ゲノム編集食品を有機認証する?

唖然、ゲノム編集で遺伝子操作した食品をオーガニック認定する?

 米国農務省(USDA)次官のGreg Ibachが7月にゲノム編集食品をオーガニック、有機食品として認めるように議論しようと下院農業委員会向けに発言し、大きな反発を呼んでいる(1)。

 米国では近年、有機食品市場が急激に大きくなってきている。その1つの理由が消費者が遺伝子組み換え食品を避けたいと考えていることが上げられている。6年くらい前までは米国では遺伝子組み換えが何かすら知らない人たちがほとんどだったと言われるが、今や、過半数の人たちがそれを避けたいと考えており、有機食品を選択することがその上で有効な選択となっている。有機食品では遺伝子組み換えは認められていないからだ。だから有機を選ぶ人が急速に増えている。遺伝子組み換えは終わった、という声さえ聞かれるまでになっていた。

 しかし、ゲノム編集食品は遺伝子組み換えではないとして、米国で規制緩和する動きがあり、それを今度は有機認定の対象ともするようになれば、大問題が生じる。そうなれば消費者はもはや遺伝子組み換えを避ける術がなくなってしまうからだ。一気に遺伝子操作食品だらけになってしまうかもしれない。まさにゲノム編集は追い詰められた遺伝子組み換え産業の隘路を打開するトロイの木馬になろうとしている。

 でも、そう簡単にはいかないだろう。米国の有機市場は今や525億ドルの巨大市場となっており、今回の決定はそれに大きな打撃になりかねないからだ。そして米国の食の運動は大きくなってきている。簡単にそれを許すとは思えない。

 それよりも大きな問題なのは日本だろう。米国であれば有機を選択することによって、問題を避けることができるのだが、日本では有機市場はきわめて限定的で消費者はそれを選択することは容易ではない。そのような中でゲノム編集食品が出回れば、多くの消費者はさらに無防備な状況に置かれてしまう。

 日本でも食を遺伝子操作から守るために何ができるか、ゲノム編集食品を食べない、作らない、売らない意志表示、ゲノム編集解禁への反対、表示義務、日本でもゲノム食品は有機認定認めさせない、そして有機・自然農法の普及などの働きかけを行っていく必要があるだろう。

 ゲノム編集も従来の遺伝子組み換えも「1つの遺伝子は1つの機能」という間違った古い概念にしがみついている。ゲノム編集ではこの遺伝子を潰せば収穫が増えると単純に仮定するが、その遺伝子は他の機能を持っていることを無視している。
 もし1つの遺伝子が1つの機能しか持っていなければ、人間の遺伝子は10万以上ないとつじつまが合わない。人間が必要なタンパクは10万以上の種類があるといわれるのだから。しかし、人間が持つ遺伝子は2万2000と考えられている。このように遺伝子が多様な形質を形成することを多相遺伝(Pleiotropy)と呼ぶが、遺伝子組み換え技術はこれを無視した時代錯誤の技術である。遺伝子技術は細菌の遺伝子の研究から始まった。細菌の遺伝子は比較的シンプルであり、そこでの発見を元に構築された技術だからだろう。でも、植物や動物、人間の遺伝子は細菌の遺伝子以上に多様な働きをすることがすでにわかっている。

 いまだその機能が十分わかっていない遺伝子を破壊した生命体を環境中に放出することは危険極まりない。さらにそれを有機食品として認定してしまうことによって、この危険な食品を拒絶する消費者の選択権を奪うことにもつながってしまう。

 そして影響は食品だけに留まらない。種子も危ない。たとえば、ゲノム編集した種苗であっても有機認証を得てしまうかもしれない。ゲノム編集と表記されずに、食品以外のコットンなどにも栽培が拡がってしまうかもしれない。

 化学肥料・農薬を使わない農業(有機農業・アグロエコロジー)は単に健康にいい食品の源になるだけでなく、気候破壊(気候変動の激化)、生態系破壊(第6期絶滅期)のシナリオを止めるために不可欠な選択肢であり、それをこのようなゲノム編集によって破壊してしまうことは今後の人類の生存そのものに関わってくることになりかねない。

 本物の有機農業を育て、企業による有機認証での不正に対する監視活動を行うNGO、The Cornucopia Instituteはゲノム編集を有機認定することに強く反対する公開書簡への共同署名者(オンライン署名)を募っている(2)。他2団体のオンライン署名も展開されている。特に米国に知人のある方にはぜひ知らせてほしい。日本からも参加できるオンライン署名もあるので、ぜひご参加を!

(1) The Cornucopia Institute: GMO-Friendly USDA Ogling Organic

(2) オンライン署名
Institute for Responsive Technoligy GMOs In Organic? No Way!
(世界どこからでも参加可能なオンライン署名。日本からももちろん)

The Cornucopia Institute: Sign On: No GMOs in Organic!
有機には遺伝子組み換えはNo! オンライン署名(米国居住者限定)

Beyond Pesticides
Remind USDA that Genetic Engineering Is NOT Acceptable in Organic
(米国居住者限定)

(3) 有機の団体はゲノム編集に反対する。
Organic groups object to the suggestion of gene-edited organics

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