遺伝子操作農薬・肥料・種子コーティングに注意!

 遺伝子操作微生物に要警戒。
 化学農薬・化学肥料に加えて、農薬企業は今、微生物農薬・微生物肥料に注力しており、すでに米国では使われ始めている。問題なのは天然の微生物を使っているのならともかく、それに「ゲノム編集」や遺伝子組み換え技術が使われて遺伝子操作微生物となっていることなのだ。
 日本でも三井化学が遺伝子組み換え微生物農薬の実験場を都内に開設する(1)。しかし、それを伝える新聞記事の見出しは「天然由来品」。忖度もここまで来たか?
 
 米国Pivot Bio社による化学肥料の代わりになる「ゲノム編集」された生きた細菌製剤Proven®は窒素固定菌を「ゲノム編集」。通常の窒素固定菌は土壌中の窒素濃度が高いと窒素の固定を止める。でもそれを止める遺伝子を破壊して、止まらないようにしたという。窒素は植物が育つ上で不可欠だが、窒素過多は逆に有害になる。自然はそうならないようにコントロールされているのにそれを壊すというのは到底、理解に苦しむが、米国では化学肥料や農薬の過剰な使用によってよほど窒素不足に陥っているのか(2)。
 
 もう一つ、バイエルが開発し、現在はBASFが販売を手掛けるPoncho®/VOTiVO®。これはネオニコチノイド系農薬のクロチアニジンからなるPoncho®と微生物農薬VOTiVO®を組み合わせたもので、種子コーティングに使われている。
 VOTiVO®2.0の微生物は遺伝子操作されたBt細菌。ネオニコチノイド系農薬と同様Bt細菌は殺虫剤として使われ、土壌の中の線虫を殺すが、それだけでなく土壌中の微生物を活性化させるという。
 
 住友化学もまたこうした微生物農薬・肥料分野の企業を買収している。住友化学の今年の株価は憐れなほど下がっている。石油化学事業は全然ダメなのだが、この微生物農業資材の分野(バイオラショナルと住友化学は呼ぶ)だけは右肩上がり。

 これに拍車をかけるのが世界的な化学農薬・化学肥料規制を求める声だ。日本政府も「みどりの食料システム戦略」を出して、農薬・化学肥料の削減のポーズを示すが、遺伝子操作微生物は化学農薬・化学肥料ではないとして、開発に拍車をかける姿勢を見せている。
 しかし、実際には化学農薬規制は実現していない。EUでも規制方針が農薬企業のロビー活動で覆されたし、世界で最大量の農薬消費国ブラジルではさらなる農薬規制緩和を認める法案が上下院で承認されてしまった(3)。
 ゾンビのように化学農薬は死のうとしない。今後、化学農薬に加えて、遺伝子操作微生物農薬が加わることになる。
 
 これまで環境中に出された主な遺伝子組み換え生物は農作物や蚊など。これらに比べ、微生物は圧倒的に遺伝子の伝播力が強い。世代間の伝播だけなく、遺伝子の水平伝播が微生物では盛んだからだ。自然界の微生物に与える影響も格段に大きいことが危惧される。そもそも調和の取れた土壌であれば農業資材として微生物を入れる必要すらない。土壌環境を壊して、さらに壊れた環境をビジネスの対象とする環境破壊ビジネス。そんなビジネスを止めないと、土や水も商品になること間違いなし。
 
 本来ならば、政府が禁止・規制しなければならないものなのだが、なぜ、米国ではすでにこうしたものの使用が進んでいるかというと、それらの安全が確かめられた、というのではまったくない。政府の買収が完了したから規制もなくなった、と言っていいだろう。
 すでに米国は前トランプ政権の時に大幅な遺伝子組み換え規制緩和が行われ、政府は審査もモニターも多くのケースでまったくしなくなっている。そしてその政策はバイデン政権も継承している。まさにバイオハザードが広範囲な地域で起きることに警戒しなければならない時代になった。そして政府は何もしようとしていない。この決定には市民団体が異義を唱えて、訴訟がおこされている。そして、この問題は今、環境団体がその警告を発するという状況になっている。その動向は要注目だし、日本でも規制を求めていく必要がある。
 
 米国で起きることは日本にやがてやってくる。今後、遺伝子操作は農作物だけでなく、農薬、化学肥料、種子コーティング剤などとして農業の中に広く入ってくることに警戒する必要がある。
 
(1) 日本経済新聞:三井化学系、都内に農薬実験の新施設 天然由来品開発
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC10C5R0Q3A111C2000000/

(2) New Genetically Engineered Soil Microbes Could Threaten Soil Health

New Genetically Engineered Soil Microbes Could Threaten Soil Health

(3) Senado aprova PL do Veneno com apenas um voto contrário
https://www.brasildefato.com.br/2023/11/28/pl-do-veneno-e-aprovado-no-plenario-do-senado-com-apenas-um-voto-contrario

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