再び、「ゲノム編集」問題。
パブリックコメントの締め切り(12月7日)が近づいてきた。
ゲノム操作食品を有機認定から排除することを明確にする有機農産物の日本農林規格等の一部改正案についてのパブリックコメントである。
(「ゲノム編集」という言葉はおかしい。「編集」とは切り取った上できれいの整える作業を連想させるが、現段階の「ゲノム編集」は遺伝子破壊技術であって、破壊された遺伝子がどう修復されるかは生物まかせ、つまり、切り刻むだけでお終いであり、到底、「編集」という名に値しない。ゲノム操作と呼ぶべきだろう。一般に「ゲノム編集」と呼ばれていることであることについて買いていることがわかるように今後は「」付で書くことにする)
米国政府に追従して、日本政府はゲノム操作食品の有機認定を試みようとした。しかし、当の米国でも10月23日〜25日に行われた全米オーガニック認証基準理事会(NOSB)でもその案は徹底的に叩かれた(1)。その後、日本政府は急転して、今度はゲノム操作食品を有機に含めない方針を出してきた。今回はこの方針に関するパブコメである。
この方針の方向性は正しいし、支持する。しかし、そのためにはゲノム操作食品が規制され、食品表示が義務づける必要がある。そうでなければ、いったい、有機産物がゲノム操作食品を含まないことを排除できるだろうか? ゲノム操作された種苗にしっかり表示されれば、いいが、表示されない場合、それと知らずに栽培しかねない。有機認証制度を維持するのであれば、当然、ゲノム操作食品は表示、規制することが必要となる。
ゲノム操作を規制、食品表示する義務を免除されるべき理由として日本政府はいくつか挙げているが、すべてが反論つくされており、説得力を持たない。
* 「ゲノム編集は自然でおきる変異と区別がつけられない」
* 「ゲノム編集は検出できない」
* 「ゲノム編集は他の生物の遺伝子を組み込まない」
否。ゲノム操作は自然界でおきる変異とは異なり、細菌由来の遺伝子、抗生物質耐性遺伝子、カリフラワー・モザイク・ウイルスなどを挿入して人為的に行われ、その痕跡は検出可能であると研究者は証言する。また、挿入した遺伝子は発現せずに消失することを期待しているが、その期待通りになるとは限らない。抗生物質耐性などを作り出す危険も指摘されている。
遺伝子組み換え食品を流通させる時にも同様な言い方が使われたことを想起すべき。現在でも日本では油、お酢などの加工品では検出できないとして遺伝子組み換え100%の原料で作られている油でも食品表示義務がない。しかし、その同じ会社がその製品をEUに輸出する時にはしっかりと遺伝子組み換えで作っていると表示している。なぜならEUでは表示義務があるからだ。「検出できない」というのは単に表示させるなという企業圧力に日本政府が弱いことの証明なのであって、表示できないという根拠になるものではない。
* 「ゲノム編集による食品は自然界で起きることと同じなので、安全である」
まったく証拠がない。その逆に、ゲノム操作食品はアレルギーや毒素を作る可能性が指摘されている。それにも関わらず、ゲノム操作食品を使った長期的な給餌実験などはまだ行われておらず、安全性は確かめられていない。
医療分野ではゲノム操作は従来の遺伝子組み換えと同様の検討が加えられているにも関わらず農業・食品分野ではまったくの無規制方針を米国と日本政府は打ち出したが、使われている技術は基本的に同じであり、医療分野で危険性の認識のもとで慎重な議論がされているものが、なぜ農業分野では無規制で済むのか整合性がまったくない。
いずれにしてもゲノム操作した食品の安全性がまったく証明されていない段階で有機認定はありえないし、有機認定から排除するためには適切な規制(禁止)、最低でも表示が不可欠な対応となる。農水省として種苗への表示義務を打ち出すべきであるし、それは日本で有機農業を振興させる義務を持つ省庁として当然の立場であろう。
という認識のもとで、パブコメを少しやわらかく書こうと思っています。みなさまもぜひ!
「ゲノム編集」のSDN-1、SDN-2、SDN-3の区別とかも気になる方もおられると思います。それ書くと長くなるのでいったんここで切ります。
この他にこれまで書いた「ゲノム編集」問題についてはゲノム編集をご参照ください。