アマゾン破壊と日本(その1)もっとも脅かされる人びと

 アマゾン破壊のスピードが異常に上がっている。そしてそれをもたらしているのは政治的犯罪であり、ブラジルの極右政権への抗議がブラジルのみならず世界中に急速に高まっている。極右政権による破壊を止めることは不可欠だ。しかし、一方、日本のこの破壊への関与は十分認識されているだろうか? 実は日本の関与は実に大きい。何度かにわけてその実態を見ていきたい。

 アマゾン破壊がかつてないスピードで破壊が進んでおり、この地球の生態系に巨大な影響を与えることが懸念されている。
 ボルソナロ大統領は森林火災を大統領を批判する環境団体が火をつけているというまったく根拠のないでまかせで言い逃れをしようとしている(1)が、この森林破壊がボルソナロ大統領の政治姿勢とその政策によって引き起こされていることは疑いがない。彼はアマゾン開発を公約に掲げ、先住民族の土地すらもその開発の対象にすることを明言している。そして、森林保護、気候変動対策などの予算を大幅にカットしてしまった。ボルソナロ大統領の背後にいるのは大規模地主や鉱山開発企業である。
 アマゾンの原生林であれば直接、農地に転換することは法律によって大きく制限されている。その法律、森林法は近年、大幅に緩和されてしまったのだが、それでも原生林を直接破壊してしまえば犯罪行為となる。しかし、それが原生林でなくなってしまっていたら、どうなるだろうか? それは開発の対象にできてしまう。つまり、自然の火災で原生林がなくなったとすればその土地を農地として取得できる可能性が高まる。だから、これまでも原生林に火を放つ犯罪行為が横行していた。こうした行為は当然、犯罪であるので取り締まりの対象となる。摘発されれば巨額の賠償金を課される。しかし、広大なアマゾンを警戒するだけの十分な予算がないため、この取り締まりは環境団体や先住民族など現地の伝統的住民たちの協力のもとで実行されてきたが、それでも十分止められていなかった。
 これがアマゾン開発を公言する大統領の登場によって破壊が激化することになる。取り締まりを担当する部署の予算はさらに削られ、この政権であれば罰せられることがないと判断した大規模地主たちは人を雇って火をつけさせる。環境団体や伝統的住民たちが通報しても動かない。その結果、かつてない規模での森林火災に拡がってしまっているというのが現状であろう。
 
 アマゾンでの大規模森林火災については世界で報道され、世界でボルソナロ政権の責任を求める声が上がっている。それではブラジルではこの問題への対応はどうなっているのだろうか? 恐ろくべきことに現在の政権の方向はアマゾン破壊を止めるのではなく、さらなるアマゾン破壊に向かっている。
 今週、アマゾンの先住民族の土地での農場や鉱山開発を可能にする2つの法案の投票が行われようとしていた。現在、ブラジル国会の勢力は大規模地主につく側が過半数を握っている。投票が行われてしまえば、先住民族の土地での農場・鉱山開発が可能となり、環境破壊が進んでしまう。
 先住民族の土地とは先住民族が歴史的に暮らしていた土地を先住民族の土地であるとして認定し、先住民族以外の人間が入るためには特別の許可が必要となり、もちろん、先住民族以外による経済活動も許されていない。現在、アマゾンで手つかずの状態で残されている森林のうち、この先住民族の土地が占める割合は高い。先住民族は森を守る最後の番人といわれる次第だ。
 ところがこの土地で鉱山開発や農業開発を可能にするというのがボルソナロ政権の狙いなのだ。この法案が通ってしまったら、アマゾンは終わりになる。アマゾンの森林火災で世界中が大騒ぎしている中で、その対策を審議するのではなく、その逆にアマゾンを守る最後の砦とも言える先住民族の土地を破壊する法案が審議されているのだから、ゾッとせざるをえない。
 先住民族や環境団体、人権団体がこの2法案の審議に抗議行動を行い、21日、この2法案の投票がなんとか止まった(2)。来週、1つの法案は審議されるものの、先住民族の土地が開発業者の手に渡るような項目を排除する合意がされたようだ。今後、形を変えて再登場するとも限らないので警戒が必要だが、先住民族のみならず、地球に住むわれわれにとって大きな勝利と言えるだろう。

 しかし、まだ多くの先住民族がその土地の権利を認められておらず、彼らは開発の刃のもとで大きな脅威にさらされている。そして、アマゾンの森林は日本を含む世界の食のために日々破壊が進んでいる。
 日本にいるわれわれには何ができるだろうか? それを考える前に、次に「アマゾンの国際化」について考えてみたい。

(1) ボルソナロの森林火災の責任をNGOになすりつける発言を受けて、118のNGOが大統領の姿勢を批判する声明を発表(声明文は英語版もあり)
Bolsonaro não precisa das ONGs para queimar a imagem do Brasil no mundo inteiro

(2) 先住民族の土地の開発を可能にさせることを止めることができたことを伝えるカトリック教会の先住民族委員会(CIMI)による記事
Abertura de terras indígenas para exploração será retirada de PEC 187, após mobilização

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