うのはさまざまな作物がいっしょに栽培されていること。特に果樹と野菜。土は常に何かに覆われている。タネは地域の伝統的な在来種。
この畑はMST(土地なし農業労働者運動)が組織した闘いで農地改革で勝ち取ったもの。MSTの中でははじめからアグロエコロジーを採用していたわけではなかった。大地主たちがやっているように化学肥料や農薬を使う農業をやる人たちもいた。でも、借金を重ねて失敗するケースが多く出る。それに対してアグロエコロジーは技術的な支援さえあれば、投入する資金は少なく、生産性も年々上がっていくので、成功する確率が高い。その実践を学ぶ学校も作られ、ラテンアメリカ中の農民たちが学んでいく。
かつてのMSTのスローガンは農業労働者たちには生きる権利がある、だから農地改革を、というものだったが、今はそれに健康のために社会に安全な食を提供するというものが加わった。今やMSTはブラジル最大の有機農業生産者組織になっている。アグロエコロジーがあれば、一部の金持ちだけではなく、社会全体に安全な食が供給可能だとMSTは断言する。
日本では評論家が有機食品は一部の金持ちの人たちのものに過ぎず、遺伝子組み換え食品に不安を与えるようなことを言いふらす人は犯罪者であるかのように言いたげな言説を振りまいているが、まったくそれは逆さまであって、すでに有機食品はブラジルやキューバで貧しい人たちの生活を支えつつあるものとなってきている。一方、遺伝子組み換え食品はそれを食べる人も耕作する大地も汚染し続けている。
ボルソナロ政権はMSTをテロリストと呼び、労働者党政権の時に実現したアグロエコロジー政策のための予算を大幅に削減した。学校給食はこうした地域の農民の食材を少なくとも30%使うという方針を導入したにも関わらず、実践されていない地域が増えている。しかし、それでもこうした地に根の生えたアグロエコロジー運動は力強く拡がっている。ここには未来がある。